M-1グランプリ2018総評

 

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さてさて、去年に引き続きM-1の総評でもしておきますか。

なんか終わってからの方が燃えている感がなきにしもあらずですが、とにもかくにもめちゃくちゃ面白かったです。

出場された全漫才師の方々、お疲れさまでした。

 

今年の決勝は、なんと全10組中6組が前回大会のファイナリストという、実力者ぞろいの大会でした。ということで点数の付け甲斐もありましたねえ。

 

自分がブログでやってもなんの得にもならないのは百も承知ですが、やりたいので、以下各ネタ評価、分析していきましょう。

 

 

一回戦得点結果

自分の採点と違うのが色が違うところ。

1位霜降り明星662

2位和牛656

3位ジャルジャル648

4位ミキ638

5位かまいたち636

6位トム・ブラウン633

7位スーパーマラドーナ617

8位ギャロップ614

9位見取り図606

10位ゆにばーす594

 

以下

ぼくねこ採点(順位)と評価

です。あと審査員のコメントも軽くまとめてみましょう。

長くなっちゃうので、審査員も含めて敬称略でいきます。

 

1位ジャルジャル

去年ジャルジャル史上最高のネタと評しましたが、今年も言わせてください。最高でした。間違いなくジャルジャルびいきなのはわかっているのですが、腹が捩れるほど笑いました。文句なしの一回戦一位。

しかもネタ中一回目の「ドネシア」でそれまで小笑いだった観客の声が一段増した時点で、「あ~全部計算のうちね」と感心。福徳の「アルゼン」のイントネーションに笑わせようと変化がついているのも憎いです。

ただ、去年同様、リズムや音色で笑いを誘うのはややリズムネタに寄りすぎている気がしないでもないですが。

オール巨人の評や塙の評にもありましたが、「何がおもろいかわからない→けど面白い」「観客と一緒に理解していく」というのが、的を得すぎています。

狂気という暗雲の中、その奥に潜む面白さを一緒に理解していくために時間がかかるのはやっぱり欠点でしかないでしょう。

審査員評

立「一つも笑えなかった→面白かった」巨「継続は笑い」礼「一番ウけた(4組中)頑固さがすごい」エ「ネタは嫌い」松「屁をこいた」

 

2位かまいたち

昨年度はサイコ対決でとろサーモンの久保田に負けてしまいましたが、今年はサイコパスな中に、論理的で一本筋の通ったボケが用意されているので、突っ込んでいる濱家の方が間違っている雰囲気が出てくるのは見事です。

ポイントカードを作るタイミングを逃すというあるあるから、これだけ発想を飛躍させつつ観客も巻き込み、記憶に残る高質なボケを連発されれば笑うしかありません。ジャルジャルと同位でもいいくらい。

審査員評

エ「クオリティが高い」立「うまさを感じさせ過ぎてしまった(?)」塙「面白いことを言うレールに乗っている。好み。」富「二人の(人間としての)面白さが出ている」松「いたち多め」

 

3位和牛

間違いなく上位3組に残るであろう、完成されたネタ。終わった瞬間の二人のトップ通過を確信した表情が忘れられません。

物騒なワードをこれだけ連発して、ちゃんと笑えるだけで凄みがあります。ゾンビという空想的な題材だからこそギリギリ許されるかどうか、というスレスレのところに飛び込んでいく冒険心も好み。

ネタに仕込まれた仕掛け(「ほ~」)はけっこう見えやすかったのですが、そこまでの繋ぎ目(急に芝居が始まる)が絶妙です。あと水田の「ほ~」の息継ぎと、川西のツッコミのタイミングまで合わせてあって鳥肌が立ちました。

審査員評

エ「完璧。発想が天才的」松「安定感」富「やられた」立「最初は嫌な感じがしたが、品がある。楽しく聞ける。」塙「話術がすごい」巨「巧い。力がある。

 

4位ミキ

スタイルも変わることなく、1年間の熟成味を感じるネタでした。昴生の活舌も改善された気がするし、前フリを早々に済ませてしまい、先が読みやすいにも関わらず、ボケ自体の質の高さとツッコミのわかりやすさが良いです。

ただ、ネタ被り(見取り図)があったのは残念としか言いようがありません。

さらに言えば、昴生の動きがもっと激しくても良かったかも。アハ体験などの使えそうなフレーズがあっただけにもっと動きのあるミキが見たかったです。

審査員評

エ「自虐が芸になっている」松「今日の空気に合っている」富「人間の面白さもあった。頭からトップギア」立「もっと新しいものを」塙「テンポがすごい」礼「出来は良かった」巨「もっとみんながビックリするようなネタを

