最初っから最後まで、ずっとアホなんですよ。意地でもシリアス展開に持って行ってやるもんか!という制作サイドのコチコチに頑固な意志の強さを見ました。
なのに物語は破たんしてないという幸運。
まずは、シリーズ未鑑賞の方向けに簡単に説明してみましょう…(できる気がしねえ)
死の神ヘラが復活した!雷神ソーとその弟ロキは協力してヘラと戦うが、その強大な力の前に成す術もなく敗れ、惑星サカールへと飛ばされてしまう。そこはグランドマスターなる指導者によって治められ、日々闘技場で行われる殺し合いに狂喜乱舞する、狂った惑星だった。はたしてソーとロキは、無事サカールを脱出し、ヘラから故郷を救えるのか。
おっ意外になんとかまとまった…かな?
ただ、今まで数多くのマーベル作品(アメリカのヒーローもの)が作られてきましたが、本作で初めてその世界観に触れてみよう、という狂った読者は少ないかと思います。
少なくとも過去のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品を10作程度見ておかないと、完全に話にはついていけません。
それでも尚、頭を空っぽにしてアホになりたい!とにかく派手で破茶滅茶なアクションが見たい!どれだけスベってもいいからボケつづけて!という方、今すぐ映画館に行きましょう。
本作単体としてのストーリー展開はシンプルなので初見でもついてゆけるはずです。ややこしいのは、キャラクター同士の相関だけなので以下に簡単にまとめておきます。
オーディンクソ親父説…
見逃せないオススメポイント
まずは、
個性的な役を見事に演じ切った豪華な俳優たちの共演
例えば、サム・ニールとジェフ・ゴールドブラム、カール・アーバンとケイト・ブランシェットと聞くと、映画ファンなら必ず連想する映画があるに違いありません。
彼ら以外にも超豪華なカメオ出演があるので、是非劇場で探していただきたいのですが、この観客サービスの過多も、ひとつ本作の大きな特徴です。
つまり、
良い意味で観客に媚びていて、それが案外嫌じゃないんですよね。
むしろちょっと快感、というか。
ギャグシーンが満載なのは、多少鬱陶しさもあるんですが、これも嫌じゃない。
「シリアスとか、難しい人間関係は忘れて、とりあえず(小手先の)ギャグをお楽しみください。」
みたいな適当さがあって、日本人に理解しやすいものから、ちょっとわかりにくいものまで、ぎっしり詰め込まれています。
また、シリーズとしてのレギュラーキャラクターをサクッと葬っちゃったのも、案外初見の観客のための配慮のような気がします。
あとサービスで言えば、
ソーとロキのサービスカットも多いです。
特にロキを演じたトム・ヒドルストンのオーラがすごい。
『ロード・オブ・ザ・リング』のときのオーランド・ブルームに似た輝き、というか勢いというか、しかもそれが未だに衰えてない感じもあって、個人的には初めてトム・ヒドルストンかっけえとなりました。
ソー(クリス・ヘムズワース)の体も負けてはいません。
今までで一番キレているんじゃないかな?
9キロの筋肉をつけたってのもだてじゃありません。
ハルクのCGとソーの努力の結晶を比べても遜色ない気がするのは、やっぱり過酷なトレーニングが背景にあったんだろうな、と思わされます。
そして、
極めつけは挿入歌。
レッド・ツェッペリンの名曲『IMMIGRANT SONG』が贅沢に使われていることです。
もうね。私ねこ学生時代からLed Zeppelinの大ファンでして。
何が好きって、メンバー各自が自分のシンボルマークを持っていたこと。
厨二病まっしぐらだった当時の自分は、がっつり心を鷲掴みにされまして、ハードロックバンドを組んだり、密かに自分のシンボルマークを作ったりと真似をしていたわけです。
作中でIMMIGRANT SONGが流れた時は、鳥肌が立ちました。
しかも圧巻のアクションシーンとシンクロしているんですから最高です。
なんでこんなことを熱く話すかというと、もしかしたら、Led Zeppelinとマイティ・ソー、全く関係ないことは無いんじゃないかと思うからです。
先ほど話したLed Zeppelinメンバーで、史上最高のドラマーと称されるジョン・ボーナム(ヒーロー名:ボンゾ)のシンボルマークをご覧ください。
そしてこちらが、ソーの愛器ムジョルニアの側面に現われる意匠です。
ほぼ一緒です。
しかもドラマーがドラムを叩くなら、ソーだってムジョルニアで敵をぶっ叩くじゃないですか。
マイティ・ソーはたぶんロック界のスーパーヒーロー、ジョン・ボーナムなんですよ。
ここらへんもわかってて監督は選曲したんじゃないかと勝手に妄想しております。
だからこそ、この映画はアホなドラマーにも見てほしいんです。
ちょっとおふざけが過ぎたので、少し真面目にも書いておきましょう。
ソーというヒーローはマーベル作品の中にあってどのようなヒーローなのか?
ストーリーネタバレあり
原作のことはおいといて、MCU作品の中を基準とします。
ソーは一言でいうと、神です。
だからほぼ無敵です。
同格の神以上との戦いでは負け知らずで、地球のヒーローたちとは別格の強さを誇ります。
だからこそ、最近のマーベル作品からはパワーバランスの兼ね合いで
「そっち(神々の)世界でやってくれ」
と遠ざけられている感もあるのが現実です。
「だったら好き勝手やらしてもらおうじゃないか」
と本作で暴れまわるのは良いんですが、どうも本作のエンドロールを見る限り、次地球に来そうなんですよね…
ものすごく迷惑です。
強大な力を持つ者は、やはりそれ以上に力を持つ者に常に疎まれ、憎まれ、争いが生じるような宿命にあるのがマーベルの世界観です。
同じ無敵の能力を持つハルクが、常に自分の力に恐れ、愛する者から自ら遠ざかり、力を押さえつけようとするのと対照的に、ソーにはそういった描写は皆無。
その力を愛する者たちを守ることに使える、そうできると半ば盲信しています。
何があっても(その過程でどれだけ死んでも)最終守れればいいじゃん。
そんな感じ。
第一作目『マイティ・ソー』の美しいヒロイズムの体現からは、どんどん遠ざかってゆくソーのヒーロー像に戸惑っているのが本音です。
もちろんエンターテインメントとして、使用者側からはソーが美味しいのはわかるんですが、次回作ではそこらへんを上手く軌道修正して欲しいと思いました。
あと、やっぱりムジョルニアは復活させてほしいなあ…壊れたアスガルドの星の核からなんとかならないかな?
では!