僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

M-1グランプリ2020総評

 

 コロナ禍の中ではありましたが、史上最多の参加者になったM-1グランプリ2020。暗く先の見えない世の中で、少しでも楽しませたい、笑わせたい、そんな芸人たちの熱い気持ちがひしひしと伝わってくる例年以上に良い大会でした。と同時に、いつも以上に荒れた大会だったのかなあと思います。

 いつも通り勝手なこと言いますが、基本的には全員面白かったですからね(保身)。

 

一回戦結果

1位 おいでやすこが

2位 マヂカルラブリー

3位 見取り図

4位 錦鯉

5位 ニューヨーク

6位 オズワルド

7位 インディアンス

8位 アキナ

9位 ウエストランド

10位 東京ホテイソン

 

以下筆者ぼくねこが面白かった順です。

各ネタ感想(以下敬称略)

1位 おいでやすこが

 まず、キレ芸が大好きなんですよ。キレ芸ってものすごく人を選ぶと思っていて、単純に「恐い」と思わせちゃったら終わり、みたいなところがあるはずなんですが、今回のおいでやす小田はめっちゃ恐かった。それなのに面白い。おいでやす小田がずっと正面を向いているスタンスなのもクスクスくる。相方に向き合う気が無い、というか、わちゃわちゃ舞台を動き回って荒らすんだけど、最後には元の位置に戻っているのもじんわりきます。

 こがけんが歌ネタ王とR-1、おいでやす小田がR-1の常連、と二人ともピン芸人としての実力が備わっているだけあって、二人の間とか音のバランス、とかも絶妙でした。シンプルにボケの質(選曲)も良いですよね。おいでやす小田の耳に残るパワーワードも抜群だったので、一本目だけの得点で言えばぶっちぎりの1位でいいと思います。

(志)うるさくない。衝撃を受けた。(松)単純明快で面白い。(上)名人芸。(礼)お互いに力がある。(塙)なんでもいいボケに対するツッコミはあまりない。ストレートな(強い)つっこみは面白い。

 

2位 オズワルド

 一回りも二回りも大きくなって帰ってきましたオズワルド。露出度と知名度が上がったおかげか、めちゃくちゃ堂々としていたように見えました。去年はあのミルクボーイのあと、かなり場がフワフワした状態でのスタートということもあって、世界観に入る時間が足りなかった残念な挑戦となりましたが今回もマヂカルラブリーの大爆発の直後の出番……残念です。

 マヂカルラブリーが無かったことになるくらい落ち着いたしっとりしたネタ運びを期待していたのですが、中盤以降絶叫系のツッコミを使いだしたので、こんなんもできるの?と、いやもっと落ち着いたのが見たい!という狭間で揺れました。

 一方、ネタの精度は抜群。爆発力もあるし、シンプルな題材と狂気のボケのギャップも良い。「ひきにき」とか「ずっと口開いてる」とか耳にこびりつくワードも多く、時間が許すなら、間をゆったり確保して、もっと聞かせてほしかったです。決勝でもう一本見たかった。

(塙)間とか演技が上手になっている。(松)うるさいのが続いたので静の漫才を期待していた。(巨)上品な漫才。もっと大きく突っ込んでみたら?

 

3位 ニューヨーク

 新時代に適応した最強ネタが出来上がりました。結構不謹慎なネタではあるんですよ。同じような被害に遭った人は、嬉々として見れないし、むしろ悪感情が沸々と沸いてくるようなリスキーなネタなのは間違いありません。でもですね。それを笑いに昇華しようとする精神にもう参りました、という感じ。

 ニューヨークって立ち振る舞いというか、見た目には正統派の漫才師に見えますが、思ったよりネタは捻くれていて(去年のネタだって湘南乃風を皮肉っているように見えました)、その捻じれ具合が面白いんですよ。

 でも、まだまだツッコミの屋敷が模索している感じがしています。今回は前回の反省(?)を踏まえてキレ気味に突っ込んでいたようですが、どっちが良いんだろ?明らかにボケで笑わせる性質上、引き気味なツッコミが重要だと思うんですが、できたら気の利いたツッコミでも笑いが欲しかったところ。ネタの性質も一本調子で波が無いので、さすがに決勝に行けるネタではないと思うのですが、新しいものを見せてもらった、というお得感は強いです。

(松)攻めてるな、時代と逆行している感じが面白かった。(塙)時事ネタの新しいスタイルを見つけた。

 