 

5位霜降り明星

笑うには笑ったのですが、せいやと粗品お互いの一発芸大会の感もあって、ストーリーに入り込めませんでした。多少尻すぼみな気もしますが、どれひとつ笑いを外さなかったのは単純にすごいと思います。

特に粗品のワードチョイスは、的確とまでは言えなくとも、「ぽい」と言う点では満点。二人のテンポが良いので、多少真ん中を外していても、「あ~ぽいぽい」と笑い流してしまうだけのスピード感があります。

審査員評

エ「初めてたがビックリした。ミキより好き」富「映画を見ているよう」立「現代的。大衆が支持する。」塙「二人とも強い(強弱で言うと)」礼「全部ハマった」巨「ボキャブラリーの多さ。観客の少し上を行く。」松「優勝する可能性がある」

 

6位ギャロップ

個人的に今大会で一番注目のコンビでした…。

もっと完成された、“ギャロップらしい”ネタがいっぱいあったとしか言えない惜しいネタです。ここらへんはオール巨人師匠も指摘していることなのでほどほどにしますが、もう少しネガティブ加減をどちらかに振り切っていれば全然評価は違ったと思います。

っていうかほかのネタでは林はポジティブなのたくさんあるんですよ…卑屈さはそこまで感じませんでしたが、どちらもボケとツッコミができるので、できれば逆のネタが見たかったです。

審査員評

礼「一辺倒。変化が欲しかった」塙「M-1の筋肉がない。」富「安心感。」エ「4分のネタではない。自分を蔑むのはウケない。」松「言うほどハゲていない」巨「なんでこのネタ

 

7位スーパーマラドーナ

設定からネタの仕掛け(田中のキャラ)が全部見えてしまう時点で勝ち上がるのは難しかったかもしれません。

あとは…これは元からなんでしょうけど、そんなにお上手じゃないですよねえ演技が。特に武智(ツッコミ)が。

ガラの悪い雰囲気が出ているのに、キャラクターに合わないツッコミをしているというか、今回みたいなやばそうなやつを演じても違和感(偽物感)を感じるということは、どうしようもないのかもしれません。

審査員評

富「後半もっと欲しかった」塙「後半失速」松「サイコ強め。暗いネタ

 

8位見取り図

独自のスタイルと定番のやり取りが武器の若手コンビですが、う~ん…いっつも思うのがフリの回収までが長い。もっとコンパクトでさらに多発してもいいかもしれません。

審査員評

エ「前半の笑いが古い」松「そこまでウケてなかった」富「面白いワードはあった後半もっと欲しかった」塙「お客さんを意識すればもっと」礼「トップにしては良かった」巨「ネタフリの回収がちょっと…

 

9位ゆにばーす

去年のネタが良かっただけに期待大のコンビでしたが、今回のネタはほとんどのボケがスベっていた気がします。導入部で噛んでしまったのも致命的でした。

カップルに見られるというフリも、そこまで利いておらず、ロケの設定も脆弱だった(遊園地も弱い)気がします。

審査員評

礼「うまくいかなかった」富「単発になってしまった」巨「設定に無理があった」松「ツカミがうまくいかなかった

 

10位トム・ブラウン

いや2回見ると6位。3回見ると4位なんですよ。

何回も見ると面白く見える、というより、中島みゆきを刷り込まれて笑ってしまいました。

「ちょっとまって(が)、いっぱい集まってますよおお~」なんて絶対に使わないワードなのにも関わらず、ほんとうに集まっているんだからなんかもう笑うしかない。

人選(?)も実はいいところツイていて、なんですか、存在感の強い男木村拓哉って。これだけでもクスクスきます。

野暮かもしんないですけど、漫才に欲しいかけ合いは全くなかったですよね。ボケとプレゼンターですから。

審査員評

立「意味が分からない。衝撃。」松「めちゃくちゃ面白かった。」エ「未来のお笑い。盛り上がるという力」巨「会場はウケていた。Youtubeで見たことがある(他のネタ)。」

 

 

総評

以上の各ネタの評価は、見た瞬間に思ったまま順位付けしたのですが、ちょっと時間をおいて考えると、かまいたちのバランスの良さは異常です。私情しかないですけど、正統という意味で、ちゃんとした漫才師に優勝して欲しかったです。

