『パッセンジャー』【感想】究極の悪を語る

今年の3月に日本で公開されてからすでに半年以上経っているので、今更感がしないでもないのですが、鑑賞して「コレ、俺の好きなやつやないか」と思った部分が多々あったので、少しまとめてみようと思います。 ストーリーの核心をつく内容になりますので、未…

断然ひとつ前の作品からオススメします【感想】カーター・ディクスン『パンチとジュディ』

1936年発表 ヘンリ・メリヴェール卿5 白須清美訳 創元推理文庫発行 前作『一角獣の殺人』 次作『孔雀の羽根』 「カーって面白いの?」この本を手に取って、そう思ったあなた。そんなあなたにこそ、この小説を読んでもらいたい! 私が今回手に取ったハヤカワ…

ダブルホワイダニット現る【感想】クレイグ・ライス『時計は三時に止まる』

発表年:1939年 作者:クレイグ・ライス シリーズ:J・J・マローン 訳者:小鷹信光 さあ辿り着きましたよ。初クレイグ・ライスです。 ミステリ玄人の中でも愛読者が多い彼女の処女作をついに読みました。 “ユーモア本格”の代表格とも呼ばれる本シリーズです…

『マイティ・ソー/バトルロイヤル』【感想】絶対にシリアスになんかしてやるもんか!という意地を見ました

最初っから最後まで、ずっとアホなんですよ。意地でもシリアス展開に持って行ってやるもんか!という制作サイドのコチコチに頑固な意志の強さを見ました。 なのに物語は破たんしてないという幸運。 まずは、シリーズ未鑑賞の方向けに簡単に説明してみましょ…

海外ミステリを読むなら、まずはこの一冊

先日、定期購読しているブログ『ゴロネ読書退屈日記』のゴロネさんより、こんなコメントをいただいた。 海外ミステリーを読むなら、まずはこの一冊を読んでといった作品があれば教えてください。 海外ミステリの感想ブログを運営しているものにとって、まさ…

ブラウン神父の聖戦【解説】【妄想】『ブラウン神父シリーズ』

他人のほんとの罪を聞くよりほかに、することがなにもないような男が、人間悪についてなんにも知らずにいるなんてことがありますかね? この台詞は、ブラウン神父シリーズ第一作『青い十字架』の中の一節です。 シャーロック・ホームズと双璧を成す短編推理…

おいおいルパンかよ→誠に申し訳ございませんでした【感想】カーター・ディクスン『一角獣の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿4 田中潤司訳 創元推理文庫発行 前作『赤後家の殺人』 次作『パンチとジュディ』 今年度の下半期は、カー作品を読み漁っています。傑作と呼ばれる『ユダの窓』に向けてまっしぐらです。 だから、それまでの数作はサラッ…

ギロチンの刃の切れ味に劣らないH・M卿の名推理【感想】カーター・ディクスン『赤後家の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿3 創元推理文庫発行 前作『白い僧院の殺人』 次作『一角獣の殺人』 粗あらすじ 「部屋が人間を殺せるものかね?」そんな摩訶不思議な問いかけを発端に、テアレン博士は、曰くつきの“ギロチンの部屋“を有する実業家の家を…

密室の使い方が冴えている【感想】カーター・ディクスン『弓弦城殺人事件』

発表年:1933年 作者:カーター・ディクスン(J.D.カー) シリーズ:ノンシリーズ 粗あらすじ 甲冑を着た幽霊が現われるという弓弦城には、熱狂的な古武具の収集家レイル卿とその一家が住んでいる。弓弦城では幽霊騒ぎ以外にも、外聞はばかるスキャンダルや…

若いうちに読むべし【感想】モーリス・ルブラン『813』『続813』

813 (新潮文庫―ルパン傑作集)posted with ヨメレバモーリス・ルブラン 新潮社 1959-05-27 AmazonKindle 発表年:1910年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン5 年2~3冊のペースで読み進めているルパンものも、ようやくシリーズ5作目に…

生者の「心の中で生き続ける」ということ【大好き】原泰久『キングダム』

今週号(10/5)の週刊ヤングジャンプに掲載されている『キングダム』533話が熱すぎたので、その熱に浮かされたままの勢いで何か書いてみようと思う。 と書いてからはや5日、その熱もなんだか冷めてきた気がするが今度は惰性で何か書いてみようと思う。 まず…

騒々しく喧々たる…本格ミステリ【感想】ジョージェット・ヘイヤー『紳士と月夜の晒し台』

発表年:1935年 作者:ジョージェット・ヘイヤー シリーズ:ハナサイド警視1 作者ジョージェット・ヘイヤーが、ロマンス小説の大家ということで、かなり構えて読み始めましたが、なかなか型にしっかりハマった本格ものになっていました。 それに、そこまでロ…

書評を書くのが恐くなったあなたに、そして自分へ

もう感想書くのがめっちゃ恐い 自分が感想書きを書くときに大事にしようと思ったこと あらすじは必要か 主観で見るか客観で見るか 文学的価値を評価すべきか ネタバレ感想は必要か まとめ もう感想書くのがめっちゃ恐い 何が恐いって、薄いだとか、すっから…

よく読まれてはいないけど比較的お勧めしたいミステリ感想記事10選【2017年第三四半期】

もうこの企画の要旨も前提もすでに崩壊してしまっているんですが、とりあえず1年間はくじけずやっていこうと思います。 初めて当記事をご覧になる方のためにこの企画の目的を簡単に説明しますと、 2017年を四半期ごとに区切り、該当期間内によく読まれたミス…

劇場型ミステリのお手本【感想】S・S・ヴァン・ダイン『カブト虫殺人事件』

発表年:1930年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス5 さてさて久しぶりのヴァン=ダインです。 思い返すと、前回から1年以上経っていたので、すんなり世界観に入り込めるか不安でしたが、なんのその、あっという間に古き良き本格ミス…