ぼくねこ、家を買う【高いよ、オプション編】

 

 何とか年度内に家が建ちそうだ。住宅ローンの手続きや新居の調度類の調達も少しずつ進んでいる。

 

 今まで、家を建てるまでの準備編やハウスメーカー(以下、HM)の選び方、営業マンの見極め方など、なんの根拠もない主観で色々と書いてきたが、今日もそれを超える恣意的な解釈でもって注文住宅における【費用】について書いてみたい。

 

 

毎回言っていますが、以下の情報は、あくまで自身の体験談や調査の範囲内のもので、例外や差異があることをご了承ください。

 

 

注文住宅における費用

 簡単に説明すると、家を建てるうえでかかる経費には以下のようなものがある。

土地代

 もちろん家を建てる土地がなければ話にならない。土地の費用いわゆる地価は地価公示法という法律に則って専門家によって鑑定されており、インターネットで検索すれば希望の土地のおおよその地価額というのはすぐに出てくる。一般的には大都市であればあるほど高いし、逆に田舎は安い。

建築工事

 建築本体工事にかかる費用。土地の上にある部分だから上物(うわもの)とか言ったりするが、シンプルに「家」の工事費用だ。

 どこのHMでも似たようなものだが、この【建築面積≒床面積≒坪数×各HMの設定単価】が建築にかかる費用になる。各HMの設定単価のことを【坪単価】とも言ったりする。【坪単価】は、CMや広告等宣伝費に莫大な費用を注ぎ込んでいる大手HMであればあるほど高くなる。一方で広告や宣伝に頼らないHMや地元の小さな工務店であれば、ぐっと安くなる。つまり、建築費用のもとになる【坪単価】に適正な価格、などというものは存在しない。ただのブランドなのだ。ざっと調べてみたところ、中堅~大手HMの間で坪単価:50~100万円くらいの差は余裕である。

付帯工事費

 上物と土地さえあればそれで家が完成するわけではない。家には電気・水道・ガスなど最低限インフラ設備を整える必要がある。もともと中古物件が建っていて、間違いなく水道設備が使用可能、とかオール電化にするからガスは不要など費用が抑えることができるケースもあるが、まず間違いなく、何らかの付帯工事は発生する、しかも100万円とかは平気ですると思っていい。ちなみに中古物件を取り壊して、そのあとに新築を建てるとなると解体費用にも100万円以上はかかる。

 土地の調査・改良工事、地盤・基礎の補強工事もここに入れるとすると、+50~100万円以上はかかる。地震大国日本で、耐震等級3を目指すとなると、絶対に必要になる経費なので忘れてはいけない。

諸経費

 よくわからんがガンガン乗ってくる。以下、絶対もしくは高確率で要るもの

  • 建築確認申請 30万円前後

 そもそも建物を建てても良いという許可をもらうのにお金がいる。長期優良住宅の認定が欲しい、とか住宅性能に関する評価書が欲しい、といった場合にはさらに申請費用がかかってくるので、もう少し多めに見積もっていても良い。

  • 登記費用 15~30万円

 自分でできる、という方はもっと抑えられるのだろうが、司法書士や土地家屋調査士の代行手数料込みでこれくらいはかかる。

  • ローンにかかる手数料等

 現金で一括してウン千万払える人は何も考えなくていい。住宅ローンを借りる際には、ほとんどの金融機関で借入額に応じた手数料や事務手数料がかかる。大体、借入額の2%(税込み2.2%)が多い。なので3000万円借りれば、66万円も取られる。これは現金で支払う必要があるので、注意が必要

火災地震保険料

 賃貸ならまだしも、戸建てとなるとどうしても必要となる火災地震保険。保険料は住んでいる地域や建物の性能によって増減するが、大体5年払いで15~25万、10年払いにすると30~40万くらいは必要だ。保険料に関しては、まず間違いなく住宅ローンに組み込むことがないので、入居前に現金で用意しておかなければならない点も注意。

