僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

ミステリ

推理小説殺し【感想】キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』

発表年:1934年 作者:キャメロン・マケイブ シリーズ:ノンシリーズ 訳者:熊井ひろ美 三大奇書と呼ばれる作品(『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』)のどれひとつ読んでもいないのに奇書を語る資格なんて元々ないんですが、本書はアン…

神たる所以【感想】エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』

発表年:1934年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン 訳者:旧訳 井上勇 新訳 中村有希 エラリー・クイーンシリーズの短編集を読むのはこれが初めてです。ずっと旧訳版は所持していたのですが、本書が発表された1934年以前の長編を全部読…

この絵から何を読み取るか【感想】アガサ・クリスティ『五匹の子豚』

発表年:1942年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ21 訳者:桑原千恵子 前回の記事『書斎の死体』に引き続き、半年ぶりのエルキュール・ポワロは、今まで彼が解決してきた事件とはひと味違う難事件。 なんと16年も前に解決してしまっ…

ありきたり、を逆手に取った名作【感想】アガサ・クリスティ『書斎の死体』

発表年:1942年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:ミス・マープル2 訳者:山本やよい 半年ぶりのクリスティはミス・マープルの第二作。 マープルものの一作目『牧師館の殺人』を読んだのが3年以上も前なので、作品に馴染めるかどうか少々不安でしたが、短…

サスペンス小説の匠による名作【感想】コーネル・ウールリッチ『黒衣の花嫁』

発表年:1940年 作者:ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ) シリーズ:ノンシリーズ 訳者:稲葉明雄 初アイリッシュです。いや初ウールリッチと言ったほうが良いのか…彼と同じように別名義のあるミステリ作家と言えばエラリー・クイーン(バ…

全章フルスロットル【感想】レックス・スタウト『赤い箱』

発表年:1937年 作者:レックス・スタウト シリーズ:ネロ・ウルフ4 訳者:佐倉潤吾 レックス・スタウト、毎回毎回超えてきますねえ。どんどん面白さが跳ね上がってます。 この記事を『毒蛇』の感想を書いた当時の自分に見せてやりたい。 間違いない、そのま…

500ページもいるかな【感想】ジョン・ディクスン・カー『アラビアンナイトの殺人』

発表年:1936年 作者:J.D.カー シリーズ:ギデオン・フェル博士7 訳者:宇野利泰 まずは 粗あらすじ フェル博士の自室に集まった三人の警察官が語るのは、ロンドンの博物館で起こった奇怪な事件の物語。数種のつけ髭と、石炭の粉舞う異様な博物館で起こった…

狂人探し【感想】G.K.チェスタトン『詩人と狂人たち』

発表年:1929年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ノンシリーズ 訳者:南條竹則 定期的にチェスタトンを摂取したくなるのなんなんでしょうか。耐性がないと(慣れないと)読みにくい逆説だらけの構成がどこかクセになっているのかもしれません。 衒学的とい…

付録:倒叙寸評【感想】F.W.クロフツ『クロイドン発12時30分』

発表年:1934年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部11 訳者:加賀山卓朗 本書の読了を持って三大倒叙ミステリをすべて読破したわけですが、どうもノってこない一作。 「倒叙」とはいえ、まず最初に殺人が描かれるってのは『殺意』や『叔母殺人事件』…

ソフトボイルドがいい塩梅【感想】E.S.ガードナー『ビロードの爪』

発表年:1933年 作者:E.S.ガードナー シリーズ:弁護士ペリー・メイスン1 訳者:小西宏 粗あらすじ 《謎探偵の推理過程》 弁護士ペリー・メイスンといえば、ミステリ界においても屈指の長寿シリーズです。 40年にもわたり計82もの長編に登場するペリー・メ…

着想の限界か【感想】S・S=ヴァン・ダイン『ケンネル殺人事件』

発表年:1933年 作者:S・S=ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス6 訳者:井上勇 エラリー・クイーンに多大な影響を与えたとされる、ヴァン・ダインですが、その有名な名前に反して、作品の評価はあまり高くないように思えます。 どうしても、ちょ…

ホームズ時代へのリスペクトが詰まった一作【感想】エラリー・クイーン『チャイナ橙の謎』

発表年:1934年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン8 訳者:井上勇 空前絶後の超絶怒涛の“あべこべ殺人”がご登場です。 事件が起こるまでがかなり印象深いので、なるべくボカシながら書きたいのですが、インパクトという意味では超ど級…

ホームズ時代最後の超人探偵【感想】アーネスト・ブラマ『マックス・カラドスの事件簿』

発表年:1914~1927年 作者:アーネスト・ブラマ シリーズ:マックス・カラドス 訳者:吉田誠一 初アーネスト・ブラマということで、先ずはあっさり作者紹介。 彼のことを紹介するのに一番適している単語は「秘密主義」です。どんな集まりにも顔を出さず、要…

絶妙な配合比率で生み出された力作【感想】F.W.クロフツ『ホッグズ・バックの怪事件』

発表年:1933年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部10 訳者:大庭忠男 フレンチ警部シリーズもついに10作を突破しました。ポワロシリーズで言えば『雲をつかむ死』(『ABC殺人事件』のひとつ前)なので、ミステリ作家としても中堅になり油の乗った時…

前言撤回します。【感想】レックス・スタウト『ラバー・バンド』

発表年:1936年 作者:レックス・スタウト シリーズ:ネロ・ウルフ3 訳者:斉藤数衛 多くの批評家がネロ・ウルフもののベストと推す『毒蛇』や『腰ぬけ連盟』に、あまりしっくりこなかったこともあって、期待値はかなり低めだったのですが、今までの3作の中…

