前回Elvis Presleyの記事から一気に現代にまでタイムスリップしてしまい、この間の5~60年のロック史がいったいどうなったのか触れないことをご容赦ください。
Ed SheeranとElvis Presley、もちろん全く違う国の異なったアーティストであるのは間違いないのですが、双方の曲を聞いた時の第一印象というか、戸惑い/驚きというのがかなり似ている部分も多かったので、もしかするとロック界の革新者としては同じ立ち位置に居るアーティストなのではないかと思う訳です。
ではさっそくオススメのアルバムと楽曲をどうぞ。
『+(プラス)(2011)』
デビューシングルと同時にリリースされたファーストアルバム。
幼少期からギターにピアノなど数多くの楽器を弾きこなし、父親からありとあらゆるジャンルの音楽を聴かされて育ったEd Sheeranだけあって、このアルバムの色も実に多彩です。
『The A Team』
は18歳のEd Sheeranが、ロンドンで友人の家やライヴハウスでの寝泊りを繰り返しながら地道にライヴ活動をしていた時に出会ったという、ある麻薬中毒の女性からインスピレーションを受けて作った楽曲。
ここで出てくるA Teamというのは、麻薬中毒の女性が摂取していた薬物がヘロインと同じカテゴリーAの薬物だったことから、直積的な麻薬中毒という言葉を包み隠す彼なりの思いやり/気遣いだったようです。
テーマに則って歌詞の方は真っ暗。麻薬の悍ましさや人生の生きづらさみたいなものがぎゅうぎゅうに詰め込まれていますが、メロディーは明るくポップなのが不思議な感覚を与えます。Ed Sheeranのインタヴューによると「(麻薬中毒という)暗いテーマはみんなが想像しにくいものだから、あえてup beat(陽気)に聞こえるようにした」ようです。凡人には何言っているかわからないんですが、この歌詞とメロディーの中に織り込まれた逆説的な表現が、麻薬そのものを表しているようで、天才というやつですか、という感じです。
歌詞の意味とかメッセージ性の強さと同時に、言葉の面白さというところに着目してみても、Ed Sheeranはデビュー曲から爆発しています。
タイトルのA Teamからdaydream,way since,eighteen,lately,face seems,wasting,pastries,screamとガンガン韻を踏むんで心地よすぎるんですよね。ここらへんのライミングもEd Sheeranはデビューから完成されているというか、レベルがとにかく高いので、言葉の楽しさ/心地よさという観点で聞いてみても面白い楽曲です。
『Grade 8』
これは歌詞を見る限り間違いなく恋/愛の歌。たぶん当時Ed Sheeranが付き合っていた女性に向けた歌なのでしょう。Grade 8というのはそのままの意味だとすると、教育課程の13-14歳程度なので、中学生くらいの甘酸っぱい恋の歌なのかな、と思うのですが、全然ほんわかしないんですよ。むしろ、思い通りにならない苛立ちというか、不安みたいなものが鬱積している様子がメロディーに現れているように聞こえます。
『Small Bump』
この曲は、歌詞を見たらわかるとおり、お腹の中にいる赤ちゃんをテーマにした作品です。曲を作るもとになったのは、Ed Sheeranの知人女性が流産してしまったというショッキングな体験でした。生まれてくるはずの我が子に対する愛情たっぷりの歌詞がずっと続く中、最後の数小節で赤ちゃんは天に召されてしまったことが分かります。
赤ちゃんというテーマで聞くと、オープニンのずんっずんっという低音の響きが心音に聞こえませんか?そういうことです。
『Autumn Leaves』
Complicatedという単語がめっちゃ気持ちいいんで、そのフレーズを聞くための曲だと思っています。
内容はタイトル「Autumn Leaves=枯葉」のとおり「死」をテーマにしただけあって、物悲しい曲調にはなっています。Mind(心)やSoul(魂)が登場したり、命を光や星に例えたり、輪廻転生を仄めかしたりと、なんとも不思議な歌なんですが、この曲もどこか気持ちいいんですよねー。夢の中というか幻想的な雰囲気のおかげでしょうか。
『Little Bird』
こちらも押韻が心地いいナンバー。Ed Sheeranが獣医を目指していた女の子と付き合っていた時の曲らしいです。最初の歌詞と後半の歌詞の数行を見ればどんなストーリーかわかるので、内容は省略しますけど、やっぱり恋における後悔の歌なんですよね。
そして、その後悔の叫びが現れている最後のサビがハイライトです。
『Homeless』
勝手に和製英語だと勘違いしていましたホームレス。ってゆうかそもそも、Homelessという言葉自体がイギリス発祥なんですね。
この曲は、文字通り、Ed Sheeran自身が路上生活者として暮らしていた時代のことを歌った歌。ラテン音楽っぽいビートにのった中毒性のあるメロディーがなんといっても魅力です。もちろんテーマに沿ったネガティヴな情報が詰まっているんですけど、それでもサビでは前向きなイメージがガツンと伝わってきます。
おわりに
最初は全アルバムのオススメ曲を紹介しようと思ったのですが、正直『+』を聴けばおのずと全ての楽曲を聴きたくなること間違いなしだと思ったので、ここらで終わりにします。
一応、他のアルバムの推し曲もぶら下げときます。どんなシーン(時間とか場所とか)でも対応できるような楽曲が多いんで、一度騙されたと思って聞いてみてくださいな。
『X(マルティプライ)』(2014)
「One」
「Sing」Pharrell Williams感がめちゃくちゃ強い
「Photograph」MVが良い
「Thinking Out Loud」MVが良い2
☆「I See Fire(Deluxe Editionにのみ収録)」映画『ホビット』が好き
☆「New York(Wembley Editionにのみ収録)」シンプルに名曲
がお気に入り。
『÷(ディバイド)』(2017)
「Shape of You」
☆「Galway Girl」最高&最高。Ed Sheeranのルーツでもあるアイリッシュ文化を盛り込んだだけあって、今まで出会ったことのないような名曲。
「Perfect」
「How Would You Feel」
「What Do I Know?」世界平和って感じの良曲。歌詞もストレートで良き。
では!