外構工事

 文字通り、建物の外の工事のこと。キレイな芝を貼りたい、かっこいいカーポートが欲しい、ヨーロッパ風の石畳を敷きたい、夜間は煌びやかにライトアップしたい、などと言っていると500万円とかを平気で超えてくる暴君。一応、平均値は150万円ほどと言われている。こちらは住宅ローンに組み込むことが可能な場合もある。

 

 ここまでで軽くまとめておくと、注文住宅に係る費用とは(単位:万)、

土地+建築工事+付帯工事(200)+諸経費(150)+申請費用(50)+登記費用(30)+保険料(25)+外構工事(150)になる。

 

 土地が1500万円、坪単価80万円のHMで100㎡(約30坪)の家をフルローンで建てるとすると、

1500+(80×30)+200+150+50+30+25+150+100(ローン手数料)=4,605万円になる……

 

 

わけじゃないのが注文住宅の恐いところ。

 

ようやく本題

高いよ、オプション

 先に書いたざっくりした計算式を見ておわかりかもしれないが、どこのHMで家を建てても付帯工事以下の部分は余り大差がない。大きく費用に差が出るのは、建築工事における【坪単価】と、まだ見ぬ恐怖の【オプション】だ。

 さて、このオプションとは何か。単純に「グレードアップ」だと考えると分かりやすい。注文住宅ではオプション品に対して「標準品」という設定がある。

 例を挙げると、一つの家につきトイレは2個まで標準品、照明は○㎡につき○個が標準などがある。この標準品は、坪数や建築面積に坪単価を乗じた建築工事費に含まれるため、仮に全ての仕様を標準品のままで契約すれば、先の計算式どおりの費用で確定する。しかし、一生に一度しか買えないという焦り、上のグレードの商品を一度見てしまうと感じる憧れ/見栄がオプション品の選択を加速させる。

 これからあくまで一例だが、オプション品の内容・金額を書き出してみる。卒倒しないように。

タンク付きトイレ→タンクレストイレ

 +120,000

キッチン背部の収納一式(カップボード)

 +250,000

玄関ドアの電子錠化

 +70,000

食器洗浄機の容量変更(浅→深)

 +50,000

キッチンシンクに浄水器設置

 +100,000

ロフト設置

 +700,000

標準品でない壁紙(クロス)

 1㎡あたり+3,000

コンセント・スイッチの追加

 一カ所あたり+2,000

照明増設

 一カ所あたり+5,000~10,000

カーテン・カーテンレール(10窓)

 +300,000

 

 これだけでざっと150~200万円くらいは増える。もちろんここに書いたものが一部標準品のHMもあるだろうが、その分はたいてい【坪単価】に乗っかっている。

 ここで恐いのは、HMによって標準品のラインナップが全然違うし、オプション品の価格やリストが契約の段階で非常に見え難いという点。契約した後で、「こちらが標準品、これがオプション品」と出されても、「欲しい」と思ったらオプション品を選ばざるを得ないし、そのタイミングでHMを変えることは困難だ(たいてい契約金を100万円程度払っている)。

 こういうHM特有の狡猾さというか、戦術に騙される人は自分も含めて多いと思う。

 

 例えば、大きな住宅展示場に立っているドでかい立派な家を見学したとする。洗練されたデザインのキッチン、高い天井、スタイリッシュなスリット階段(踏板と踏板の間に隙間があって階下が見える)、小粋な収納、温かみのある天然木の床材、日の光が差し込む広々としたバルコニーに胸が高鳴る。しかし、それらはどれも全てオプションなのだ。数百万、場合によっては一千万を優に超えるオプション費用がかかっている。

 展示場を訪れた客は、どれが標準品でどれがオプション品なのか区別は全くつかないし、むしろ、オプションの存在すら知らないで夢を膨らませる。

 HMを通しての注文住宅建築の場合は、請負契約が済んでから、本格的な図面の精査や仕様の確定が始まる。契約金を払い、契約が終わってから「いや実はこれもオプション品なんですよね」はざらにあるのだ。

