2017-01-01から1年間の記事一覧

2017年下半期読了ミステリベストテン

残念なことに、2017年の下半期は読了本がかなり少なく、たったの27作。 ベストテンの信頼性も薄いですが、決してオススメできない作品は無いんですよね。 この半年は、とにかくカーを読み進めました。 目標はなんといっても傑作と名高い『ユダの窓』 11月に…

『ユダの窓』カーター・ディクスン【感想】ハウダニットの極致

1938年発表 ヘンリ・メリヴェール卿7 高沢治訳 創元推理文庫発行 前作『孔雀の羽根』 次作『五つの箱の死』 今年最後の海外ミステリ感想記事になりそうです。でも最後に、本作を紹介できるのは嬉しかったりして… というのも海外ミステリ界に燦然と輝く傑作…

シンプルを通り越した地味さ【感想】F.W.クロフツ『海の秘密』

発表年:1928年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部4 訳者:向後英一 本作はF.W.クロフツが創造したシリーズ探偵フレンチ警部の第4作目なんですが、いかんせん手に入り難い… 全然新訳じゃなくても良いと思うので、復刊して是非多くの人に手に取って…

よく読まれてはいないけどとりあえずミステリ感想記事5選【2017年第4四半期】

もう絶対来年やんない! だって…よく読まれてないもん泣 ごめんなさいヒステリックになって。 というか、今年になってほんと公式のはてなブログの紹介力ってすごいなと痛感しました。 公式はてなブログに紹介していただいたM-1グランプリ2017総評 (859PV)…

クリスティ作品をざっくり型で分類してみた【感想】アガサ・クリスティ『死人の鏡』

発表年:1937年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 訳者:小倉多加志 各話感想 ざっくりクリスティ作品分類 ありきたり型 モンスター型 ロマンス型 アブノーマル型 クリスティ型 本作はエルキュール・ポワロものの中編が4編収められ…

アタリハズレというかテンションの違い【感想】カーター・ディクスン『孔雀の羽根』

1937年発表 ヘンリ・メリヴェール卿6 厚木淳訳 創元推理文庫発行 前作『パンチとジュディ』 次作『ユダの窓』 カーの作品は当たりハズレが多いとよく聞きます。 たしかにそういう一面もあると思います。 なんだこれ、みたいな。 え?正気?みたいな。 結果…

たくわえる、のみこむ、はきだす

ポケモンの技です。 ウルトラムーン買おうかな、と悩んでます。 今日はいつものブログの趣旨から外れてなんの脈絡もない3つの話。 めまいの話 年賀状っている?の話 人が死ぬ話が面白いか、と聞かれた話 人が死ぬ話が好きなわけじゃない△ 決して、ミステリ=…

クリスティはタイムトラベラー?【感想】アガサ・クリスティ『NかMか』

発表年:1941年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:トミー&タペンス3 訳者:深町眞理子 トミー&タペンスの軌跡 当記事のタイトルについて ミステリとして 何か違うことを言おう、違うことを言おう、と悩み過ぎた結果がこれです。 正直、講談社から出版…

無垢って何だろう【感想】ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』

発表年:1954年 作者:ウィリアム・ゴールディング 訳者:平井正穂 定期購読しているうさるの厨二病な読書日記さんでおすすめされていた、気軽に読める退廃的な世界名作文学の中からビビッと来た1冊を読んでみた。 www.saiusaruzzz.com 特に「無人島に不時…

『ジャスティスリーグ』【感想】DCよ焦らないで地道に進むのです…

DCコミックスと言えば、当ブログでも度々紹介しているマーベルと対成す二大アメコミ出版社のひとつです。代表的なヒーローはスーパーマンとバットマン。 そんなDCのスーパーヒーローチームが登場する映画『ジャスティスリーグ』をさっそく見に行ってまいりま…

M-1グランプリ2017総評

実は随分前から一度やってみたかったんですよね。お笑いについて語ってみること。 ほんとブログって、大好きなことを誰の目も気にせず自由に言える素晴らしい世界です。 ということで、昨日M-1グランプリ2017が開催されました。 やっぱり視聴者なら、漫才師…

ミステリだと思い込んで読むのはアリ【感想】G.K.チェスタトン『木曜の男』

発表年:1908年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ノンシリーズ 訳者:吉田健一 いつも「ミステリ」の書評を中心に書いてるせいか、今回は久々に筆というか、キーボードがノらない感想書きになりそうです。なんたって、ミステリじゃあないんですからね… た…

『パッセンジャー』【感想】究極の悪を語る

今年の3月に日本で公開されてからすでに半年以上経っているので、今更感がしないでもないのですが、鑑賞して「コレ、俺の好きなやつやないか」と思った部分が多々あったので、少しまとめてみようと思います。 ストーリーの核心をつく内容になりますので、未…

断然ひとつ前の作品からオススメします【感想】カーター・ディクスン『パンチとジュディ』

1936年発表 ヘンリ・メリヴェール卿5 白須清美訳 創元推理文庫発行 前作『一角獣の殺人』 次作『孔雀の羽根』 「カーって面白いの?」この本を手に取って、そう思ったあなた。そんなあなたにこそ、この小説を読んでもらいたい! 私が今回手に取ったハヤカワ…

ダブルホワイダニット現る【感想】クレイグ・ライス『時計は三時に止まる』

発表年:1939年 作者:クレイグ・ライス シリーズ:J・J・マローン 訳者:小鷹信光 さあ辿り着きましたよ。初クレイグ・ライスです。 ミステリ玄人の中でも愛読者が多い彼女の処女作をついに読みました。 “ユーモア本格”の代表格とも呼ばれる本シリーズです…

