早いもので2018年ももう終わり。今年は昇格試験の年ということもあって、10月以降ガックリ読書数を落としてしまい最終結果は49冊(うち海外ミステリは45冊)でした。週一ペースを維持できず残念な気持ちもありますが、生涯ベストに肉薄する傑作と国内ミステリの最高峰と呼ばれる作品に出会えたので達成感は十分。
2018年読了ミステリベストテン
第10位『ラバー・バンド』(1936)レックス・スタウト
私立探偵ネロ・ウルフものを読み始めた時は、ここまで面白くなるとは想像もつきませんでした。シャーロック・ホームズものの古き良き雰囲気の中、緻密なプロットで書かれた優れた長編です。
前言撤回します。【感想】レックス・スタウト『ラバー・バンド』 - 僕の猫舎
第9位『ホッグズ・バックの怪事件』(1933)F.W.クロフツ
作者クロフツの安定した手腕の中に垣間見えるチャレンジ精神・開拓精神が完ぺきにハマっています。拘りや自分の強みを残したまんま、シリーズいち憎むべき犯罪が扱われているのも着目ポイントです。
絶妙な配合比率で生み出された力作【感想】F.W.クロフツ『ホッグズ・バックの怪事件』 - 僕の猫舎
第8位『赤い箱』(1937)レックス・スタウト
章毎に面白さが雪だるま式に増してゆく、というだけでも、ベストテンに入れたくなる良作でした。決して白眉のトリック・真相が用意されているわけでもないのに、物語に秘められた謎だけでここまで引っ張れるのは凄いと思います。
全章フルスロットル【感想】レックス・スタウト『赤い箱』 - 僕の猫舎
第7位『ビロードの爪』(1933)E.S.ガードナー
アメリカのハードボイルドの醸し出す雰囲気があんまし好きじゃないので、入り込めるか心配でしたがなんのその。
超個性的な一人の女性を始めとして、まったく無駄のない配役が見事です。探偵役が弁護士、というのも初めてだったのでただ純粋に楽しめた一作です。
ソフトボイルドがいい塩梅【感想】E.S.ガードナー『ビロードの爪』 - 僕の猫舎
第6位『ビッグ・ボウの殺人』(1892)イズレイル・ザングウィル
程よいテンポ、密室トリック、推理合戦の趣向、豊富なサプライズ、魅力的な法廷描写、どこを切り取っても一級品という作品はなかなかありません。1800年代に書かれたとは思えない傑作長編でした。
控えめに言って傑作【感想】イズレイル・ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』 - 僕の猫舎
第5位『サウサンプトンの殺人』(1934)F.W.クロフツ
丁寧で硬派な題材にもかかわらず、すいすい読めてしまう上に、話自体が面白い。シリーズ12作目なので、安易に手を出しにくい作品かもしれませんが、過去作のネタバレは無かった(はず)なので、少し無理してでも読むのをオススメしたい作品です。
丁寧な仕事してます【感想】F.W.クロフツ『サウサンプトンの殺人』 - 僕の猫舎
第4位『スペイン岬の謎』(1935)エラリー・クイーン
まだ感想が書けていません、申し訳ない。
今までの国名シリーズのらしさが全面に出ながらも、人間ドラマにも力が割かれているおかげで抜群に読みやすい作品でした。続きはまた今度。
第3位『オシリスの眼』(1911)オースチン・フリーマン
クラシックミステリの名作が3位にランクインです。これは感想記事で書きたいことは全て書いたので、そちらをご覧ください。
真のクラシック・ミステリ【感想】オースチン・フリーマン『オシリスの眼』 - 僕の猫舎
第2位『死の舞踏』(1938)ヘレン・マクロイ
こちらもまだ感想が未完成です。
一度読んだら忘れられない魅力的な事件の発端と、驚愕の真相が堪りません。デビュー作でこれだけハイレベルなんですからねえ。
第1位『蝋人形館の殺人』(1932)ジョン・ディクスン・カー
本作は今年だけでなく、生涯ベストの中でもベストテンに堂々と入る傑作です。初期のバンコランものとは少~しキャラクターが丸くなっているきらいもありますが、それが奏功しているのは確かでしょう。