ルパンの多面性を堪能【感想】モーリス・ルブラン『ルパンの告白』

発表年:1911年~1913年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン 訳者:堀口大學 年2ルパンの2作目。この感じだと年4は読めそうです。 さすが幾つも邦訳化されているだけって、タイトルも訳者によって様々なバリエーションがあります。当…

全員、嫌い【感想】フランシス・アイルズ『殺意』

発表年:1931年 作者:フランシス・アイルズ(アントニイ・バークリー) シリーズ:ノンシリーズ 訳者:大久保康雄 さてさて、三大倒叙ミステリの一角を落としてから、はや一年余り、ついに第二の倒叙の王に挑むことと相成りました。 その名も『殺意』ですよ…

漢(おとこ)臭いミステリ【感想】F.W.クロフツ『死の鉄路』

発表年:1932年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部9 訳者:中山善之 本書はとにかく漢臭い。ただ、夏場の満員電車のような不快な汗臭さのことでありません。 舞台は「十月もすえ」のイギリス北部。鉄道の見習技師クリフォード・パリーなる三十二歳…

変な武器で変な攻撃してくる刺客【感想】C.デイリー・キング『タラント氏の事件簿[完全版]』

発表年:1935~1979年 作者:C.デイリー・キング シリーズ:トレヴィス・タラント 訳者:中村有希 またまたのっけから意味不明なタイトルで読者を混乱させたことを深くお詫びいたします。 しかしですね。全編読んでみて、どんな作品だったか、短く説明すると…

新風吹く【感想】エラリー・クイーン『シャム双生児の謎』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン7 訳者:井上勇 前作『アメリカ銃の謎』が「水清ければ魚棲まず」状態で、どうも好きになれず… しばらく(次の新訳が出るまで)お休みしようかとおもったのですが、運よく?ポンポンと…

好き、がいっぱい詰まった短編集【感想】オースチン・フリーマン『ソーンダイク博士の事件簿Ⅱ』

発表年:1913~1927年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ソーンダイク博士 訳者:大久保康雄 各話感想 『パーシヴァル・ブランドの替え玉』(1913)倒叙 犯罪者たちの中でも珍しい“常識家”タイプのパーシヴァル・ブランド氏による犯罪が第一部、その…

クロフツにしては珍しい人間ドラマ【感想】F.W.クロフツ『二つの密室』

発表年:1932年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部8 訳者:宇野利泰 本作は、父と母を若くして亡くした苦労人アンがフレイル荘に勤め事件に遭遇するまでのⅠ部、フレンチ警部が捜査を開始し、事件が新たな展開を見せるⅡ~Ⅳ部に分かれており、クロフ…

冒険小説にした方が良かったのでは【感想】S=A・ステーマン『六死人』

発表年:1931年 作者:S=A・ステーマン シリーズ:ヴェンス警部1 訳者:三輪秀彦 フランス冒険小説大賞受賞作、という触れ込みで、個人的にも読んでみたかった海外ミステリの一つでした。 「冒険小説」という名称ですが、実際には犯罪小説・サスペンス小説と…

クロフツお得意の戦術に嵌る【感想】F.W.クロフツ『英仏海峡の謎』

発表年:1931年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部7 訳者:井上勇 粗あらすじ 英仏海峡間に漂うヨットには不穏な血だまりが残っていた。ヨットはどこから来て、どこへ行こうとしていたのか。また、ヨットで何が起こったのか。フレンチ警部が捜査に…

控えめに言って傑作【感想】イズレイル・ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』

発表年:1892年 作者:イズレイル・ザングウィル シリーズ:ノンシリーズ 訳者:吉田誠一 ひと月以上前に読んだ作品ということもあって、いかんせん記憶が曖昧で、抜けているところがあれば申し訳ないのですが、まあ面白かったのは覚えています。 再度片手に…

ルパン史上最強最悪は伊達じゃない【感想】モーリス・ルブラン『水晶の栓』

発表年:1912年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン6 訳者:平岡敦 だいぶと久々の更新になってしまいました…身体的にも精神的にも追い込まれた年度末・年度初めでしたが、ぼちぼちと「いつもどおり」を取り戻し始め、やっと4月1冊目…

ベスト・オブ・バンコラン【感想】ジョン・ディクスン・カー『蝋人形館の殺人』

発表年:1932年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:アンリ・バンコラン4 アンリ・バンコランものは約1年ぶりでした。前作『髑髏城』は、ドイツの古城を舞台に、禍々しい雰囲気がダイレクトに伝わってくる作品で、仏独の二大探偵同士の推理合戦にも…

新潮文庫オリジナルがオリジナルすぎる【感想】アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの叡智』

発表年:1892~1927年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ シャーロック・ホームズは実に約1年ぶりでした。ただ本作は、実際にアーサー・コナン・ドイルが発表した短編集ではなく、新潮文庫の発刊の都合上カットされた作品を…

会心の一撃が当たるかどうかが問題【感想】F.W.クロフツ『マギル卿最後の旅』

発表年:1930年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部6 訳者:橋本福夫 裏面の解説には、 著者の作品の中でも一、二を争う名作 と評されていましたがどんなもんでしょう。 タイトルに「旅」が入ってるため、これはまたフレンチ警部が「捜査」と称して…

後世に影響を与えた(であろう)歴史的な一作【感想】ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』

発表年:1908年 作者:ガストン・ルルー シリーズ:ジョゼフ・ルールタビーユ1 訳者:宮崎嶺雄 昨年末にホームズ時代に属する歴史的なミステリをいくつか入手できたので、今年の前半はそれらを消化しながら、クロフツ祭りができれば、と思っています。 今日…