漫才の歴史は、彼以前、彼以後にわかれる
これは、お笑い芸人ダウンタウンの松本人志が、M-1グランプリの審査委員として登場するときの出囃子で使われる紹介文句です。この言葉を借りて、ロックの歴史についてもこのように言い換えることができます。
ロックの歴史は、彼ら以前、彼ら以後にわかれる
イェスウィキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャンキャーーーーーン オッオー,オッオー
ってゆうか、Fatboy Slimの「Because We Can」とトイ・ストーリーの「Zurg’s Planet」を組み合わせたM-1の出囃子ってすげえセンスだな。
偉大なThe Beatles
はい。今日はThe Beatlesです。歴史上もっとも偉大なアーティストと言われ、The Beatlesの登場を機に、彼らを超えようと/あやかろうと/対抗しようと/跡を継ごうと追随したアーティストたちが、文字通り山のようにいました。
The Beatlesの凄さを一言で表すと、全員が類まれなるシンガーソングライターだったということ。
まずは、彼らの活躍を後押しした1900年代から始まる急速な技術革新を知っていなければいけません。
1900年から1940年にかけて、発展してきたのがラジオ/テレビ放送です。2度の世界大戦の終戦後、娯楽に飢えていた人々の心を満たすため、英米の放送局は、報道だけでなく教育番組や音楽番組の放送にも力を入れ始めました。それを可能にしたのが、コンデンサーマイク(集音性の高いレコーディング用のマイク)の進歩です。このラジオ/テレビとマイクロフォンの普及と進歩によって、ポップ・ソングの文化が生まれたとされています。
当時のポップ・ミュージックは、良い曲を作る人間が必ずしも良い声で歌わなければいけない世界ではありませんでした。歌を作る作曲家と歌を歌う歌手は完全な分業制が当然の時代だったのです。むしろ歌手にはスターたる容姿と、人々を魅了する歌声、カリスマ性が必要で、歌自体の良さというのは二の次でした。そして、この当たり前を根底から覆してしてしまったのが、全メンバーが作詞作曲を行い、全ての楽曲を自分たちで演奏してしまうThe Beatlesです。
今が当たり前すぎて、本当に凄いのかどうかもピンと来ないところもありますが、自分たちで全てを生み出せるということは、曲やパフォーマンスの中に芸術性やメッセージ性を加味したり、自分たちをどう見せたいか/何を伝えたいかを、曲を聴く人々に直接訴えかけ、感情を刺激し、行動を促す確かな実行力を手にしたということ。商業的にも社会的にもアーティストの今の地位を作ったのはThe Beatlesなのかもしれません。
彼らのアルバムを一通り聞いてみて驚いたのは、The Beatlesの実働年数って1962年から1970年までのたった約8年間なんですよね。なのに、イギリスの音楽チャートではほぼすべてのシングル・アルバムがランキングの1位を取り続けています。
これから、英国盤のオリジナル・アルバム13枚を基本にレビューとプレイリストを作ってみます。結局のところ、自分が初めてThe Beatlesに出会ったアルバム『ザ・ビートルズ1』と似たり寄ったりの結果になったんですけどね。
アルバム紹介
Please Please Me(1963)
全14曲中6曲がカバー曲と、全盛期の爆発はありませんが、それでもジョン・レノンとポール・マッカートニーの才能はすでに溢れだしてだだ洩れです。ほとんどの曲が一日でレコーディングされたこともあって、勢いのあるナンバーが多いのが最大の特徴です。
I Saw Her Standing There
ポールのカウント「1,2,3,4!」から始まる軽快なロックナンバーがオープニングから勢いよく飛び出します。基本はロックンロールおなじみのリズムなんですが、その中に新しさを感じるのが本アルバムの成功を確信させる部分です。
Love Me Do
16歳のポールが書いた歌ってだけで鳥肌もの。ハーモニカのリフが特徴的な楽曲です。中学生の頃家にあったハーモニカを吹いていて、たまたまプァーのとこ(どこ)と同じ音がなって興奮したことを思い出しました。
ちなみにこの曲は、アメリカのチャートで1位を取るまでに約2年もの歳月がかかっています。他の楽曲(『She Lives You』)との相乗効果や、カナダの売り上げと合算したり、と色々策略があったようです。
あとこの曲のドラムはリンゴ・スターじゃなくて“5人目のビートルズ”と呼ばれるアンディ・ホワイトなんですよね。17歳の頃からプロのミュージシャンとして活躍し、様々なビッグバンドやジャズバンド、ロックバンドのドラムを務めていたアンディは、加入からわずか2週間しか経っていないリンゴ・スターよりも演奏のクオリティが高かったようです。そして、アメリカのチャートで1位を取ったのはこのアンディ版。The Beatlesの伝説が幻の“5人目”から始まったのというのも運命的なものを感じます。
