『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』【映画ネタバレなし感想】ファンタビならぬファンサビ

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引用:©️2018 WBEI

 

本記事の前に、まずは前作のレビューのリンクをちょちょっと貼って…と思ったら、まさかの書いてない!?鑑賞から2週間は経ってしまったんですが、前作のおさらいもかねて感想を書くつもりです。

 

本作の感想を一言で言うなら、観客のターゲティングが甘すぎた、コレに尽きます。

 

ちょっと自分の話に逸れちゃうんですが、12歳の誕生日の時、伯父さんからの誕生日プレゼントでシリーズ第一作『ハリー・ポッターと賢者の石』をもらって以降、どっぷりとその世界観にハマってしまい、全作読破、映画も全作鑑賞済みとまあまあのポッタリアンだとは自負しているつもりです。

我々一般人の見えないところで魔法使いが活動している、という摩訶不思議な世界観。この一点のみにおいては、もう完全に手放しで無条件で最高。原作は原作で、ご都合主義で、超実力主義で、利己的で、ダメダメなところも満載なんだけど、それでも許せる良質なファンタジーです。

でも、本作に限って言えば、ダメなところをダメと言ってあげるのも真の愛なのではないかな、と。

 

ということで、感想に戻るんですが、ターゲティングが甘い、作り急ぎ過ぎた感

というのも、本作のような一大産業と化してしまった作品群の新シリーズを作るのって、まずはコアなファンに寄せていくか、それとも新規顧客にも力を入れるか、どこかでキッパリとした厳しい判断が必要になると思うわけです。

で、第一作をあらためて見てみると、もちろん無印版に繋がっていくような展開はあるものの、決して新規顧客を寄せ付けないようなレベルではなく、むしろ初心者に寄り添った造りになっていたと思います。ノー・マジ(非魔法使い)と魔法使いの対立や、人知れず組織化されている魔法使いたちの世界(魔法省)の仕組みも簡単に紹介されていました。

また、魔法生物という特殊な生き物の生態とそれを保護し守ろうとする青年を主人公に、人間界のみならず魔法使いの世界にも広がる光と闇、そして悍ましく危険な魔法生物がどう物語に影響していくか丁寧に作られています。さらに、プロットにもしっかりサプライズが用意され、ファンタジーとエンタメが見事に融合されるなど、新シリーズの開幕に相応しい作品だったと言えます。それがねえ…

 

本シリーズは作品毎に舞台を変えて全5部作展開することが予告されているのですが、2作目にやっぱり急ぎ過ぎたんじゃないでしょうか。まだ、新規顧客に寄り添って、下地を丹念に整える段階だったんじゃないんですかねえ。

前作で大枠(世界の仕組みや、魔法使いの生活)についてフォーカスしたんだったら、本作ではもっと本質的な“魔法そのもの”とかに注目してもう少し丁寧に説明してくれたら、なお良かったんじゃないかと思います。

以下はもう少し丁寧・優しく説明して欲しかったところを自ら説明しちゃいます。

 

姿現(あらわ)し・姿くらまし

作中ではありとあらゆる場面で多用されまくってる、あのギュルギュルと消えちゃうやつです。あの瞬間移動術の名は、消える時は“姿くらまし”、現れるときは“姿あらわし”と言い、実はかなり高度な魔法です。

未熟な魔法使いが術を行使してしまうと体がバレけちゃうこともあるほど危険な魔法ですが、ちゃんと術が行使できる人に掴まっていれば、術を使えない人も付添で“姿くらまし/現し”できます。

一方で無制限というわけではなく、大陸間移動などの長距離移動はよほど熟練した魔法使いでなければそれ相応の危険が伴います。

※本作でもニュートが渡航のために移動キー(以下説明)を使ったのもその所為かも。

 

移動キー(ポート・キー)

触れることで、定められた時間に定められた場所に瞬間移動ができる魔法の道具(無生物であればなんでもオッケー)のことです。健全な目的のためじゃなく、密航や誘拐など悪事のためにも使えそうな便利アイテムです。

 

無言呪文

映画の中で魔法が行使されているとき、呪文を唱える時と唱えない時があるのに気づかれたでしょうか。あれは、熟練者だからできる技で、わざわざ呪文を唱えないでも呪文の効果を発揮できるスキルの一つです。

魔法使い同士の戦闘では、あえて唱えず術を放ったほうが不意打ちの効果が高まるメリットもあります。一方でちゃんと唱えたほうが効果が高いことも。

 