 今日言いたかったのは、オプション品は本当に怖いぞ、ということ。まず、可能なら契約前に、オプション品のカタログ等を見せてもらった方が絶対に良い。「契約しないと見せることができません」なんて、入らないとドリンク代もわからないぼったくりバーみたいなHMなら絶対に契約しないほうが良い。

 

 今日書きたかったことは全部書けたのだが、ついでに価格交渉について少し触れておく。

効果的な価格交渉とは

 ここまで挙げた費用がざっと確定して初めて“価格交渉”が始まる。基本的には、契約が取れた瞬間HMの利益になるわけで、どれだけ値切れたとしても、ギリギリのラインなんてものは存在しない。こちらが提示された金額に納得できるかどうか。その一点に尽きる。

 

 勝手に向こうが△200万円とか提示してきた場合には、勝手にやらしておくがよろしい。値引き額を引き上げようとごねるもよし、その提示額に納得できるなら判をつくが良い。ただ、その前に高額オプションは絶対にチェックしたい。

 値引き額の交渉には、正解が無いと思っている。こちらが「かなり値切ったぞ」と思っていても、営業マンは内心「もう50万はいけたのに」と思っているかもしれず、個人的には、この値切り方は後悔も納得もどちらも無い中途半端なものだ。なので、底の見えない値引き交渉はそこそこにして、目に見える金額=オプション品に標的を変えるほうがスムーズに交渉が進む。

「トイレを2カ所タンクレスにしたいんですけど、ここなんとかなりませんか?」これで終わる(実際に成功するかは知らんが)。

 これなら無駄な探り合いが無くて済む。トイレの例で言うと実際にこんな話を聞いたことがある。

あるお客さんが契約後に連絡がつかなくなってしまい、発注した設備が無駄になってしまった。もちろんHMとしてその客には支払わせるつもりだが、支払ったとしても、その家の設備は無駄になってしまう。だからその家のトイレをタダで持ってくることができる。

 たぶんだけど、これは営業マンの営業トークだ。根拠はないけど、設備が無駄になるなんて意味がわからないし、仮に真実だったとしても、普通に考えてほかの客にタダで渡す理由にはならない。

 でも結果だけを見ると、20万円以上のトイレがタダになっているわけだし、値引きの効果としては明瞭でお得感を感じやすい。なので、価格交渉の最後の砦として、オプション品に目を付けるやり方は、他の価格交渉に比べるとお勧めしやすいのだ。

 

最後に

 本来、いくらビジネスとはいえ、楽に価格交渉できる世界ってどうなのかな?とは思う。ある意味、HMは不当な利益を得ているともいえるし、顧客は正当な対価を支払えていないということを示している。

 ちなみに、私が契約したHMは「絶対に値引き交渉はしません!」という奇矯なHMだったので交渉はめちゃくちゃ難航した。相手の心証を悪化させず、丁度よい塩梅でどちらも納得できる形で契約するのはかなり難しい。

 その時に、先述のトイレのようなHM特有の裏技(理由はなんだっていい)を使うかどうか、使わせるかどうか、使ってもらえるかどうか、が真の交渉なのだ。

 また、単純な値引きから発想を転換させて、金額にははっきり出ない追加のサービスを求めるか、保証期間を延長させるのか、自分たちの頭にない柔軟な提案も営業マンには求めたい。

 

 これを言うと元も子もないが、なによりも一番大事なのは値引きではなく、家を建てるにあたって必要となる大事なお金について、ちゃんと担当の営業マンと話せているかどうか。営業マンが価格についてちゃんと納得できる提案/説明ができているかなのだ。それに私たちがしっかりと納得して何の疑義もなければ、そもそも価格交渉など起こらないのだから。

では。