4位 インディアンス

 ほぼすべてのボケがちゃんとハマった強ネタです。ちゃんと一ネタ目に勝ち残るネタを持ってきた、と感じました。いかんせんネタ順がね……。去年の総評ではツッコミ(キム)が大仕事していない、と10位の評価でしたが、いやいやちゃんとツッコんでてめっちゃ面白かったです。もともとツッコミがボケに振り回されるスタイルですが、今回はキムの隙というか凡ミスを敢えて(?)出して、そこに田渕が乗じてさらに調子に乗る、みたいな流れが最高でした。

 点数が伸びなかったのは、トップバッターで出るにはちょっと一発芸スタイルが強すぎたんでしょうか。今回は、もう一回り一発芸スタイルの錦鯉がいたので、中盤くらいに出てきたら爆発していたかもしれません。

(上)感動した。(松)うるさいなあ、というタイミングが絶妙。(巨)余裕が出てきた。テンポが速く笑いがたくさんとれる。(富)ハモリのところが最高。安定した漫才。(塙)二人の呼吸が芸になっている。何かもう一つツッコミのセリフで笑わせれたら。(志)五月蠅さがなく、人間性が出ている。(礼)去年と全然違う。

 

5位 ウエストランド

 井口のしゃべくりの巧さが圧巻なので、ネタには全然心配していなかったのですが、河本がまじで噛んでて、心配になりました。とにかく井口がめっちゃ可愛い。あそこまでゆったり間を取りながら同じフレーズで笑わせれるってものすごい技量じゃないですか?シンプルに凄いと感じました。

 高熱の捻くれたツッコミで笑わせるおいでやすこがと違って、冷めた切れ味鋭いツッコミがちゃんと特色があって、本当ならもっと上位に食い込んで欲しかったんですが、噛んでたからなんかイライラしましてね。予定されたボケを吐き出す機会と化した河本と、拗ねた目線でのべつ幕なしに怒涛の如くツッコむ井口をもっと見たかったです。

(上)ツッコミ上手い。(松)刺さる言葉があったが、もっと刺してほしかった。

 

6位 アキナ

 個人的に優勝してほしかったコンビです。去年でいうと、かまいたち枠ですね。大好きでなんとか売れてほしいコンビ筆頭。山名も秋山もどっちもお笑いスキルが高いので、本当はWボケっぽいネタも見てみたかったりするんですが、今回もいつも通りのネタでした。

 狂気のキャラクターに振り回されるツッコミって、ある意味漫才のスタンダードなはずなんですが、同じ勢力内で競い合うにはライバルが多すぎるんですよね。かまいたちとか今回のニューヨークと比べてしまうと狂気のレベルがちょっと低いので、そのギャップで起こる笑いにあんま期待できないところがあったと思います。山名が単純に良い人そうなのも、ギャップが生まれないポイントかもしれません。

 アキナは現在、中川家・フットボールアワー・ブラマヨ・チュートリアル・千鳥・かまいたちらを輩出した、関西ローカル番組でずっとレギュラーなんですが、ロケにひな壇にフリートークにどこでもバチっとはまる実力の持ち主なので、どんどん売れていって欲しいです。

(上)スパイスが足りない。ちょっと待ち過ぎた。(志)テクニックがあって上手さを感じる。(富)好きな女子、という設定がはまらなかった。

 

7位 東京ホテイソン

 完全に好みで選んだ7位です。あの古典調というか伝統芸能っぽい独特のツッコミが大好きで、それだけ聞きたくてネタを見ている感もあります。好きは好きなんですが、間違いなくネタはワンパターンで持続力がなく、ドカンとした笑いが起こせても、その後の緩急が無いので、その爆発も薄れてしまう惜しいネタです。

 間違いなく東京ホテイソンの形はこれでばっちり決まってると思いますが、もうちょっとボケ数というかスピード感というか、後半に向かってどんどんテンポを上げていけるような構成だったら、もっと評価されていたのかもしれません。

(上)世界に入るにはネタが短すぎる。(松)声のバランスが合っていない。ぶっ飛びが足りない。(巨)頭を使わないといけないネタ。

 

8位 見取り図

 去年評「ジェスチャーがイマイチ」があんま改善されてなくて、去年以上にハマりませんでした。個人的には自分でもびっくりするくらい、一個一個のボケが全然刺さらなくて、ヒヤヒヤしてましたが、会場の空気があったかそうだったので良かったです。

(上)ネタがわかりやすい。(礼)尻上がりで面白かった。(志)去年よりも進化していた。(巨)余裕があった。

 

