僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

M-1グランプリ2019総評

 今年もこの季節がやってきましたね。今年は例年にも増して外野が五月蠅かった傾向があるので、その五月蠅さに負けないように当ブログも厚かましく、そしてやかましく審査員の一人になったつもりで総評を書いてみます。

 まぁ、これでもかと勝手なこと言いますんで、寛大な心でご覧ください。

 

 

一回戦得点結果

 色が違うところが自分の付けた順位と違うところです。

1位 ミルクボーイ

2位 かまいたち

3位 ぺこぱ

4位 和牛

5位 見取り図

6位 からし蓮根

7位 オズワルド

8位 すゑひろがりず

9位 インディアンス 

10位 ニューヨーク

※以下各ネタ感想に登場する人物名全て敬称略します。

 

各ネタ感想

 

1位 ミルクボーイ

 最強でした。まず正統派漫才の証でもある交互にしゃべくり合う「掛け合い」が4分間みっちり詰まっていたこと。そしてボケとツッコミ、二人の役割には手を加えず、一つのスタイルを貫いた部分。しかも設定は「コーンフレークなのかどうか」ただそれのみ。なんかもう、ここまでど真ん中でこられたら、良い点数つけるしかなくなる、というか、色々試行錯誤して新しい漫才を追求してきた他の9組の漫才師が可哀そうに見えてくるレベルで凄かったです。

 てもちろんスタイルだけで1位をとったわけではありません。ツッコミ(内海)の味のある関西弁から繰り出されるハイセンスなツッコミ(と補足と説明)は一つも的を外さない上に、漫才後の反響まで計算のうちだったんじゃないか、という絶妙なラインでの皮肉が抜群に冴えていました。実在の企業や製品名を漫才で、しかも注目度の高いテレビで使う時って、風評や反響を考えると攻め辛い部分もあるかと思うのですが、ミルクボーイはパッケージに書いてある事実で勝負したり、オーソドックスなあるあるを押したりと、そこらへんの駆け引きも上手かったです。夜ご飯には合わない、とか最後ちょっと残る、とか一見ディスっているようにも見えますが、今後企業は夕食のおかずにもなるコーンフレークとか、開発しだすわけでしょ?何気にミロとかフルーチェを出したのも天才的。一回戦のネタの中では、もう圧倒的に1位です。

 忘れてましたけど、ボケ(駒場)のローテンションなボケ(というかフリ)がネタに完全に合致しているのもキレイです。

審査員コメント

松「行ったり来たり漫才。ゆすぶられた。これぞ漫才」上「一番笑った。ネタのセンスが抜群」塙「誰がやっても面白いネタ+この人がやるから面白いがベストのネタ。自分もこんなパターンを考えたことがあるがこんなに面白くできなかった。言葉と人の力とセンスが凝縮された、100点に近い99点」富「何も考えずに笑える

 

2位 かまいたち

 個人的には是非とも優勝して欲しいコンビでした。M-1のチャンピオンであることをいつまでもずるずる引っ張ってネチネチ言いながら、でもそれが笑いになる、笑わせているかまいたちを見たかったです。

 今回のネタ「UFJ」はかまいたちの漫才の中でも最高のネタの一つなので、それをファーストラウンドに持ってくるあたりに「マジで通過しに来てる」のを感じました。もちろん最強ネタだからこそ知名度も高く、審査員の多くも知ってるんじゃないの?大丈夫?と思っていましたがなんのその。実はこのネタ、間に挟む小ボケに数多くのバリエーションがあるんですが、その精選が絶妙でした。何回も見てるのにその度に涙するほど笑ってしまう。圧巻のネタです。

 無粋な話にはなりますが、このネタって山内と濱家がわかり合えない、一方が歩み寄るのに、片方が全く差を埋めようとしないその空間が面白いわけじゃないですか。これって、お互いの掛け合いを否定したり、止めたりする以上、やっぱり正統な漫才ではないんでしょうね。新しい形を常に求められる中到達した一つの完成形なのに、後から登場したミルクボーイを見てしまうと、どうしても、かまいたちのは漫才じゃないのかも、と思って差をつけてしまう。もちろん逆だったら「めっちゃ新しい漫才やんけ!」と思っていたに違いないんですが……。

