僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

短編集

『探偵術教えます』パーシヴァル・ワイルド【感想】万人にオススメできる自信作

1947年発表 通信教育探偵ピーター・モーラン 巴妙子訳 ちくま文庫発行 ニューヨーク生まれの奇才パーシヴァル・ワイルドが1947年に上梓した、抱腹絶倒の連作短編推理小説。作者の実体験?を元に生み出された素人迷探偵P(ピーター)・モーランが作中を所狭し…

『勇将ジェラールの回想』アーサー・コナン・ドイル【感想】歴史小説愛が爆発

1896年発表 勇将ジェラール1 上野景福訳 創元推理文庫発行 アーサー・コナン・ドイルといえば、シャーロック・ホームズものを始めとする短編ミステリが有名ですが、ドイルが本来書きたかったのは歴史ミステリでした。ホームズが有名になり過ぎた結果書きたい…

『思考機械の事件簿Ⅱ』ジャック・フットレル【感想】失われた短編たちのご冥福をお祈りして

1906年発表 池央耿訳 創元推理文庫発行 今年初の短編海外ミステリです。 「二たす二は四、いつでも、どこでも、ぜったい四!」が口癖の≪思考機械≫ことオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン博士シリーズ。やっぱり古典ミステリを読むと、心が洗われ…

新訳化切望【感想】M.D.ポースト『アブナー伯父の事件簿』

発表年:1918年 作者:M.D.ポースト シリーズ:アブナー伯父 訳者:菊池光 M.D.ポーストという男 探偵役アブナー伯父について 各話感想 『天の使い』(1911) 『悪魔の道具』(1917) 『私刑(リンチ)』(1914) 『地の掟』(1914) 『不可抗力』(1913) …

神たる所以【感想】エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』

発表年:1934年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン 訳者:旧訳 井上勇 新訳 中村有希 エラリー・クイーンシリーズの短編集を読むのはこれが初めてです。ずっと旧訳版は所持していたのですが、本書が発表された1934年以前の長編を全部読…

狂人探し【感想】G.K.チェスタトン『詩人と狂人たち』

発表年:1929年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ノンシリーズ 訳者:南條竹則 定期的にチェスタトンを摂取したくなるのなんなんでしょうか。耐性がないと(慣れないと)読みにくい逆説だらけの構成がどこかクセになっているのかもしれません。 衒学的とい…

ホームズ時代最後の超人探偵【感想】アーネスト・ブラマ『マックス・カラドスの事件簿』

発表年:1914~1927年 作者:アーネスト・ブラマ シリーズ:マックス・カラドス 訳者:吉田誠一 初アーネスト・ブラマということで、先ずはあっさり作者紹介。 彼のことを紹介するのに一番適している単語は「秘密主義」です。どんな集まりにも顔を出さず、要…

ルパンの多面性を堪能【感想】モーリス・ルブラン『ルパンの告白』

発表年:1911年~1913年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン 訳者:堀口大學 年2ルパンの2作目。この感じだと年4は読めそうです。 さすが幾つも邦訳化されているだけって、タイトルも訳者によって様々なバリエーションがあります。当…

変な武器で変な攻撃してくる刺客【感想】C.デイリー・キング『タラント氏の事件簿[完全版]』

発表年:1935~1979年 作者:C.デイリー・キング シリーズ:トレヴィス・タラント 訳者:中村有希 またまたのっけから意味不明なタイトルで読者を混乱させたことを深くお詫びいたします。 しかしですね。全編読んでみて、どんな作品だったか、短く説明すると…

好き、がいっぱい詰まった短編集【感想】オースチン・フリーマン『ソーンダイク博士の事件簿Ⅱ』

発表年:1913~1927年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ソーンダイク博士 訳者:大久保康雄 各話感想 『パーシヴァル・ブランドの替え玉』(1913)倒叙 犯罪者たちの中でも珍しい“常識家”タイプのパーシヴァル・ブランド氏による犯罪が第一部、その…

新潮文庫オリジナルがオリジナルすぎる【感想】アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの叡智』

発表年:1892~1927年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ シャーロック・ホームズは実に約1年ぶりでした。ただ本作は、実際にアーサー・コナン・ドイルが発表した短編集ではなく、新潮文庫の発刊の都合上カットされた作品を…

今はただ長編を読みたい【感想】アガサ・クリスティ『黄色いアイリス』

発表年:1932~1939年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:ポワロ、パーカー・パイン、ミス・マープル、ノンシリーズ 訳者:中村妙子 コレっていう作品が無いのは惜しいですねえ… 各話感想 『レガッタ・デーの事件』パーカー・パイン よくある紛失事件。で…

クリスティ作品をざっくり型で分類してみた【感想】アガサ・クリスティ『死人の鏡』

発表年:1937年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 訳者:小倉多加志 各話感想 ざっくりクリスティ作品分類 ありきたり型 モンスター型 ロマンス型 アブノーマル型 クリスティ型 本作はエルキュール・ポワロものの中編が4編収められ…

一冊で二度おいしい短編集【感想】アガサ・クリスティ『パーカー・パイン登場』

発表年:1932~1934年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:パーカー・パイン うんこれは良いな~ほんと良いです。 クリスティの短編集は、『リスタデール卿の謎』『死の猟犬』『謎のクィン氏』とちょっとオフホワイト(笑)な作品も含まれる短編集を読んで…

