ROCK AND ROLL AND RAMBLE【Elvis Presley】

 ベイビー・ドライバーの影響で高校生の時以来の洋楽ブームが到来しております。

 ベイビー・ドライバーの影響でiPodも買ったし、Apple Musicにも加入済み。気になる音源を片っ端からDLし、どばどばと耳から注ぐ日々が続いています。だめだ。全然本が読めねえ。

 

 で、改めてロック史というか洋楽の歴史についても興味がわいてきたので、参考書とかないかなあと探していたのですが、いやいや、音楽って読むもんじゃねえ、聞くもんだろ?と頭の中のもみあげ男が喝を入れてきましてね。

 頭でっかちになってもアレなんで、まずはキング・オブ・ロックンロールことElvis Presleyから聞いてみることにしました。

 

やっぱりまずはデビューアルバム

Elvis Presley(1956)

からでしょう。

Blue Moon

Blue Moon

  • Elvis Presley
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 そもそも持ってるやつがオリジナル盤で、全米ナンバー1を獲得したデビュー・シングル「Heartbreak Hotel」すら入ってないんですよねえ(1999年のリマスター版には入っています)。なので、まずはこのデビューアルバム+Heartbreak Hotelという組み合わせで聞いてみました。一曲一曲のレビューまでできないと思うので、オススメの曲、という観点で紹介したいと思います。

 

 個人的なベストが1曲目のBlue Suede Shoesなんですが、これってエルヴィスのオリジナル曲じゃなくて、同じくロックンロールの礎を築いたとされるロカビリー・ミュージシャンのカール・パーキンスのヒット曲。

 カール・パーキンスの歌声と聞き比べてみても、エルヴィスの方が色っぽいというか、余韻の部分で特徴が見事に出ています。

 曲のもとになったのは、コンサートホールでの男女の会話「おれのブルー・スエード・シューズを踏むな」だったそうです。歌詞を見てもわかるように、

俺の家を燃やしても、車を盗んでも、顔を踏んでも、殴ってもいいけど、俺のブルー・スエード・シューズだけは汚すなよ。

みたいな歌詞のオンパレードで、聞いているうちにその滑稽さににやけてしまいます。


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 一方、3曲目のI Got A Womanはあの伝説の黒人ソウルシンガー、レイ・チャールズの名曲。

 オリジナルと聞き比べてみると、バンドが加わった分ポップさが増していますが、歌い方やパフォーマンスはレイ・チャールズに似通っています。やはりここでも徹底的に黒人らしさが全面に出ています。

 作曲者のレイ・チャールズは、この曲を発表した当初、ゴスペル(宗教歌)をR&Bに貶めたという敬虔なキリスト教徒からの非難が絶えなかったようです。なにせ「I Got A Woman(俺は彼女を手に入れた)」ですからね。歌詞もずっと「俺の彼女って最高さ」って歌ですから。清廉なキリスト教徒からは不道徳極まりない歌に聞こえたことでしょう。

 そして、そんな反抗心の塊だったような歌を白人のエルヴィスが歌ったことこそ、黒人のソウル・ミュージックを世間に知らしめ、浸透させた革命的出来事だったのです。


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 7曲目Tutti Fruttiも黒人ミュージシャン、リトル・リチャードのヒット曲。オリジナルは体の芯まで響くような重い歌声とTutti Fruttiの歌詞部分の高音域への抜けが心地よいナンバーですが、エルヴィスにかかるとこれまた裏声を効果的に使ったセクシーな楽曲になっています。

 余談ですけど、このTutti Fruttiとは男性同士の性行為を連想させる隠語だそうです。歌っていたリトル・リチャードも、当時のアメリカでは珍しく同性愛者を公表していたミュージシャンでした。人種・性差別が今よりもっと濃かった時代に、こんな露骨な歌を、白人でしかも世間からアイドル(偶像)視されていたエルヴィスが歌う、という事実のショッキングさはいかほどだったでしょうか。エルヴィスがテレビに出るとテレビ局に大量のクレームが入ったり、エルヴィスの激しい腰のスウィングを隠すため上半身だけしか映さなかった、といった伝説があったのも頷けます。

 そもそもRock and Roll自体が性行為の隠語みたいなものですしね。めっちゃロックじゃないですか?