審査員コメント

松「圧巻。涙出るくらい笑った」志「参りました」上「たいしたことは言ってない。一つの言い間違いを4分間引っ張っていく。小さなものを大きく膨らませる力がある。グランプリ。腕を上げた」富「言い間違いを指摘されて開き直る、で4分行くのが凄い。キレイ。順番が違えば98点

 

3位 ぺこぱ

 今年の上位3組は、審査結果と同じです。正直ぺこぱに関しては、全然知らなくて、審査員のコメントを聞いて、「そーいや、おもしろ荘で着物着てたコンビか」と思い出したレベル。着物の時はちらかってんなあと思ったのですが、今回スーツでバチっとはまってたのが良かったです。やっぱ漫才と言えばジャケットでしょ、って偏見があるので。

 ネタに関して言えば、別に平和だとか優しさだとかはどうでもいいんですよね。凄いなと思ったのは、ありきたりなタクシーネタでも、ひとボケあった後もう一度初めからやり直すときの不自然さを「時を戻そう」で、そしてタクシーに轢かれる天丼を「2回目だから車道に出ていた自分が悪い」と従来の漫才を皮肉るメタ的趣向が詰まっていたので、世界が覆ったというか、なんか頭をブンとシェイクされた衝撃がありました。

 あと、どうでもいいんですけど、ボケのシュウペイがレギュラーの西川君に似てるように見えて、第一印象から好きでした!って感じです。

審査員コメント

上「10組も見ると疲れてくるが活性化された。新しい」志「どんどん好きになる。決勝が楽しみ」松「のりつっこまないボケ。新しいところを突いてきた」巨「最初は好きになれないキャラだが、どんどん好きになる。色んなものを捨ててここに来た、気持ちが嬉しい」富「ぺこぱの最終形」礼「会うたびに違うことやってる。ボケのキャラが定まってない

 

4位 オズワルド 

 史上最高得点をたたき出したミルクボーイの後なのに凄い!ってのもわかるんですが、後じゃなくても決勝に行けたかどうかは怪しいと思います。ネタは文句なしに面白い。けど、う~ん解り易さが無い、というか少し説明不足なところがあったかな、と。

 例えば、板場ってどういうところかちゃんと説明できる人ってどれくらいいますかね?板前がいるところだよね、ってのはわかるんですが、どう捻っても面白いワードに成らなかったのが残念です。で、それ以外に選択肢が無かったのか?と考えるとネタの構成上難しい。高級寿司→板前(と板場)登場→バッティングセンター→ボールを握る→回転寿司という大オチなので、どうしても高級寿司の板前(と板場)を登場させざるを得なかったのが、幅の狭さというか融通の利かなさを感じました。あと観客に問いかけるの要らんと思います。二人の世界観を造り込んで入り込む余地が無いくらいが調度良いのかも。

 余談ですが、しっとり系の元祖(かどうかは知らんが)おぎやはぎみたいに眼鏡のようなキーアイテム・サスペンダーがあったり、しっとりした中にちょっとした棘と怒りがあるの、めっちゃ好きです。

審査員コメント

礼「ミルクボーイの後に良くやった。しっとりしたネタはハマらないことが多いが後半しり上がりに上がったのは凄い」富「声が良かった。温度が高くないのに、笑いの量が凄い」上「スマートで聞き易くて、ファンが増えると思います」松「90点は辛め。今年はこれくらい。まだまだ将来がある

 

5位 見取り図

 全然競馬好きでもなんでもないんですが、毎週見取り図が出ている競馬番組見るくらいには好きです。ネタもめっちゃ大好きなんですが……でもねえ。

 昨年より格段に面白くなっているとはいえ、めっちゃ粗い。審査員の塙が指摘していた手の動きもそうなんですが、自分を指すときは手全体をほんのり動かすんじゃなくて人差し指を指すだけでよくない?とか、手もみが気になるな、とか「制服」とか「ガタイ」のリアクション小さくない?とか全体的にジェスチャーがイマイチなんですよねえ。あと「黙って聞いとったら」が全然黙ってなかったり、二人とも間のマイクに直接話しかけている感じが強くて、二人の掛け合いとしてすんなり面白いネタが入ってこなかった気がしています。

 これはめっちゃ妄想ですが、ボケのリリー、もしかしてハライチの岩井意識してる?あのマイクに魔法かける感じ最高だなあと思った反面、盛山に話しかける(突っかける)ネタなんだから、もう少し二人でわちゃわちゃやる感じを全面に出すのも見たかったです。

 また、「みさえ」「ベジータ」「ケロケロケロッピー」とか個人的にはツボるんですが、どうも芯を外している感もあって、やっぱり全体的な粗さがありました。これが全部研ぎ澄まして完成させたらとんでもなく面白いネタになりそう。

 元も子もないこと言いますが、「第一印象が大事」って導入から最後「仲良くなれたね」ってオチ、無くないですか?