カーといえばH・M卿やフェル博士だけじゃない。パリ予審判事アンリ・バンコランの真の実力が発揮されています。
ベスト・オブ・バンコラン【感想】ジョン・ディクスン・カー『蝋人形館の殺人』 - 僕の猫舎
隠れた名作たち
ベストテンには入らないものの、一度読んだら忘れられない隠れた名作(迷作)たちをご紹介します。
『編集室の床に落ちた顔』(1935)キャメロン・マケイブ
国書刊行会発行世界探偵小説全集の中の一冊ということもあって、入手難易度の高さがネックですが、奇書よりの一冊として絶対忘れられないミステリです。
扱われている題材は正統派本格っぽいだけに、結末に進むにつれ徐々に崩壊していく様が圧巻です。
推理小説殺し【感想】キャメロン・マケイブ『編集室の床に落ちた顔』 - 僕の猫舎
『黒衣の花嫁』(1940)ウィリアム・アイリッシュ
初アイリッシュでしたが、完全にハマりました。
解りやすいプロットの中にしっかりとサプライズが用意されているうえに、結末で感じるカタルシスや従来のミステリとは一線を画す性質を持っています。
アイリッシュの作風でもある孤独や遣る瀬無さが滲み出る名作です。
サスペンス小説の匠による名作【感想】コーネル・ウールリッチ『黒衣の花嫁』 - 僕の猫舎
短編部門
短編部門のエントリーは全8作品。豊作揃いでどれを紹介しようか迷います…
『ルパンの告白』(1911)モーリス・ルブラン
ご存知アルセーヌ・ルパンシリーズの一作です。古い訳でもまったく障害にならない素晴らしい短編がたくさん詰まっています。珠玉の傑作『赤い絹のマフラー』は、最近改版された創元推理文庫の『世界推理短編傑作集2』にも収録されていますので新訳版が読みたい方はそちらもおすすめです。
ルパンの多面性を堪能【感想】モーリス・ルブラン『ルパンの告白』 - 僕の猫舎
『タラント氏の事件簿』(1936)C.デイリー・キング
幻想的で摩訶不思議な短編集です。もちろん骨太の本格ミステリもあるのですが、奇妙味がある作品の方が面白いです。どの作品が、というより連作短編としてじっくり味わってほしい一冊でもあります。
変な武器で変な攻撃してくる刺客【感想】C.デイリー・キング『タラント氏の事件簿[完全版]』 - 僕の猫舎
『エラリー・クイーンの冒険』(1934)エラリー・クイーン
間違いなく短編集部門の頂点に君臨するであろう最高品質の短編集です。クイーンの“神”たる所以を理解できます。
神たる所以【感想】エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』 - 僕の猫舎
『アブナー伯父の事件簿』(1918)M.D.ポースト
作品自体の質というよりもその世界観が好みです。1800年代のエネルギッシュな開拓時代のアメリカが舞台というだけで、ワクワクしてきます。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの『SBR』っぽい感じ…ってわかりますかね?
新訳化急募【感想】M.D.ポースト『アブナー伯父の事件簿』 - 僕の猫舎
あと2018年は久しぶりに国内ミステリを読みました。島田荘司『占星術殺人事件』です。この超傑作をネタバレに合わないうちに読めたのは幸運でしたねえ…しかし、トリックや凄みは確かにありますが、読者との距離は遠いというか、モヤっとする部分もあったり…当ブログで感想記事として公開するかはまだ迷っています。
ということでだいぶ駆け足にはなってしまいましたが、2018年の総括は以上です。
今年の10月以降は受験勉強もあってほとんど読書ができませんでしたが、来年合格してたら…気合を入れてバンバン読書したいと思っています。逆に落ちていたら…来年も受験勉強が待っています。考えたくねえ…
まだまだ貧弱なブログではありますが、1年間読んでいただきありがとうございました!来年もよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。
では!