性格や人格から推理する人にはオススメ【感想】アガサ・クリスティ『メソポタミヤの殺人』

発表年:1936年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ12 まずは粗あらすじ 看護婦のエイミー・レザランは知人の紹介と推薦により、考古学者の妻ルイーズ・ライドナーを看護することとなった。ライドナー夫妻がいるバグダット近郊の遺跡で待…

他言は無用【感想】リチャード・ハル

発表年:1935年 作者:リチャード・ハル シリーズ:ノンシリーズ リチャード・ハルといえば『伯母殺人事件』と言う小説が有名なようです。残念ながら私は未読なのですが、推理小説の“ある括り”の中でも三大小説と呼ばれるほど高名な作品らしいですね。 一方…

迷走パズル【感想】パトリック・クェンティン

発表年:1936年 作者:パトリック・クェンティン シリーズ:ピーター・ダルース1 まずは初挑戦と言うことで作者の紹介からいきましょう。 実はパトリック・クェンティンというのはペンネームで、しかもエラリー・クイーンと同じように複数人が携わっていたよ…

『白い僧院の殺人』カーター・ディクスン【感想】足跡のない殺人の代表格

1934年発表 ヘンリ・メリヴェール卿2 創元推理文庫発行 前作『黒死荘の殺人』 次作『赤後家の殺人』 本作最大の特徴と言えばもちろん、“足跡のない殺人”でしょうか。 ≪白い僧院≫と呼ばれる歴史ある建物の別邸で発見された死体を巡る不可能犯罪は、単純な“雪…

製材所の秘密【感想】F.W.クロフツ

発表年:1922年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:ノンシリーズ 本作は、推理小説と呼ぶには少々物足りません。 怪しげな製材所で行われている企業犯罪に焦点を当てた社会派ミステリのような形を成してはいるものの、それに付随して起こる殺人事件はなんともお…

荘厳で重厚な傑作長編【感想】『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1934年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿9 本作は、日本の推理小説における第一人者である江戸川乱歩が、黄金時代の推理小説ベスト10の第10位に挙げた程の作品、といえばどれほど有名な作品かわかります。 私自身、…

恐怖が時代を超えてやってくる【感想】カーター・ディクスン『黒死荘の殺人』

1934年発表 ヘンリ・メリヴェール卿1(通称H・M) 創元推理文庫発行 次作『白い僧院の殺人』 探偵役のH・M卿は、陸軍省情報部長を務め、風来や口調などからは、どこか破茶滅茶で型破りな人物に思えます。 また、デビュー作でありながら登場するタイミングは…

おしゃべり雀の殺人【感想】ダーウィン・L・ティーレット

発表年:1934年 作者:ダーウィン・L・ティーレット シリーズ:ノンシリーズ 本作、かなり異色のミステリだという噂は聴いていたのですが、そもそもティーレットという作家自体、国書刊行会の世界探偵小説全集の発行が無ければ知ることもなかったでしょう。…

殺人は広告する【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1933年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿8 本作を簡単に要約するなら、セイヤーズの広告業界勤務で得た薀蓄や実体験がこれでもかと詰め込まれたミステリ、といったところでしょうか。 あらすじは今回は省略します。…

ロンドン塔の出汁は取れず【感想】ジョン・ディクスン・カー『帽子収集狂事件』

発表年:1933年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:ギデオン・フェル博士2作 まずは 粗あらすじ ≪いかれ帽子屋(マッド・ハッター)≫と呼ばれる異常な連続帽子盗難犯がロンドンに現れた。その魔手はエドガー・アラン・ポーの未発表原稿を所持する蒐…

科学者探偵の祖ここに爆誕【感想】オースチン・フリーマン『ソーンダイク博士の事件簿I』

発表年:1908〜1915年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士1 推理小説の勃興に際し、最重要人物とされている3人の名探偵がいます。 一人は言わずと知れたシャーロック・ホームズ。そして蝙蝠傘を持ったブラウン神父。…

模型が出てくるからか怪奇自体がすこーし不自然【感想】ジョン・ディクスン・カー『絞首台の謎』

発表年:1931年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:アンリ・バンコラン2 今回はあらすじを省略します。 差出人不明の絞首台の模型とそれに怯える謎のエジプト人、という発端ですが、それだけでは不気味な雰囲気を満たすには不十分です。その後に起きる…

死体をどうぞ【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1932年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿7 本作はシリーズ一長大な雄編ではあるのですが、600Pを超える長編となった理由は、果たして、謎と解決がそれほどボリューミーだったためか、それともセイヤーズの冴え渡る筆…

魔女の隠れ家【感想】ジョン・ディクスン・カー

発表年:1933年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:ギデオン・フェル博士1 フェル博士のキャラクターについて、よく耳にするのは、とにかく酒豪で、巨体。それでいて肩書きはどれも知性溢れるものばかり。 風貌のモデルがG・K・チェスタトンだったら…

トリッキーな死因が脳裏にこびりつく【感想】ジェームズ・ヒルトン『学校の殺人』

発表年:1931年 作者:ジェームズ・ヒルトン シリーズ:ノンシリーズ 本作はイギリスの小説家ジェームズ・ヒルトンが書いた推理小説なのですが、このヒルトンという作家、推理小説界ではあまり有名ではありません。それもそのはず、彼の本分は『チップス先生…