審査員コメント

富「煽り運転の申し子、が面白かった。もっと展開があれば」松「和牛とからし蓮根の間。今年良かった。ブーツにズボンの裾が上がっているのが嫌。」塙「認知度が上がれば上がるほど面白くなってくる。ワードも全部面白かった。手が凄い動くのが気になった。

 

6位 和牛

 今年も来ましたね。やっぱりすごいなあと唸らされたネタでした。舞台の奥行きを上手に使いながら、しっかりボケを挟んでいき、リアリティがあるのに不思議な空間から、ホラーなのにコメディな空間へと自然に遷移するテクニックは抜群です。あと凄いと感じたのは、ボケの水田が「これがボケですよ」とアピールするくらいオーバーでも、ネタの中ではそれが調度良いくらいの温度になっているところ。たとえば、2回目の「おじゃましまーす」とか、ネクタイをぐっとするだけで我が家感を出すところとか、本大会の中でかまいたちと並んで経験値の高さや技量の高さに圧倒されました。

 このネタって前後半に分かれていて、間に一件だけマンションを外から眺めて人が住んでるのを確認してたんですが、ここが幕間で後半の導入(川西キレモード発動)になっているのも上手い。玄関→外観→洋館とちゃんとネタの中で景色が見えるのも良いですね。なのに、なんでおれ6位にしたんだろうか……たぶん凄い!と思ってしまった時点で、面白い、という見えない壁を超えれなくなったのかもしれませんね。

審査員コメント

塙「毎年進化している。型が無いのが魅力。かまいたちと和牛が凄すぎる」巨「後半盛り上がった。安心感がある。ツッコミのボキャブラリーが少ない」志「去年よりも肩の力が抜けている。キレ味が良い」松「違うパターン。前半はショートコントっぽさが寂しかった後半変えてきたのは凄い。ご飯が食べたくなってきた」上「ぞんざいで横柄なものを感じた。大御所みたいな出方」

 

7位 すゑひろがりず 

 こんな大きな大会で、彼らを見ることができるだけでハッピーです。小道具(鼓や扇)がちょっとせこいかな、と思わないでもないですが、升にしたり、くじ引きに使ったりと計算、そして完成された芸を見れた多幸感がありました。

 ボケの質が全部高いんで、もし時代設定から練り込んだタイムスリップしゃべくり漫才みたいなのが完成したら優勝待ったなしの漫才師になるかもしれません。めちゃくちゃ期待しています。

審査員コメント

富「漫才は何でも笑わせればあり。漫才をぶっ壊して新しいものを作り出して欲しい」上「完成され過ぎて、M-1ではない」巨「漫才の形としてはどうかと思う。中のネタが一番いい」礼「一番面白い。素直に笑える感じがした」

 

8位 ニューヨーク

 いらんこともしつつ、大ボケは破壊力抜群、といささかむらっ気のあるネタでしたが、総合的には面白かったです。松本人志が指摘した、へらへらしたツッコミはあまり気にならなかったのですが、もう少し強気でツッコンでいたら気持ちが乗って笑いの沸点に近づいていたのかもしれません。暫定席時のコメントも含めて(後述)実力以上のものが発揮できた大会だったのではないでしょうか。

審査員コメント

上「どんどん好感度が上がっていく、たった4分の中で引っ張っていくの凄いこと」志「伝統と現代を混在するのが良い漫才。若い子が知っている面白い話。テクニックが抜群」塙「トップバッターでお客さんを沸かせた。入り方やボケの数のバランスも良い」巨「歌の中でたくさんの笑いを取る難しさ。トップバッターとしては良い評価」礼「意地悪なツッコミを聞きたかった」松「笑いながらするツッコミが好きじゃない。緊張感を出して欲しかった」今「元気出せや

 