Please Please Me
The Beatlesのセカンド・シングルです。当初はRoy Orbison(代表作『Oh,Pretty Woman』)風のスローテンポな楽曲でしたが、プロデューサーのアイデアでテンポアップしたところ大ヒット。ビートルズがイギリスで始めてチャート1位になった曲になりました。
こちらもジョンのハーモニカが印象的な作品。ジョンとポールのツインボーカルが上手くミックスされた曲でもあります。
Twist And Shout
The Top NotesというR&Bグループのヒット曲をカバーした作品です。10時間を超えるレコーディングとジョン自身の風邪による喉の不調が重なって、え?これ、本当にジョン・レノンの声なの?ってくらいザラッとした歌声に驚かされるんですが、それすら曲調にビタッとはまっていて最高です。
このアルバムのベストは?と聞かれたら、カバー曲だけどTwist And Shoutかもしれません。
With The Beatles(1963)
The Beatlesのセカンドアルバム。モータウン・サウンドやR&Bを中心としたカバー曲が中心となったアルバムですが、オリジナル曲が全てシングルカットされていないアルバム用の楽曲であることは注目したいところ。『Please Please Me』の勢いそのままに名曲たちがずらりと揃います。
It Won’t Be Long
Yeahの掛け合いがクセになる楽曲。この手の掛け合いってゴスペルとかでは定番なんですけど、それをロックに/ポップスになんなく取り入れて融合させてしまうところにジョンの天賦の才が感じられます。
All I’ve Got To Do
ファーストアルバム中の楽曲『Twist And Shout』のジョン・レノンとは180度違う色っぽい歌声がゾクゾクさせる名曲です。前作のように1日で全曲収録みたいな無理をせず、じっくり録ったアルバムだけあってのびのびとした曲調が心地良いナンバーです。
All My Loving
特徴的な六連符と美しいコーラスがばっちり決まったポール作曲の一曲。ビートルズがアメリカに進出して初めて有名なトーク番組に出た際に披露した楽曲がこの曲。つまりアメリカ人はこの曲を聴いてThe Beatlesの凄さを改めて思い知ったということ。
Don’t Bother Me
リードギタリストのジョージ・ハリスン作詞作曲の1曲。改めてみんな天才なんだよなあ。
ジョージが体調不良で静養中に書いた曲だからか、全体的に鬱屈した暗めのメロディも特徴です。ノスタルジックなギターソロ以外間奏が全くないので、不思議な疾走感さえ感じさせる名曲です。
Till There Was You
作曲家メレディス・ウィルソンがミュージカルの作中歌として作った曲をThe Beatlesがカバーしています。かなり上品に仕上がっていて、初期の作品の中ではなかなか珍しいんではなかろうか。
わからんけどフランス映画のエンディングで、バイクに二人乗りしたカップルを背景に流れていそうなポップ・ナンバーでお紅茶を飲みながら聴きたい一曲でもあります。リンゴのボンゴ(語呂良すぎ)が最高です。
I Wanna Be Your Man
ジョンとポールがローリング・ストーンズにぴったりだと思って作った楽曲(実際にローリング・ストーンズのセカンドシングルになっている)。ローリング・ストーンズはベース音にピントが合っているのに対して、こちらはリードボーカルのリンゴに焦点が合っているように感じる。個人的にはThe Beatlesの方が音が一つ一つの音が粒だっていて好き。
Money(That’s What I Want)
モータウンの名シンガーBarrett StorongによるR&Bの名曲をカバーした1曲。やっぱジョンの歌声はシャウトの方が気持ちいいなと感じる曲でもあります。
とりあえず今日はここまで。
Please Please MeとWith The Beatlesだと後者の方が好きな気がしますね。勢いもありつつ精度も高くて、質とパッションの共存が絶妙なんですよね。
第三作『A Hard Day’s Night』以降はVol.2で紹介します。
いや、もうこっから怒涛の名曲ラッシュなんだから。
プレイリスト Vol.1
I Saw Her Standing There
Love Me Do
Please Please Me
Twist And Shout
It Won’t Be Long
All My Loving
Don’t Bother Me
Till There Was You
I Wanna Be Your Man
Money(That’s What I Want)
Please Mr.Postman忘れてた
では!