『災厄の町』エラリー・クイーン【感想】逆転の構図が光る名作

CALAMITY TOWN 1942年発表 エラリー・クイーン 越前敏弥訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ドラゴンの歯』 次作『靴に住む老婆』 ネタバレなし感想 ついにライツヴィルにやってまいりました。ライツヴィルとはニューヨークの北方に位置するとされる架空の町で、エラ…

『不可能犯罪捜査課・カー短編全集1』ジョン・ディクスン・カー【感想】小粒がいっぱいで普通に辛い

THE DEPARTMENT OF QUEER COMPLAINTS 1940年発表 マーチ大佐 宇野利泰訳 創元推理文庫発行 巨匠カーの短編は初めて。長編にある重奏的なトリック、怪奇現象の波状攻撃はありません。しかし、山椒は小粒でもぴりりと辛いと言いますか、短い物語の中に輪郭のく…

『虎の牙』モーリス・ルブラン【感想】細密フィルターを通せば面白い

Les Dents Du Tigle 1921年発表 アルセーヌ・ルパン9 井上勇訳 創元推理文庫発行 前作『(三十)棺桶島』 次作『八点鐘』 本作でアルセーヌ・ルパンシリーズに挑もうとする読者はほぼいないでしょうが、少なくとも『813』は読んでおいた方が楽しめると思い…

ROCK AND ROLL AND RAMBLE【The Beatles】Vol.1

漫才の歴史は、彼以前、彼以後にわかれる これは、お笑い芸人ダウンタウンの松本人志が、M-1グランプリの審査委員として登場するときの出囃子で使われる紹介文句です。この言葉を借りて、ロックの歴史についてもこのように言い換えることができます。 ロック…

『緑は危険』クリスチアナ・ブランド【感想】作者の最高傑作、は伊達じゃない

Green for Danger 1944年 コックリル警部2 中村保男訳 ハヤカワ文庫発行 前作『切られた首』 次作『自宅にて急逝』 完全にミスった。いつもシリーズ作品は、第一作から読むことを習慣にしているのに、間違って2作目から読んでしまった。 まあ、いいか、め…

『ヘラクレスの冒険』アガサ・クリスティ【感想】元ネタを知らずとも十分楽しめる名作

The Labours of Hercules 1947年発表 エルキュール・ポワロ 田中一江訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ホロー荘の殺人』 次作『満潮に乗って』 物語は、私立探偵業の引退を目前にしたポワロのアパートから始まる。引退後はカボチャ栽培に勤しむと告げるポワロに、…

『怪盗レトン』ジョルジュ・シムノン【感想】想像していたよりもドロッとせず、キリっとしてる

Pietre le Letton 1929年発表 メグレ警部1 稲葉明雄訳 角川文庫発行 次作『死んだギャレ氏』 メグレ警部と言えば、名探偵コナンの目暮警部の名前の由来になった名探偵です。 その記念すべき1作目が本作『怪盗レトン』なのですが、本書に出会うのには本当に…

『フレンチ警部の多忙な休暇』F.W.クロフツ【感想】警察24時が先か、クロフツが先か

FATAL VENTURE Fatal=致命的な Venture=(金銭的にリスクの高いbusiness)投機、事業 ですから、『死をまねく事業』というところでしょうか 1939年発表 フレンチ警部19 中村能三訳 創元推理文庫発行 前作『フレンチ警部と毒蛇の謎』 次作『黄金の灰』 クロフ…

あおむしがチョウになるまで

虫の写真が出てくるので、苦手な方は【閲覧注意】ぷにぷにの可愛い幼虫だよ 職場であおむしを見つけた。もう可愛くて可愛くて仕方がない。家に持って帰って、息子にも見せてやりたかったのだが、虫嫌いの妻の許可は出ず。「自分のことがちゃんとできるように…

『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー【感想】恐竜だぞ面白くないわけがない

END OF AN ERA 1994年発表 内田昌之訳 ハヤカワ文庫 ロバート・J・ソウヤーはカナダのSF作家。SFに関する賞を数多く受賞しながらも、雑誌編集者やSF作品の脚本家・専門家として第一線で活躍している。彼の作品はごりごりのSFでありながら、日本のミステリフ…

ROCK AND ROLL AND RAMBLE【The Rolling Stones】

The Rolling StonesのシンボルマークであるLips and Tongue、ヒンドゥー教の破壊を司る神カーリー神からインスピレーションを得ている 10年以上も昔、同級生とロックバンドを組んでいたとき、ある先輩バンドマンが言いました。「ギターはバンドの血液、ベー…

『本命』ディック・フランシス【感想】硬派と軟派のあいだ

Dead Cert 1962年発表 菊池光訳 ハヤカワ文庫発行 ディック・フランシスという男 ディック・フランシスは1920年ウェールズ生まれ。祖父の代から競走馬の世話や騎手、厩舎に関わりのある家庭で育ち、フランシスも幼少期から乗馬をこなすなど馬になじみの深い…

『指輪物語 二つの塔 上1・上2・下』J.R.R.トールキン【感想】中つ国の地図が欲しい

THE LORD OF THE RINGS 1954年発表 瀬田貞二・田中明子訳 評論社文庫発行 www.bokuneko.com www.bokuneko.com 超ざっくり『旅の仲間』のおさらい フロドと8人の仲間たちはいろんなことがあって一の指輪を葬る旅に出た。 がしかし、矢継ぎ早にいろんなことが…

『月光ゲーム Yの悲劇’88』有栖川有栖【感想】大学いっときゃよかった

表紙のおじさん誰?(めっちゃ失礼してたらどうしよう) 1989年発表 江神二郎1 創元推理文庫発行 国内ミステリの傑作を少しずつ読んでいく企画。島田荘司、綾辻行人ときてお次は有栖川有栖に挑戦です。 幸か不幸か、いくら国内ミステリの傑作とはいえ、あら…

『吠える犬』E.S.ガードナー【感想】今日もカッコいいぜ!おれは吠える

THE CASE OF THE HOWLING DOG 1938年発表 弁護士ペリー・メイスン4 小西宏訳 創元推理文庫発行 前作『幸運の脚(幸運な足の娘)』 次作『奇妙な花嫁』 隣人の家の犬が吠えて迷惑だ、という依頼を受けたメイスンだったが、隣人の主張によると犬は吠えなかっ…