僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

F.W.クロフツ

付録:倒叙寸評【感想】F.W.クロフツ『クロイドン発12時30分』

発表年:1934年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部11 訳者:加賀山卓朗 本書の読了を持って三大倒叙ミステリをすべて読破したわけですが、どうもノってこない一作。 「倒叙」とはいえ、まず最初に殺人が描かれるってのは『殺意』や『叔母殺人事件』…

絶妙な配合比率で生み出された力作【感想】F.W.クロフツ『ホッグズ・バックの怪事件』

発表年:1933年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部10 訳者:大庭忠男 フレンチ警部シリーズもついに10作を突破しました。ポワロシリーズで言えば『雲をつかむ死』(『ABC殺人事件』のひとつ前)なので、ミステリ作家としても中堅になり油の乗った時…

漢(おとこ)臭いミステリ【感想】F.W.クロフツ『死の鉄路』

発表年:1932年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部9 訳者:中山善之 本書はとにかく漢臭い。ただ、夏場の満員電車のような不快な汗臭さのことでありません。 舞台は「十月もすえ」のイギリス北部。鉄道の見習技師クリフォード・パリーなる三十二歳…

クロフツにしては珍しい人間ドラマ【感想】F.W.クロフツ『二つの密室』

発表年:1932年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部8 訳者:宇野利泰 本作は、父と母を若くして亡くした苦労人アンがフレイル荘に勤め事件に遭遇するまでのⅠ部、フレンチ警部が捜査を開始し、事件が新たな展開を見せるⅡ~Ⅳ部に分かれており、クロフ…

クロフツお得意の戦術に嵌る【感想】F.W.クロフツ『英仏海峡の謎』

発表年:1931年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部7 訳者:井上勇 粗あらすじ 英仏海峡間に漂うヨットには不穏な血だまりが残っていた。ヨットはどこから来て、どこへ行こうとしていたのか。また、ヨットで何が起こったのか。フレンチ警部が捜査に…

会心の一撃が当たるかどうかが問題【感想】F.W.クロフツ『マギル卿最後の旅』

発表年:1930年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部6 訳者:橋本福夫 裏面の解説には、 著者の作品の中でも一、二を争う名作 と評されていましたがどんなもんでしょう。 タイトルに「旅」が入ってるため、これはまたフレンチ警部が「捜査」と称して…

これはわりとまじで黒フツ【感想】F.W.クロフツ『フレンチ警部と紫色の鎌』

発表年:1929年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部 訳者:井上勇 粗あらすじ 映画館の切符売り場で働く娘がフレンチ警部の元に助けを求めてやってきた。なにやら良からぬ犯罪に巻き込まれているらしい。最初は冗談半分に聞いていたフレンチ警部だっ…

シンプルを通り越した地味さ【感想】F.W.クロフツ『海の秘密』

発表年:1928年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部4 訳者:向後英一 本作はF.W.クロフツが創造したシリーズ探偵フレンチ警部の第4作目なんですが、いかんせん手に入り難い… 全然新訳じゃなくても良いと思うので、復刊して是非多くの人に手に取って…

フレンチ警部シリーズのトライアルにしてはまずまず本気【感想】F.W.クロフツ『ポンスン事件』

発表年:1921年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:ノンシリーズ ようやくクロフツのノンシリーズものの長編を読み終えました。クロフツのノンシリーズもののミステリは、クロフツの代表作『樽』、そして『フローテ公園の殺人』と『製材所の秘密』のたった4作で…

あなたの食わず嫌いは本作で治る【感想】F.W.クロフツ『スターヴェルの悲劇』

発表年:1927年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部3 今まで『ポンスン事件』を除く、クロフツのノンシリーズもの3作と、フレンチ警部ものを2作順番に読んできました。 読む度にクロフツの新たな魅力と欠点に気付かされるのですが、本作ではクロフ…

シリーズ2作目の呪いは存在する【感想】F.W.クロフツ『フレンチ警部とチェインの謎』

発表年:1926年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部2 シリーズものの第2作目というのは、それが映画にせよ本にせよ、かなり重要な作品になると言っていいと思うのです。 特にクロフツのようにそれまでノンシリーズの長編ミステリを書き続けていた作…

いつものクロフツ節にしっかり騙される【感想】F.W.クロフツ『フローテ公園の殺人』

あけましておめでとうございます。本年1発目は、昨年同様クロフツから。別に図ったつもりはないんですが… 発表年:1923年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:ノンシリーズまずは 粗あらすじ 南アフリカの鉄道トンネル内で発見された男の死体。彼はなぜ鉄道事故に…

製材所の秘密【感想】F.W.クロフツ

発表年:1922年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:ノンシリーズ 本作は、推理小説と呼ぶには少々物足りません。 怪しげな製材所で行われている企業犯罪に焦点を当てた社会派ミステリのような形を成してはいるものの、それに付随して起こる殺人事件はなんともお…

フレンチ警部最大の事件【感想】F.W.クロフツ

発表年:1925年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部1 本作のストーリーは、単純で事件自体も一見ありきたりな強盗事件に見えます。しかし、小さな矛盾点から事件の経緯に疑問を持ったフレンチ警部が捜査に乗り出すと、小さな矛盾はさらなる謎を呼び…

樽【感想】F.W.クロフツ

発表年:1920年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:ノンシリーズ 本作の感想を述べるにあたって、まずは重要なキーワードである『樽』について説明しておくべきでしょう。 『樽』と聞くと、私は真っ先にドンキーコングを連想します。ドンキーコングの世界で樽は…