『マイティ・ソー/バトルロイヤル』【感想】絶対にシリアスになんかしてやるもんか!という意地を見ました

最初っから最後まで、ずっとアホなんですよ。意地でもシリアス展開に持って行ってやるもんか!という制作サイドのコチコチに頑固な意志の強さを見ました。 なのに物語は破たんしてないという幸運。 まずは、シリーズ未鑑賞の方向けに簡単に説明してみましょ…

海外ミステリを読むなら、まずはこの一冊

先日、定期購読しているブログ『ゴロネ読書退屈日記』のゴロネさんより、こんなコメントをいただいた。 海外ミステリーを読むなら、まずはこの一冊を読んでといった作品があれば教えてください。 海外ミステリの感想ブログを運営しているものにとって、まさ…

ブラウン神父の聖戦【解説】【妄想】『ブラウン神父シリーズ』

他人のほんとの罪を聞くよりほかに、することがなにもないような男が、人間悪についてなんにも知らずにいるなんてことがありますかね? この台詞は、ブラウン神父シリーズ第一作『青い十字架』の中の一節です。 シャーロック・ホームズと双璧を成す短編推理…

おいおいルパンかよ→誠に申し訳ございませんでした【感想】カーター・ディクスン『一角獣の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿4 田中潤司訳 創元推理文庫発行 前作『赤後家の殺人』 次作『パンチとジュディ』 今年度の下半期は、カー作品を読み漁っています。傑作と呼ばれる『ユダの窓』に向けてまっしぐらです。 だから、それまでの数作はサラッ…

ギロチンの刃の切れ味に劣らないH・M卿の名推理【感想】カーター・ディクスン『赤後家の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿3 創元推理文庫発行 前作『白い僧院の殺人』 次作『一角獣の殺人』 粗あらすじ 「部屋が人間を殺せるものかね?」そんな摩訶不思議な問いかけを発端に、テアレン博士は、曰くつきの“ギロチンの部屋“を有する実業家の家を…

密室の使い方が冴えている【感想】カーター・ディクスン『弓弦城殺人事件』

発表年:1933年 作者:カーター・ディクスン(J.D.カー) シリーズ:ノンシリーズ 粗あらすじ 甲冑を着た幽霊が現われるという弓弦城には、熱狂的な古武具の収集家レイル卿とその一家が住んでいる。弓弦城では幽霊騒ぎ以外にも、外聞はばかるスキャンダルや…

若いうちに読むべし【感想】モーリス・ルブラン『813』『続813』

813 (新潮文庫―ルパン傑作集)posted with ヨメレバモーリス・ルブラン 新潮社 1959-05-27 AmazonKindle 発表年:1910年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン5 年2~3冊のペースで読み進めているルパンものも、ようやくシリーズ5作目に…

生者の「心の中で生き続ける」ということ【大好き】原泰久『キングダム』

今週号(10/5)の週刊ヤングジャンプに掲載されている『キングダム』533話が熱すぎたので、その熱に浮かされたままの勢いで何か書いてみようと思う。 と書いてからはや5日、その熱もなんだか冷めてきた気がするが今度は惰性で何か書いてみようと思う。 まず…

騒々しく喧々たる…本格ミステリ【感想】ジョージェット・ヘイヤー『紳士と月夜の晒し台』

発表年:1935年 作者:ジョージェット・ヘイヤー シリーズ:ハナサイド警視1 作者ジョージェット・ヘイヤーが、ロマンス小説の大家ということで、かなり構えて読み始めましたが、なかなか型にしっかりハマった本格ものになっていました。 それに、そこまでロ…

書評を書くのが恐くなったあなたに、そして自分へ

もう感想書くのがめっちゃ恐い 自分が感想書きを書くときに大事にしようと思ったこと あらすじは必要か 主観で見るか客観で見るか 文学的価値を評価すべきか ネタバレ感想は必要か まとめ もう感想書くのがめっちゃ恐い 何が恐いって、薄いだとか、すっから…

よく読まれてはいないけど比較的お勧めしたいミステリ感想記事10選【2017年第三四半期】

もうこの企画の要旨も前提もすでに崩壊してしまっているんですが、とりあえず1年間はくじけずやっていこうと思います。 初めて当記事をご覧になる方のためにこの企画の目的を簡単に説明しますと、 2017年を四半期ごとに区切り、該当期間内によく読まれたミス…

劇場型ミステリのお手本【感想】S・S・ヴァン・ダイン『カブト虫殺人事件』

発表年:1930年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス5 さてさて久しぶりのヴァン=ダインです。 思い返すと、前回から1年以上経っていたので、すんなり世界観に入り込めるか不安でしたが、なんのその、あっという間に古き良き本格ミス…

粗の数々もそれすら愛おしい【再読感想】アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』

発表年:1920年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ1 始めて本作を読んだのが、随分昔のことのように感じます。この度、当ブログの企画の一つで記事同士の体裁を整えるために、改稿を加えようと思ったのですが、前回が思った以上に中…

物語は腰砕け?【感想】レックス・スタウト『腰ぬけ連盟』

発表年:1935年 作者:レックス・スタウト シリーズ:ネロ・ウルフ2 まずは粗あらすじ かつて一人の少年を破滅させた学生一同は、贖罪連盟なる団体を結成し、その少年を援助してきた。少年は大人になり、かつての地位も名誉も回復したかに思えたが、突然連盟…

『ワンダーウーマン』【感想】なんでだろう、こんなに涙が出る映画だっけ

涙が出る蛇口のパッキンが腐ってるみたいです。なぜか涙が止まりません。 今回も序盤も序盤15分くらいでウルウル来てますからね。ヤバいです。 さてさて、いろんな意味(フェミニズムだったりキャメロンだったり)でハリウッドを賑わした、DCコミック原作の…