2022年読了ミステリベスト?

まずは1年間、僕の猫舎を訪れていただいた読者の皆様ありがとうございました。

また、ここ2か月はろくにミステリの感想すら更新できず申し訳ございませんでした。

たいしたランキングも作れず、読了海外ミステリも紹介できず、存在意義が薄れつつあるブログですが、執筆・創作意欲はそこそこあって、いつか、本当にいつか週一くらいに更新頻度が戻る日がくればいいな、とぼんやり思っています。

 

個人的な【悲報】なんですが、仕事である部門の部長を仰せつかることになりまして。

給料に関係ない部門なんで昇進でも昇格でもなんでもない誰かがやらないといけないただの肩書なんですが、なにぶん初めてやる仕事なのと、それ相応のストレスも覚悟しているので、来年から任期4~5年は今以上に不定期更新になると思われます。

「そーいや、僕の猫舎って海外ミステリばっか紹介しているブログあったけど生きているかな?」くらいの軽い気持ちで、年に1回くらい思い出してやっていただけると嬉しいです。お勤めが終わったら、頑張って更新しまくります。

 

 

ということで今年の読了作品はわずか24作。全作並べちゃいます。

 

J.R.R.トールキン『指輪物語 王の帰還』

E.S.ガードナー『奇妙な花嫁』

S・S=ヴァン・ダイン『グレイシー・アレン殺人事件』

G.K.チェスタトン『知りすぎた男』

クレイグ・ライス『大はずれ殺人事件』

ボブ・ラングレー『標的の原野』

ウィリアム・アイリッシュ『黒いカーテン』

ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)『九人と死で十人だ』

F.W.クロフツ『黄金の灰』

エリザベス・フェラーズ『細工は流々』

エラリー・クイーン『靴に棲む老婆』

有栖川有栖『孤島パズル』

ダン・ブラウン『パズル・パレス』

エリザベス・フェラーズ『自殺の殺人』

アガサ・クリスティ『忘られぬ死』

エドワード・D・ホック『怪盗ニック全仕事3』

エリザベス・フェラーズ『猿来たりなば』

相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』

パーシヴァル・ワイルド『検死審問ふたたび』

アイザック・アシモフ『われはロボット』

エリザベス・フェラーズ『ひよこはなぜ道を渡る』

アガサ・クリスティ『満潮に乗って』

C・デイリー・キング『鉄路のオベリスト』

ダン・ブラウン『天使と悪魔』

 

まず一つ胸を張って言えるのは、エリザベス・フェラーズトビー&ジョージシリーズを全部読んだぞ!ってこと。超傑作と名高い第4作『猿来たりなば』は想像を超える破壊力がありました。個人的には、第2作『細工は流々』のゾクっとする感じが好みでした。

 

 

アイザック・アシモフ『われはロボット』の、SFとミステリの間にある曖昧な境界線を行きつ戻りつしている感じが楽しかったです。SF作品に本格的に挑む前にロボット三原則は必修科目らしいので、これで準備は整いました。来年はアーサー・C・クラークロバート・A・ハインラインに挑んでみたいと思います。

 

 

カークイーンクロフツあたりの古典海外ミステリは安定の面白さでした。『九人と死で十人だ』のゴーストシップ(真っ暗な海洋を漂う死を運ぶ船)感と戦時中の雰囲気の合致がめちゃくちゃ好みでした。一つ言えるのは、心が急いているときのクロフツ作品の圧倒的重たさはやばいということ。現在読書中の『山師タラント』は約2か月かかってます。年末の心穏やかな休日ならすらすら読めるはず。

 

 

流行にのってドラマ化された相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』も読みました。ちょっとメンタル的にしんどい時期に読んだこともあって、なぜか勝手にフラれて傷ついた自分がいました。仕掛けはもちろんものすごくて、“謎”を“解く”過程を何度も丁寧になぞる執拗さが素晴らしいと感じましたが、改めて、広い世界を旅する海外ミステリを読みたくなりましたし、同じ国内ミステリでも、有栖川有栖『孤島パズル』のように孤島に行ってくれたほうが世界が広がってシンプルに楽しいと感じるんですよねえ。ここら辺はミステリに求めるものが違うんで所謂好みの範囲のレベルでしょうか。

 



 

もう一つしんどかったのはC・デイリー・キング『鉄路のオベリスト』です。歴史的価値のある短編がいくつかあるとはいえ、イメージのし辛い豪華列車に加え、難解な心理学の蘊蓄と経済学論議だらけの本編がめちゃくちゃ重かったです(物量も本自体も)。もっと読者に作中世界をイメージさせることができればさらに面白く読めるはず……。

 



 

今年の大収穫はダン・ブラウンです。

デビュー作『パズル・パレス』と、映画化もされたラングドン教授シリーズ第1作『天使と悪魔』を読んだのですが、さすがベストセラー作家というか、これだけエンタメを全部ぶっこんで読者(観客)を楽しませるためだけの作品が出来上がればそりゃあ売れますよね。特に『天使と悪魔』は、ただでさえ面白い映画でカットされていた挿話全部面白いので、原作を未読の方は、映画を見ていても絶対に読んだほうがいいと思います。リアリティとか再現性というものを上から殴って粉微塵にするだけの高すぎるリーダビリティのおかげでとにかくサックサク読めるんですけど、だからこそ、文庫版で200ページくらいの分量なのに上・中・下の三分冊ってどうなの?って思っちゃいますよねえ。いつでもポケットに入れておいて、気楽に読めるという意味では、ダン・ブラウン、1冊は常備しておいてもいいかもしれません。

 



 

 

ということで今年の海外ミステリのベスト3は以下のとおり

エリザベス・フェラーズ『猿来たりなば』

パーシヴァル・ワイルド『検死審問ふたたび』

ダン・ブラウン『天使と悪魔』

 

言い忘れてますけど『検死審問ふたたび』最高でしたよ。

特殊な記述形式と、コメディがいっぱい詰まったらしさ満点の法廷劇がやっぱり最高です。定期的に『探偵術教えます』とか『悪党どものお楽しみ』を読みたくなるのは、理屈じゃなくて心に直接わしづかみにして振るわせる何かがあるんですよね何だ。

 



 

ということで、改めて1年間大変お世話になりました。

しばらくは低浮上が続くと思われますが、引き続き僕の猫舎をどうぞよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えください。

では!