世界探偵小説全集

『魔法人形』マックス・アフォード【感想】奥深いプロットとモクモク

1937年発表 数学者ジェフリー・ブラックバーン2 霧島義明訳 国書刊行会発行 マックス・アフォードは初挑戦なので、まずは簡単に作者紹介から。 マックス・アフォードという男 マックス・アフォードは1906年オーストラリア・アデレード生まれ。若くしてオース…

推理小説殺し【感想】キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』

発表年:1934年 作者:キャメロン・マケイブ シリーズ:ノンシリーズ 訳者:熊井ひろ美 三大奇書と呼ばれる作品(『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』)のどれひとつ読んでもいないのに奇書を語る資格なんて元々ないんですが、本書はアン…

頑張れ!頑張るな!という矛盾【感想】ヘンリー・ウェイド『推定相続人』

発表年:1935年 作者:ヘンリー・ウェイド シリーズ:ノンシリーズ 訳者:岡照雄 倒叙です。 あんまり倒叙ものを読んだ経験に乏しいので参考になるかわかりませんが、ありきたりなプロットなのによく出来ていると思います。 訳者の岡照雄氏という名前は、あ…

フェアプレイに徹し過ぎるのも考え物【感想】『警察官よ汝を守れ』ヘンリー・ウェイド

発表年:1934年 作者:ヘンリー・ウェイド シリーズ:プール警部3 ヘンリー・ウェイドの作品に挑戦するのはこれが2作目です。 前回は同じ世界探偵小説全集で出された『塩沢地の霧』で、こちらは作者による巧みな登場人物の心理描写がトリックに直結している…

おしゃべり雀の殺人【感想】ダーウィン・L・ティーレット

発表年:1934年 作者:ダーウィン・L・ティーレット シリーズ:ノンシリーズ 本作、かなり異色のミステリだという噂は聴いていたのですが、そもそもティーレットという作家自体、国書刊行会の世界探偵小説全集の発行が無ければ知ることもなかったでしょう。…

サイロの死体【感想】ロナルド・A・ノックス

発表年:1933年 作者:ロナルド・A・ノックス シリーズ:マイルズ・ブリードン3 ノックスと言えば、散りばめられたユーモア描写と特異な結末、薄らと多重解決の趣を感じる『陸橋殺人事件』で有名ですが、『陸橋~』を含む彼が生涯で書いた6作の長編にうち5…

ソルトマーシュの殺人【感想】グラディス・ミッチェル

発表年:1932年 作者:グラディス・ミッチェル シリーズ:ミセス・ブラッドリー グラディス・ミッチェルの作品は、残念ながら邦訳されているものが少なく、デビュー作でさえ未翻訳です。 1929年から1984年という長きにわたって、特異な探偵と異質な謎を中心…

塩沢地の霧【感想】ヘンリー・ウェイド

発表年:1933年 作者:ヘンリー・ウェイド シリーズ:ノンシリーズ 軍人としてまた治安判事としても活躍したヘンリー・ウェイドは、イギリス本格推理小説の黄金時代を代表する作家の一人である。 彼の作風の一つとして挙げられるのが、リアリズムに則った警…

救いの死【感想】ミルワード・ケネディ

発表年:1931年 作者:ミルワード・ケネディ シリーズ:ノンシリーズ 作者ケネディの華々しい経歴については、インターネット等でも容易に検索できることから省略するとして、イギリスの推理作家クラブであるディテクションクラブの初期メンバーとして、アン…

カリブ諸島の手がかり【感想】T.S.ストリブリング

発表年:1929年 作者:T.S.ストリブリング シリーズ:ヘンリー・ポジオリ教授1 日本ではなかなか聞く機会が少ないストリブリングという作家ですが、彼は弁護士や雑誌記者の顔をもち、南アメリカやヨーロッパでの生活を経て、アメリカ南部や黒人問題を取り上…

レイトン・コートの謎【感想】アントニイ・バークリー

発表年:1925年 作者:アントニイ・バークリー シリーズ:ロジャー・シェリンガム 1925年に、当初“?”というどこか悪ノリともとれるような名義で発表された本作ですが、発表されるや否や瞬く間に評判となり、彼と彼の創造した素人探偵ロジャー・シェリンガム…

テンプラー家の惨劇【感想】イーデン・フィルポッツ

発表年:1923年 作者:ハリントン・ヘクスト(イーデン・フィルポッツ) シリーズ:ノンシリーズ 本作は、ハリントン・ヘクスト名義で書かれたイーデン・フィルポッツの長編推理小説です。 イギリスの名家テンプラー家の人々を襲う、不可解な連続殺人事件。…

薔薇荘にて【感想】A.E.W.メイスン

発表年:1910年 作者:A.E.W.メイスン シリーズ:ガブリエル・アノー1 俳優・劇作家・下院議員・諜報部員(スパイ)など多くの顔を持つメイスンは、推理小説だけでなく、冒険小説・スパイ小説でも数々の名作を世に送り出した小説家でした。 小説家としてデビ…