ヘンリ・メリヴェール卿

『読者よ欺かるるなかれ』カーター・ディクスン【感想】語彙力崩壊級の問題作

1939年発表 ヘンリー・メリヴェール卿9 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫発行 前作『五つの箱の死』 次作『かくして殺人へ』 ネタバレなし感想 めちゃくちゃカッコいいですよねタイトル。響きも良い。「るる」の部分が特に最高です。でもオシャレなタイトルと違って…

『五つの箱の死』カーター・ディクスン【感想】牛乳パズルみたい

1938年発表 ヘンリー・メリヴェール卿8 西田政治訳 ハヤカワポケットミステリー発行 前作『ユダの窓』 次作『読者よ欺かるるなかれ』 テーブルを囲む4人の男女。3人が苦しみ、1人は死んでいる。衆人環視の中盛られた毒、血の滴る仕込みナイフ、忽然と消…

『ユダの窓』カーター・ディクスン【感想】ハウダニットの極致

1938年発表 ヘンリ・メリヴェール卿7 高沢治訳 創元推理文庫発行 前作『孔雀の羽根』 次作『五つの箱の死』 今年最後の海外ミステリ感想記事になりそうです。でも最後に、本作を紹介できるのは嬉しかったりして… というのも海外ミステリ界に燦然と輝く傑作…

アタリハズレというかテンションの違い【感想】カーター・ディクスン『孔雀の羽根』

1937年発表 ヘンリ・メリヴェール卿6 厚木淳訳 創元推理文庫発行 前作『パンチとジュディ』 次作『ユダの窓』 カーの作品は当たりハズレが多いとよく聞きます。 たしかにそういう一面もあると思います。 なんだこれ、みたいな。 え?正気?みたいな。 結果…

断然ひとつ前の作品からオススメします【感想】カーター・ディクスン『パンチとジュディ』

1936年発表 ヘンリ・メリヴェール卿5 白須清美訳 創元推理文庫発行 前作『一角獣の殺人』 次作『孔雀の羽根』 「カーって面白いの?」この本を手に取って、そう思ったあなた。そんなあなたにこそ、この小説を読んでもらいたい! 私が今回手に取ったハヤカワ…

おいおいルパンかよ→誠に申し訳ございませんでした【感想】カーター・ディクスン『一角獣の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿4 田中潤司訳 創元推理文庫発行 前作『赤後家の殺人』 次作『パンチとジュディ』 今年度の下半期は、カー作品を読み漁っています。傑作と呼ばれる『ユダの窓』に向けてまっしぐらです。 だから、それまでの数作はサラッ…

ギロチンの刃の切れ味に劣らないH・M卿の名推理【感想】カーター・ディクスン『赤後家の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿3 創元推理文庫発行 前作『白い僧院の殺人』 次作『一角獣の殺人』 粗あらすじ 「部屋が人間を殺せるものかね?」そんな摩訶不思議な問いかけを発端に、テアレン博士は、曰くつきの“ギロチンの部屋“を有する実業家の家を…

『白い僧院の殺人』カーター・ディクスン【感想】足跡のない殺人の代表格

1934年発表 ヘンリ・メリヴェール卿2 創元推理文庫発行 前作『黒死荘の殺人』 次作『赤後家の殺人』 本作最大の特徴と言えばもちろん、“足跡のない殺人”でしょうか。 ≪白い僧院≫と呼ばれる歴史ある建物の別邸で発見された死体を巡る不可能犯罪は、単純な“雪…

恐怖が時代を超えてやってくる【感想】カーター・ディクスン『黒死荘の殺人』

1934年発表 ヘンリ・メリヴェール卿1(通称H・M) 創元推理文庫発行 次作『白い僧院の殺人』 探偵役のH・M卿は、陸軍省情報部長を務め、風来や口調などからは、どこか破茶滅茶で型破りな人物に思えます。 また、デビュー作でありながら登場するタイミングは…