 

昨年の記事では、「新しい笑いと古典的な漫才を上手く組み合わせた漫才師が高評価」と書きましたが、今年は、「新しさ」を妙に意識しないといけない空気になっていたような気もします。

見たこともないような、斬新で奇抜なアイディアが出てきたときに、それを秤にかけてアリかナシか、みたいな分別してから採点している感もありました。う~ん、なんていうんでしょうか。

 

なので今年は、観客との一体感とかがもっと採点に反映されていたら、かまいたちもいけたんじゃないかなあ…と。

霜降り明星、粗品の観客に語り掛けるようなツッコミも、トム・ブラウンの狂的なプレゼン、ミキの人懐っこい感じも、観客との一体感を出すには十分機能していたように思えました。

一方で、ネタのほとんどをフリに使ってしまった見取り図や、世界観に入り込めないゆにばーす、二人だけでただ言い合ってるギャロップは、盛り上がりに欠ける結果になってしまったのかもしれません。

 

ここまで妄想してみると、やっぱり決勝の3組の中に入った和牛の凄さが際立ちます。

構成力と言えばいいんでしょうか。キングオブコントで優勝したハナコもそうですけど、ネタ中のサプライズが毎回観客の想像を超えてくるのはその卓越した構成力によるものかもしれません。

一方で、芝居に引き込む魅力はあまり感じませんでした。特に二本目。

そもそも水田(ボケ)が川西(ツッコミ)に母親役を演じさせる意味がありません。水田が詐欺犯としてボケるでもなく、ツッコミの川西もただただ騙される母親を演じるだけなので「やってるな」とか「防災訓練でも予告してくれる」とかのツッコミ(?)にまったく意味を感じません。

実際に「やってる(騙している)」し、そのテイじゃないとネタが進行しないんですから。

この配役が逆なら形になりそうですが、それはそれで普通の漫才ですからねえ…

 

審査員について

M-1が終わってから、審査員を中心にかなり盛り上がっているみたいですねえ。個人的には問題ありそうなお三方には、特に思うところはありません。むしろそこまで悪くはなかったんじゃないですか?

ネタの「好き嫌い」で言えば、エミちゃん以外にもネタの好みでポイントが高かった審査員もいましたし、新しいネタを「よくわからない」とコメントしている審査員もオール巨人以外にいましたからね。エミちゃんに関してだけ言えば、「ミキより好き」と言った霜降り明星の得点がミキより下ってどうなの?とは思いましたけど。

人の好き嫌いってわけじゃありませんが、サンドウィッチマン富澤が、人間的魅力の部分を見てコメントしていたのは驚かされました。同業だからこそ見えるものがあるのかもしれません。

 

オール巨人はと言えば、決してなんでもかんでもわからないわけでなく、見取り図の新しいフリにも的確に欠点を指摘する一方で、ミキにはもっとサプライズのあるもの(新しいもの)を求めていました。あとトム・ブラウンのネタをYoutubeで見ていたってのが驚きました。

 

志らくはですねえ…

かまいたちへのコメントはほんと何回聞いても意味がわかりませんでしたごめんなさい。

ただ、和牛の一本目の評価は確かにと納得できる部分もあって、この人はこういう人だと思って聞けば、それほど悪くないというか、別視点でけっこう面白かったです。

 

むしろやばいと思ったのは礼二じゃないでしょうか。ボケないと言って、本当にボケないし、コメントもやんわりふんわりでまともな指摘がなく、言っても他の人と被っていることが多かったように感じました。

 

あと毎年指摘される審査員目立ちすぎ問題ですけど、審査員より目立てないファイナリストなら無理じゃないでしょうか。

敗退後のコメントとかリアクションに毎回注目される中、絶対に腐らずに爪痕を残そうとする努力が芸人という職業には必要そうな気がします。

志らくはトム・ブラウンに二本目も見たかったとコメントしましたけど、そこにツッコミの布川が反応して、ボケのみちおが被せることができたから、彼らの注目度が増したわけで、審査員が目立つ、毒を吐く、ボケる、という一種の出演者へのフリには、喰らいつけなかった方が負けだと思うわけです。

そういえば、去年ジャルジャル福徳の半端ない悔しがり方(リアクション)とか、かまいたちの敗退後のコメントとかは今でも覚えています。

かまいたち、来年こそは優勝してほしいなあ。

 

ふう…ということで、長くなりましたが、素人からは以上です。

では!