9位 マヂカルラブリー

 一発目のボケの破壊力が凄すぎて、期待値がどんどん上がってしまいました。後半はそれを超えられず失速。オチのおやじギャグで滑るところで、ちょうど最初の爆発の余韻はすっかり消えてしまって完全に無になって終了です。

 前回の出場(2017)の時は、ツッコミの村上に「観客が思っていることをただ説明するだけの木偶の坊」とさんざん言いましたが、今回は至極まっとうに突っ込んでいて、そこは面白かったです。ボソッと言っている「シェフの何持ってんの?違うよ!」とかめっちゃ好きです。最初の退屈なフレンチ講釈がボケに回収される手法も上手くて、この3年で何倍も面白くなったと感じました。

 テレビで見ると、そこまでウケている空気が伝わってこなくて、引いた感じで見てしまったため9位ですが、現場だとやっぱり違う空気だったんだろうなあ。

(上)バカバカしさが突き抜けて面白い。(礼)野田にしかできないボケ。テーマは普通なのに意外性がある。(巨)最初の笑いの後がしぼんでいった。村上君が上手いことツッコんでる。(富)こちらが野田クリスタル慣れしている。最後はもうちょっとほしかった。(松)最大瞬間風速は一番あった。

 

10位 錦鯉

 個人的には大好きなコンビ。長谷川のバカっぷりも強烈なんですが、ツッコミの渡辺から溢れ出る昭和の空気がツボです。なんか「太陽にほえろ!」を見ている感じ。

 ネタはいつも通りというか長谷川のおバカを全面に押し出した一発芸スタイル。流れ星とは違って一発芸はあくまでもおまけで、奇抜な設定と予想外の展開が持ち味です。M-1ではずっと準々決勝、準決勝あたりで燻っていて、ようやくの本戦出場。世間に広く認知してもらっただけで良かったんじゃないでしょうか。

(志)笑いの本質。(塙)全部面白かった。(巨)笑いの数が少ない。(松)パチンコに弱い。

 

総評

 今年も、本戦以外のところで、マヂカルラブリーのあのネタは漫才なのかどうか、という点で盛り上がってましたが、答えはもう出ているので触れません。

 好みで言うと、やっぱりセンターマイクをなるだけ外さない中で、新しいことをやってくれる漫才師が好きです。なので、今大会のオズワルドとニューヨークが好きなネタという意味では断トツ。ただ、それを上回るキレ芸のキレが凄かった。

 これも個人の奇癖というか性癖というか、こんなとこで言うのもって話なんですが、怒っている人を見ると自然と笑っちゃうんですよね。これまで色んな組織の中で、ありとあらゆる怒っている人を見てきましたけど、常に滑稽に見えちゃって笑いを禁じ得ない。そのせいで、おいでやすこがのネタなんて、ずっと面白いんですよね。ボケ(選曲)に翻弄されて、イライラしている人間の様がめちゃくちゃ面白い。オズワルドのキレた瞬間も面白い。ウエストランド井口の、お笑いは復讐、という熱さも面白い。

 そして、そんな個人的な笑いのツボを外してでも、マヂカルラブリーの2本目は凄かった。なんかすっごく懐かしい感じすらしました。高校の休み時間、教室でちょけてブレイクダンスを始めて、机の角で頭売って7針縫ったあいつ、高校の合格発表の翌日、昼休みに普段はしないサッカーをやり始めて、足首を骨折したあいつ、バッティングセンターで右バッターなのに調子に乗って左打席に入って、マシンにデッドボールを食らって親指を骨折したあいつを思い出しました。

 総評というほどのことじゃないですけど、漫才という形に終わりがないとはいえ、「漫才」という肩書というか名前にこだわる時代はもうとうに過ぎ去っていて、コントを始めとした多様な形が欲しく/見たくなっている気がします。有吉の壁とかが今もの凄い勢いがあるのって、やっぱりコントに特化したお笑いだからでしょう。センターマイクの前でスーツ姿の二人がびしっと決める、みたいなスタイルはもう古いのかなあ。少し寂しく悲しいところもあるんだけど、心の中では常にハナコのコントを欲しがっている自分もいて、なんだかやるせない気持ちになったM-1大会でした。ともあれ、激動の1年の終わりに、笑いというワクチンで免疫力がぐんと上がった気がしています。本当に芸人のみなさん、お疲れ様でした。来年もたくさん笑わしてください。

 あと、一応今年でM-1総評の記事は終了です。記事を書く前提で見てると、100%楽しめないことに今更気付きました笑

 

では!