一部ミステリ初心者にとっての関門あり【感想】ドロシー・L・セイヤーズ『ピーター卿の事件簿Ⅱ顔の無い男』

顔のない男―ピーター卿の事件簿〈2〉 (創元推理文庫) 作者: ドロシー・L.セイヤーズ,Dorothy Sayers,宮脇孝雄 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2001/04 メディア: 文庫 クリック: 1回 この商品を含むブログ (5件) を見る 発表年:1925~1939年 作者:ド…

解説もまた名作【感想】G.K.チェスタトン『ブラウン神父の醜聞』

発表年:1935年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ブラウン神父5 ついにブラウン神父シリーズを読破しました。 ただ、このタイミングで、創元推理文庫から新版がどんどん発刊されているので、さらに蒐集欲が掻き立てられますねえ解説が新しくなっているらし…

まるで洋食屋のオムライスのような【感想】マージェリー・アリンガム『キャンピオン氏の事件簿I窓辺の老人』

発表年:1936~1939年 作者:マージェリー・アリンガム シリーズ:アルバート・キャンピオン氏(日本独自編纂) 本書を書いたマージェリー・アリンガムは、クリスティやセイヤーズらとともに英国女流推理作家ビッグ4と呼び讃えられるほど高名な推理作家です…

世にも奇妙な短編集【感想】ドロシー・L・セイヤーズ『ピーター卿の事件簿』

発表年:1928~1938年(日本独自編纂) 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿 ちょっとねぇ本作は意表を突かれたというか、予想外だったというか、良い意味でしっかり裏切られた短編集でした。 そもそも日本独自に編纂された短編…

考える機械が現実味のある今読みたい1作【感想】ジャック・フットレル『思考機械の事件簿Ⅰ』

発表年:1905~1907年 作者:ジャック・フットレル シリーズ:思考機械 本書は日本で独自に編纂された≪思考機械≫が登場する短編集です。≪思考機械≫はもちろんあだ名で、本名はオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼンといい、肩書きと本名を合わせればア…

就寝前のお楽しみ【感想】パーシヴァル・ワイルド『悪党どものお楽しみ』

各話感想 ビル・パームリーという男 発表年:1929年 作者:パーシヴァル・ワイルド シリーズ:ノン・シリーズ 短編推理小説ベストを塗り替えたかもしれませんなー。 本作の感想を書く前に少し語らせていただきます。そもそも、私が短編推理小説と長編推理小…

シャーロキアンになる気持ちがよくわかる【感想】アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの事件簿』

発表年:1927年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ5 いつも通り、新潮文庫の延原版を読んだため、『隠居絵具師』と『ショスコム荘』はページ数の都合上割愛されています。いつか『~叡智』を読んだ後に感想を書こうと思いま…

クリスティ先生処方の精神安定剤【感想】ー『リスタデール卿の謎』アガサ・クリスティ

発表年:1934年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:ノンシリーズ 本作は実に多彩な短編集です。 解説では、本作は三つのタイプに分類できる、と書かれていました。 そこで私もそのタイプを参考に座標図を作り、どんな傾向の作品が多いか分析してみました。…

ブラウン神父の秘密【感想】G.K.チェスタトン

発表年:1927年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ブラウン神父4 『童心』『知恵』『不信』に次ぐ第4作目『ブラウン神父の秘密』ですが、シリーズ作品の中では唯一、プロローグとエピローグという形で書かれています。 プロローグである「ブラウン神父の秘…

安楽椅子探偵のようで安楽椅子探偵に非ず【感想】バロネス・オルツィ『隅の老人の事件簿』

発表年:1904年~ 作者:バロネス・オルツィ シリーズ:隅の老人 本作は、シャーロック・ホームズのライバルの一人としても有名な隅の老人が登場する短編集ですが、日本で独自に編纂された短編集のため、この1冊だけではシリーズの魅力を語り尽くすことはで…

科学者探偵の祖ここに爆誕【感想】オースチン・フリーマン『ソーンダイク博士の事件簿I』

発表年:1908〜1915年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士1 推理小説の勃興に際し、最重要人物とされている3人の名探偵がいます。 一人は言わずと知れたシャーロック・ホームズ。そして蝙蝠傘を持ったブラウン神父。…

おしどり探偵【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1929年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:トミー&タペンス2 まずは簡単にあらすじを 1922年の『秘密機関』で初登場し、めでたく結ばれた二人は、7年の月日を経て再登場を果たします。作中でも現実同様6年の月日が経っており、冒険好きの二人(…

シャーロック・ホームズ最後の挨拶【感想】アーサー・コナン・ドイル

発表年:1893〜1917年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ4 中身は、1893年から1917年の20年以上もの間に書かれた短編たちが集まっているおかげで、今まで以上にバリエーションに富んだ短編集となっています。ちなみに、本ブ…

ブラウン神父の不信【感想】G.K.チェスタトン

発表年:1926年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ブラウン神父3 アメリカが舞台の作品が多いことが特徴の一つで、今までの短編集よりも一話あたりのページ数が少し多い気がします。 トリックについてのみ取り上げれば、さすがチェスタトンと唸らされるも…

華麗な帰還で彼の偉大さ痛感【感想】『シャーロック・ホームズの帰還』アーサー・コナン・ドイル

発表年:1905年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ6 1893年の『シャーロック・ホームズの思い出』で惜しむらくもこの世を去ったシャーロック・ホームズですが、10年の歳月を経て奇跡の生還を果たします。 本書は1903年から19…

ブラウン神父の知恵【感想】G.K.チェスタトン

発表年:1914年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ブラウン神父2 前作では、チェスタトンのトリック創案の妙に舌を巻きましたが、本作では風刺のきいたアイロニーや逆説めいた警句などが多く目につきます。 もちろん多種多様な謎とその解明方法には、驚かさ…