フレンチ警部最大の事件【感想】F.W.クロフツ

発表年:1925年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部1 本作のストーリーは、単純で事件自体も一見ありきたりな強盗事件に見えます。しかし、小さな矛盾点から事件の経緯に疑問を持ったフレンチ警部が捜査に乗り出すと、小さな矛盾はさらなる謎を呼び…

ミステリの意匠にクイーンの職人技がキラリ【感想】『ギリシャ棺の謎』エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン4 本の重厚さからも、これはかなりボリューミーな一冊なんだろうなとは予想ができましたが、案外すらすら読めてしまいました。だぶん最大の要因は、ストーリーの緩急の付け方がかなり…

サイロの死体【感想】ロナルド・A・ノックス

発表年:1933年 作者:ロナルド・A・ノックス シリーズ:マイルズ・ブリードン3 ノックスと言えば、散りばめられたユーモア描写と特異な結末、薄らと多重解決の趣を感じる『陸橋殺人事件』で有名ですが、『陸橋~』を含む彼が生涯で書いた6作の長編にうち5…

素晴らしい作品群なだけに酷評が辛い【感想】エラリー・クイーン『レーン最後の事件』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン4 エラリー・クイーンの作品に対し、厳しめに感想を述べるというのはどうも気が引けます。 エラリー・クイーンが世界的に認められた推理小説作家であることはもちろんながら、ファンも多…

Zの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン3 本作は≪悲劇四部作≫の三作目にあたる作品ですが、前々作・前作より陰鬱で暗い雰囲気をまとっています。 まず前作『Yの悲劇』から十年もの歳月が経っているせいで、十年前は年に違わず…

Yの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン2 本作は紛れもなく不朽の名作と呼ばれるに相応しい推理小説です。 バーナビー・ロス名義で書かれたエラリー・クイーンの≪悲劇四部作≫の二作目『Yの悲劇』は、前作とうってかわって館モ…

最後の一文にまで細やかな配慮【感想】エラリー・クイーン『Xの悲劇』

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン(バーナビー・ロス) シリーズ:ドルリー・レーン 今ではバーナビー・ロス=エラリー・クイーンであることは誰でも知っていますが、当時は別々の作家であることに疑いを持つ人は少なかったらしいですね。 気づきそう…

謎のクィン氏【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:クィン氏 先に粗あらすじ 70手前のおじいちゃんと、正体不明のクィン氏が織りなす、幻想的でロマンティックな短編集 サタースウェイト氏の人柄については、読み進めている内に自然と把握できると思うので…

僧正殺人事件【感想】S・S・ヴァン・ダイン

発表年:1928年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス4 粗あらすじ ジョン・コクレーン・ロビンが矢で貫かれた死体で発見された。彼の愛称はコック・ロビンで、否が応でもマザー・グースの童謡「だれがコック・ロビンを殺したの?」を想…

オランダ靴の謎【感想】エラリー・クイーン

謎は全て解けた!(とりあえず1部までは) オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: エラリー・クイーン,中村有希 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2013/07/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 本作はエラリー・クイーンの国…

五匹の赤い鰊【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1931年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿5 今回は感想を述べる前に、やはりタイトルに入ってある“赤い鰊(にしん)”について説明しておかなければならないでしょう。 推理小説ファンには説明するまでもないことかも…

ブラック・コーヒー【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 案外、飲み物がタイトルに入った推理小説って少ないんじゃないでしょうか? 推理小説とはいっても、本作はアガサ・クリスティによって書かれたエルキュール・ポワロものの戯曲(推…

夜歩く【感想】ジョン・ディクスン・カー

学生時分は夜更かしなんてあたりまえで、夜行性の人間だったと思うのですが、年を取ると、さらに言えば子どもが生まれたりなんかすると、めっきり夜更かしは少なくなって、9時くらいになると眠たくなってくるし、朝7時になると自然に目が覚めます。 中高生の…

毒を食らわば【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1930年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿4 “毒を食らわば皿まで”というのは、ご存知の通り、一度悪事に手を染めたなら最後までやり通そうという邪な考えを例えた諺です。 つまり毒を飲んで死んでしまうことが決まっ…

ライノクス殺人事件【感想】フィリップ・マクドナルド

発表年:1930年 作者:フィリップ・マクドナルド シリーズ:ノンシリーズ 話は少し感想から外れますが、推理小説の感想を書くときには、あらすじでさえ省略したいと常々思っています。 これから殺人事件が起ころうとする作品は特にそうです。決して、あらす…