反対呪文

呪文には、効果が対になった呪文が存在します。例えば、火⇔水、現れろ⇔消えろ、大きくなれ⇔小さくなれ、などなど。

これらは相対する呪文の効果を“打ち消す”効果があります。なので、本作のアレもたぶん反対呪文だったんじゃないでしょうか(ほとんどうろ覚え)。

 

許されざる呪文

魔法界には人に対して絶対に使ってはいけない呪文が3つあります。ルールを破って人に使用した場合、魔法界の刑務所で終身刑に値するほどの禁忌です。

それらは

  • 人を服従させる呪文
  • 苦しみ(痛み)を与える呪文
  • 死の呪文

なのですが、本作を見るうえで覚えておきたいのは3つ目の死の呪文。この呪文の特徴である「緑色の光」が見えたら…そういうことです。

『ハリー・ポッター』シリーズを体験したことのある観客なら、あの緑の閃光が光った時点でヒエッとなったに違いありません。

 

その他気になっているコト

1.ニュートのカバン

見た目は普通のトランクだけど、中は魔法生物の保護・飼育室になっている不思議なトランク。

公式HPには「中が無限に広がる不思議なトランク」としか書かれてないんですが、一体どうなっているの?

というのも、『ハリー・ポッター』シリーズでも中の空間を何倍にも膨らませる魔法がかかった場所や道具が何個か登場しました。このトランクもそんな“広がる”魔法がかかった後天的な道具の一つに過ぎないのか、それともまた違う不可思議な能力が詰まったキーアイテムなのか…

後者であれば、もしかすると今後物語にもがっつり絡んでくるかもしれません。

で単純に前者なら、このトランクを創造した魔法使いってどえらいスゲー魔法使いですよね。天候などの環境も自由自在に設定するってもの凄い魔力が必要そう…もしかして、オブスキュラスとも何か関係があるのか??

 

2.オブスキュラスをはじめとする魔法生物?たちの今後

魔法生物たちへの無知ゆえの虐待や恐怖が多い時代にあって、魔法生物学者であるニュートの果たす役割は決して小さいものではないと思うのですが、本作ではニュートの役割も疎かにされている印象を受けました。

新しい動物を登場させることばかりに気を取られて、前作保護していた動物はどうなったのか(自然に返したのか、まだ居るのか)とか、学者として魔法生物のデータをどう収集してまとめているのか、といった素朴な疑問が解決されず、足早に闇の魔法使いサイドの物語に押し流されてしまった気がします。

特に子どもの心に巣食う膨大な魔力を持った怪物=オブスキュラスなんて超魅力的だと思うんですが…たぶん5作目にはしっかり真相をも含めて解決してくれるんでしょうけど…

 

3.悪のカリスマ

前シリーズを体験している人間からすると、本作の巨悪にはちょっとゾッとさせられる点が多いです。圧倒的な力や恐怖で抑え込むだけでなく、言葉巧みに他者を操る能力に長けた敵であるに違いありません。

魔法世界の中には、他人の心を強制的に開かせて、記憶や体験を読んだり、考えていることを察知したりする魔法があります。それに加えて、前述の人を操る魔法があります。

人心掌握のためのありとあらゆる手段と魔法を用いて、魔法使い至上の世界を創り上げようとする今後の活躍(暗躍)にも大いに注目したいです。

 

まとめ

なんだか、ハリー・ポッターシリーズ用語辞典みたいな記事になってしまいましたが、これでも全然補いきれていない気もします。

それだけ、端折ったところが多く、ファンサービス過多の第二作目となっちゃってます。もうファンタビじゃなくて『ファンむけの・サービス過多/暗い二時間の鑑賞』でいいんじゃないでしょうか。

ってゆうか忘れてましたけど、めっちゃ暗いですよね。雰囲気もそうですけど、舞台をパリにしておきながら、優美でファンシーな雰囲気はほとんどなく、美しい情景も少なかったです。

とにかく、どこをメインに見せたいか、徐々に崩壊してゆく魔法界と人間関係なのか、ファンタスティックなビーストたちなのか、魔法や叙景のビジュアルの美麗さなのか、というコンセプトの弱さがネックです。

 

次はまたガラッと舞台も物語も転じてくるっぽいので、もちろん見続けたいと思いますが、何回も見るにはキツいかなあ…

 

では!