THE LORD OF THE RINGS
1954年発表 瀬田貞二・田中明子訳 評論社文庫発行
超ざっくり『旅の仲間』のおさらい
フロドと8人の仲間たちはいろんなことがあって一の指輪を葬る旅に出た。
がしかし、矢継ぎ早にいろんなことがあって仲間たちは離散する。フロドとサムは厄難の只中に飛び込み、そのほかの仲間たちのそれぞれの難儀に翻弄されてゆく。
『二つの塔 上1・2』には『アイゼンガルドの反逆』
『二つの塔 下』には『モルドールへの旅』という表題がつけられることがあるようです。感想でも、上記の表題に基づいて分割して感想を書きます。
以下、もちろん前作である『指輪物語/旅の仲間』の物語の展開バレ、登場人物バレが多々登場します。未読の方は、該当作を読んでからお読みください。
アイゼンガルドの反逆(前半)
ショッキングな事件で幕開ける最初の章が鬼門です。映画版で知ってはいましたが、さすがに主要人物の脱落は精神的にもキツかったです。その描写は開幕から僅か数ページで訪れ、ほんの数語の会話で途切れてしまいます。しかし、その行間に漲る悔恨や惜別の情念は凄まじく、雄々しき人との今生の別れは、作中の人物たちと同様に読者にも言葉に言い表せない哀しみと疲労を感じさせます。
さらには、あの無双のアラゴルンですら決断を逡巡し、弱音を吐く状況です。いかに、指輪を巡る旅が過酷で危険に満ちたものか思い知らされます。
それでも友の葬送の舟を送り出した面々の顔には、悲壮感だけでなく、改めて大命のため懸命に前を向こうと、道標を見出そうとする光が宿っていました。それに呼応するかのように、新たな光の星が次々と瞬き始めます。
その一つが、騎士国《リダーマーク》の軍団長エオメルです。同じ敵を持ち、冥王に仇なす勇猛の士とアラゴルンの、騎士の名を懸けた盟約は、暗黒の時代に降り注ぐ最初の光です。そしてその光に誘われて、もう一つ強烈な援軍が再来します。
ここまでが上の1の前半。
後半、舞台は囚われのメリーとピピンに移り、彼らのファンゴルンの森までの脱走を描きます。残虐なオークたちの中でも希望を失わず互いを励まし合う二人の関係性は微笑ましく、ホビットらしい機転を利かせた脱走劇までノンストップで物語は進みます。
ファンゴルンの森へ到達してから、メリーとピピンは、大戦の戦局を大きく左右する出会いと、行動を起こします。その行動が結実するのは、上2に進んでからです。
アイゼンガルドの反逆(後半)
続いて舞台はアラゴルン一行に戻り、ローハンの王セオデンの宮殿とそこで巣食う悪意との対決に進みます。指輪を巡る戦いの結末を左右する重要人物エオウィンが登場するのも本書です。
ここでも賢者の力を借り勝利を掴んだ彼らは一致団結して、角笛城の戦いに挑みます。いよいよ戦いが本格化し、ここからは種族を問わず多くの者が命を散らすことになります。辛い道のりを進むのは、フロドとサムだけではない、皆が冥王に抗い、闇を晴らすため命を賭して戦っているのだ、と訴えかけてきます。
ただ、そんな危機的な状況の中でも、ギムリとレゴラスのユーモラスかつ友情を感じるやりとりは見どころの一つです。
そして、アイゼンガルドの陥落をもってメリーとピピンの大冒険もひと段落つき、サルマンとの対決も決着を迎えます。
モルドールへの旅
物語はいよいよフロドとサムの孤独な大冒険へと向かいます。しかし、癖のある闖入者によって、旅はさらに波乱に富んだものに。
苛酷さを増す旅路にも、心を奮い立たせる新たな仲間ファラミアとの出会いがあり、希望の光が消えていないことを感じます。
本書の後半で、二人はついに滅びの山があるモルドールのひざ元キリス・ウンゴルにたどり着きます。ここからはもう一人の主人公といって良いサム豪胆さ、誠実さ、勇気がエアレンディルの星の光のように輝きます。
しかし、難敵との戦いを経て、二人も散り散りになってしまいます。ここで本書は終了。
闇の勢力との大戦争と、指輪所持者の最後の冒険が描かれる「王の帰還」へと続きます。
さいごに
『二つの塔』はさすがに3冊もあったので、かなり話のボリュームも内容も盛沢山でした。最終戦争にも関係する新たな重要人物たちも続々登場し、いよいよ物語は最終局面を迎えます。ここまでくると、さすがに物語が終わってしまう寂しさも感じますねえ。
あとそろそろ中つ国の地図が欲しいです。
では!