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 ここまで書いておいてなんなんですが、そもそも曲を聴いて「黒人っぽいな」とか「白人っぽい」と思える感覚ってあります?素地の無い日本人には難しい感覚だと思うので、自分でも全く自信はないんですけど、例えばジャズを聴くとほの暗いライヴハウスで黒人の渋いおじさんが帽子を斜にかぶってサックスなんかを吹いている姿が思い浮かぶし、カントリーを聞けば、牧場でカウボーイハットをかぶった口髭のあるおじさんが浮かびます。そんなフワッとした印象をしかないまま、このアルバムを聴くと「なんじゃこれ」ってなるんですよ。

 例えば、本アルバムのラストを飾るMoney Honeyは、シンバルの「チッチチー、チッチチー」という音からジャズが底流を流れているのはわかるんですが、歌があるからジャズじゃないし、ギター伴奏があるけどブルー(Blue=憂鬱)な感じが無いからブルースじゃないし、バイオリンが無いからカントリーっぽくもないし、R&Bのようなシャウトもない。そうか、なんじゃこれの正体こそが「ロックンロール」だったのかもしれません。

 

 もう一つ、これはどんなサイトを見ても書いてあることなんですが、この世の全ての音楽ってブラックミュージックから派生しているんですよたぶん。

 黒人が奴隷として虐げられていた歴史の中で生まれたプランテーション・ソングがゴスペル/ブルース/ジャズ/R&Bに進化した事実は曲げることができません。

 しかし、それらブラックミュージックは、20世紀のアメリカでは決して受け入れられるものではありませんでした。むしろ、優れた楽曲は、白人の手で弄られ破壊され「白人の創造した歌だ」と盗用されて世に出されることもしばしばでした。(ここらへんの歴史は、2006年のミュージカル映画『ドリームガールズ』がわかりやすいかも)

 そんな人種差別の嵐が吹き荒れるアメリカでエルヴィス・プレスリーが歌ったのは、白人らしくアレンジされた紛い物ではなく「黒人の歌」そのものでした。それは盗用ではなく融合だったのです。そしてそんな黒人らしい歌が白人の民衆に受け入れられたその時こそ、ロックンロールが誕生した瞬間でした。

 

 

 最後にご紹介するのが、全米ナンバー1のデビュー・シングルHeartbreak Hotel

↓一つひとつの仕草がめっちゃかっけえので全人類見るべし


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 あのジョン・レノンが初めて買ったレコードであり、この曲を聴き「世界が変わった」「エルヴィスがいなかったらビートルズは誕生していない」とまで言わせた名曲のようです。

 で、十回以上聞いてみたんですが、曲調はただのブルースなんですよねえ。もしかして、ブルースの基本だったピアノにベースやギターが組み合わさったバンドの形が史上初めてだった、ということなんでしょうか?詳しい人教えてください。

 もともと自殺者の遺書を参考に作ったという逸話通りめちゃくちゃ暗い歌詞とメロディーなんですけど、細かいピアノのサウンドと、極限までシンプルにそぎ落とされたギターのフレーズ、そして控えめなベース音がクセになります。僅か2分程度の楽曲なのに、リピート機能を使って20分くらい聞いていても全然飽きないんですよ。なんか薬でも入ってんじゃないの?ってくらい快感なんですよね。


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いちおうCreepyNutsもあげとこ。

 

 

 

 

 

ということで本アルバムの

オススメ楽曲

  1. Heartbreak Hotel
  2. Blue Suede Shoes
  3. I Got A Woman
  4. Tutti Frutti

 

 まだまだエルヴィス・プレスリーのオリジナル曲でハマった曲は少ないんで、これからも聞き続けようとは思いますが、聞くところによるとエルヴィスの歌って全部で800曲くらいあるらしいじゃないですか。天才かよ。

 で、エルヴィスを始めて聞いたときに感じた「なんじゃこれ感」というかジャンルの枠にはまらない自由さを感じたミュージシャンで、江戸シー乱ってのがいるんですけど知ってます?え?知らない?お次は彼をピックアップしようと思います。

 

では!