殺人は広告する【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1933年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿8 本作を簡単に要約するなら、セイヤーズの広告業界勤務で得た薀蓄や実体験がこれでもかと詰め込まれたミステリ、といったところでしょうか。 あらすじは今回は省略します。…

ロンドン塔の出汁は取れず【感想】ジョン・ディクスン・カー『帽子収集狂事件』

発表年:1933年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:ギデオン・フェル博士2作 まずは 粗あらすじ ≪いかれ帽子屋(マッド・ハッター)≫と呼ばれる異常な連続帽子盗難犯がロンドンに現れた。その魔手はエドガー・アラン・ポーの未発表原稿を所持する蒐…

科学者探偵の祖ここに爆誕【感想】オースチン・フリーマン『ソーンダイク博士の事件簿I』

発表年:1908〜1915年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ジョン・イヴリン・ソーンダイク博士1 推理小説の勃興に際し、最重要人物とされている3人の名探偵がいます。 一人は言わずと知れたシャーロック・ホームズ。そして蝙蝠傘を持ったブラウン神父。…

模型が出てくるからか怪奇自体がすこーし不自然【感想】ジョン・ディクスン・カー『絞首台の謎』

発表年:1931年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:アンリ・バンコラン2 今回はあらすじを省略します。 差出人不明の絞首台の模型とそれに怯える謎のエジプト人、という発端ですが、それだけでは不気味な雰囲気を満たすには不十分です。その後に起きる…

死体をどうぞ【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1932年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿7 本作はシリーズ一長大な雄編ではあるのですが、600Pを超える長編となった理由は、果たして、謎と解決がそれほどボリューミーだったためか、それともセイヤーズの冴え渡る筆…

魔女の隠れ家【感想】ジョン・ディクスン・カー

発表年:1933年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:ギデオン・フェル博士1 フェル博士のキャラクターについて、よく耳にするのは、とにかく酒豪で、巨体。それでいて肩書きはどれも知性溢れるものばかり。 風貌のモデルがG・K・チェスタトンだったら…

トリッキーな死因が脳裏にこびりつく【感想】ジェームズ・ヒルトン『学校の殺人』

発表年:1931年 作者:ジェームズ・ヒルトン シリーズ:ノンシリーズ 本作はイギリスの小説家ジェームズ・ヒルトンが書いた推理小説なのですが、このヒルトンという作家、推理小説界ではあまり有名ではありません。それもそのはず、彼の本分は『チップス先生…

フレンチ警部最大の事件【感想】F.W.クロフツ

発表年:1925年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部1 本作のストーリーは、単純で事件自体も一見ありきたりな強盗事件に見えます。しかし、小さな矛盾点から事件の経緯に疑問を持ったフレンチ警部が捜査に乗り出すと、小さな矛盾はさらなる謎を呼び…

ミステリの意匠にクイーンの職人技がキラリ【感想】『ギリシャ棺の謎』エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン4 本の重厚さからも、これはかなりボリューミーな一冊なんだろうなとは予想ができましたが、案外すらすら読めてしまいました。だぶん最大の要因は、ストーリーの緩急の付け方がかなり…

サイロの死体【感想】ロナルド・A・ノックス

発表年:1933年 作者:ロナルド・A・ノックス シリーズ:マイルズ・ブリードン3 ノックスと言えば、散りばめられたユーモア描写と特異な結末、薄らと多重解決の趣を感じる『陸橋殺人事件』で有名ですが、『陸橋~』を含む彼が生涯で書いた6作の長編にうち5…

素晴らしい作品群なだけに酷評が辛い【感想】エラリー・クイーン『レーン最後の事件』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン4 エラリー・クイーンの作品に対し、厳しめに感想を述べるというのはどうも気が引けます。 エラリー・クイーンが世界的に認められた推理小説作家であることはもちろんながら、ファンも多…

Zの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン3 本作は≪悲劇四部作≫の三作目にあたる作品ですが、前々作・前作より陰鬱で暗い雰囲気をまとっています。 まず前作『Yの悲劇』から十年もの歳月が経っているせいで、十年前は年に違わず…

Yの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン2 本作は紛れもなく不朽の名作と呼ばれるに相応しい推理小説です。 バーナビー・ロス名義で書かれたエラリー・クイーンの≪悲劇四部作≫の二作目『Yの悲劇』は、前作とうってかわって館モ…

最後の一文にまで細やかな配慮【感想】エラリー・クイーン『Xの悲劇』

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン(バーナビー・ロス) シリーズ:ドルリー・レーン 今ではバーナビー・ロス=エラリー・クイーンであることは誰でも知っていますが、当時は別々の作家であることに疑いを持つ人は少なかったらしいですね。 気づきそう…

謎のクィン氏【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:クィン氏 先に粗あらすじ 70手前のおじいちゃんと、正体不明のクィン氏が織りなす、幻想的でロマンティックな短編集 サタースウェイト氏の人柄については、読み進めている内に自然と把握できると思うので…