9位 からし蓮根

 毎週土曜日関西ローカルの情報番組で出だしてからめちゃくちゃ注目していたコンビです。ポンコツとしっかりものという見た目ですが、ネタではなんとなーく違う印象を受けます。

 今回の舞台のみで言えば、ド緊張していたのはツッコミ(杉本)の方。ボケ(伊織)はいつも通りというか、逆に安定しているように見えました。初見は「カミナリ」みたいな凸凹コンビでツッコミがボケに振り回される形なのかな?とも思ったのですが、徐々に見えてきたのは杉本の演技下手(ごめんね)ぶり。車のブレーキのくだりとか、ドアの閉め方、轢かれ方、似顔絵の動き、高速を降す仕草全てにちょっとずつ違和感があったように思います。あと最後の「教えてないのにー」はなんかミスったかな?

 最後バックの大ボケでかなりノった感じがあった(顔も綻んだ)ので、もう少し長くネタを見たかったです。

審査員コメント

上「ファン。初々しいものを感じた」志「好きなタイプニューヨークに比べるとテクニックが劣る」松「本調子でない(杉本?)将来性がある」巨「本調子だと思う(伊織?)。ここまで良くこれた。これ以上は巧くならない。感動した」

 

10位 インディアンス

 インディアンスは完全にボケ(田渕)に自由に暴れ回らせてボケの波状攻撃で笑いを積み重ねる強ボケスタイルだと思っています。でも、今回は(個人的には)ほぼすべてのボケが全くツボにハマりませんでした

 他のネタ、例えば「あかちゃん」とかはマジで歯車が全て合っていて、一つのボケも取りこぼさずどこでも笑いを取ってたので、衝撃で震えました。このひとネタで判断するのは尚早ですが、他に本命ネタがあった気もします。

 あと、田渕の自由な感じや、ありきたりの仕草を少しイジッてボケる感じがアンタッチャブルの山崎にそっくりですよねえ。ただ、おっさん特化型ですが……。となると、ツッコミ(きむ)の役割が重要なはずなのですが、そこまで大仕事をしてないのが気になります。アンタッチャブル柴田と比較するのはお門違いですが、ずっとボケの電源をオンにさせるのではなく、どこかで切り替えてから再始動する緩急というか、テクニックがあるともっと爆発するのではないでしょうか。

審査員コメント

塙「平和過ぎて、おっさんにぐっとくるものが無かった」礼「テンポあってやりこんでいる感じがあるが、素の部分の面白さが見えなかった。ちょっとした人間味を見せて欲しい。テンション上げてボケてるだけでは寂しい

 

 

総評

 これは皆さんも言っていますが、M-1史上最もレベルの高い大会だったと本当に思います。特に決勝ラウンドの3組は、ネタ順も考慮すると、どこが優勝してもおかしくなかったはず。順位とかつけて、めちゃくちゃ横柄でぞんざいな物言いで、書いてきましたが、全コンビ本当に面白かったです。

 

 最後に、やっぱり審査員回りをなんか書いておきたいですねえ。そこまで審査に影響があったかどうかは知りませんが、エミちゃんが異様に喋ってましたね。テレビに映ったコメント回数だけでも8回(勝手に発言した1回含む)全審査員中堂々の1位。2位が松本人志で7回。巨人師匠は最下位で4回(勝手に発言した1回を含むと5回で最下位タイ)。そのほかの審査員は5、6回。これを、MC今田の力でなんとか分散させれなかったのかな、とは思いました。

 それでもめっちゃ笑えたのは、やはりニューヨークの敗退時コメントです。エミちゃんのCDボケに被せた宣伝と、まっちゃんのフリに対応したキレ芸は最高です。邪推ですけど、もしかすると、川島(麒麟)になんかアドバイス受けたかな?とは思いましたけど。で、そのあと、エミちゃん被せられたの悔しいもんだから、何の関係も無いタイミングで、も一回どっかでCD出したでしょ?(笑)一瞬ですけど、エミちゃんのあの笑いの暴力を超えた瞬間だったと思うし、2組目以降の空気を良い方向に変えた素晴らしい漫才師だったと思います。本当におつかれさまでした。

 

 あと、やっぱり毎回思うけど、全組2本見たいなあ。そして、もっとネタ番組やらないかなあ。

では!

 

M-1グランプリ2018総評 - 僕の猫舎

M-1グランプリ2017総評 - 僕の猫舎