ぼくねこ、家を買う【見極めろ、営業マン編】

 

 前回の投稿から早くも1年が経とうとしているが、2020年7月現在まだ家は建っていない。建っていないどころか着工もしていない。コロナウイルスの影響は住宅業界にも波及しており、特に中国に工場を持つ住宅設備メーカーが打撃を受けたことにより、住宅設備が納品されず、結果、物がないため工事ができない状況になっているという。

 私の場合は中国の影響はないのだが、外国に自社工場を持つハウスメーカーで建てているため、完成は当初の計画から大きくずれ込む予定だ。

 こんなご時世だからこそ強く感じるのだが、有事の際の企業としての対応力や営業担当者の適応力・臨機応変さなど、家を建てるうえでハウスメーカー選び、そして信頼できる営業担当者との出会いがいかに大事か痛感している。

 というわけで、今回は営業担当者の見極め方編。たかだか十数人にしか会ってないし、会っても数時間程度の人もいるが、それにしては「こりゃ信用ならない」という営業担当者にも多く出会ったので、注意喚起も含めて参考までに書いてみたい。

 ちなみにめちゃくちゃ偏見が混じっていることがあるのでそこらへんは一応注意喚起……誰も信用するなよ!実際には全て自分の目で見、耳で聞いて判断しろ!

 

 

信頼できない営業マン

1 オリジナルのプロフィールチラシを配ってくる営業マン

 別に何も悪いことじゃない。その営業マンの人となりを把握しこれから信頼関係を築くための第一歩だ。しかし、先制パンチとして自分のパーソナルな情報を開示する行為は、心理学で言うところの「自己開示」と呼ばれるテクニック。積極的な自己開示は、相手に安心感と好感を与え「営業マンがこれだけさらけ出したのだから、自分もたくさん話さなきゃ」という自己開示の返報心理が働くというわけ。

 なのでプロフィールチラシは相手の信頼を得るための常套手段。ただのテクニックのひとつで、実際には営業マンは心から自分のことを知ってほしいとは露ほども思っていない。営業マンが一番欲しいのは信頼関係ではなく契約だし、それでいい。

 

 では、なぜプロフィールチラシによる自己開示が信用できないのか。それは、営業マンと顧客との意識の乖離が見られるからだと思っている。

 家を建てる前の私たちは、そのほとんどが夢や希望と同じくらいの不安を抱えながら打ち合わせを開始する。パンフレットや実例集を見ながら胸をワクワクさせると同時に、コストや業者選定その他もろもろの手間やこの先待ち受ける障害のことを思い、肩を落とす。これが最初の心境だ。

 一方営業マンはどうだろうか。もちろん自分は営業マンではないので以下は妄想だ。「こいつらの財政状況はどうかな?(顧客のプロフィールシートを見ながら)うんうん、結構持っているからうちでも十分建てれるな。」「(じゃサクッと要望聞いていくか)最初に、こんなもの作ってみたのでご覧ください。」(プロフィールチラシをスッ)

 

 これが、人生で初めてハウスメーカーと打ち合わせをした場合なら、まだワクワク100%かもしれない。営業マンのプロフィールチラシも嬉々として受け取り舐め回すように見れるだろう。しかし、一社でも打ち合わせを経験したら、小さな問題や不安はすぐに出てくる。「大好きなデザインだし、快適そうな家だけど高そう……」「収納力が抜群だしロフトに地下室もあるなんて!でも高そう……」「めっちゃ高そう……」etc.

 この不安を解消することが営業マンへの信頼につながることをイマイチわかっていないのではないかと思うことが多々あった。私たちが思うのは、「あなたの会社で本当に良い家、一生安心して住める家が建てることができるかどうか」一点のみ。もちろんお金が腐るほどあれば失敗しても建て直せば良いが、そんなことができる人はごくごく僅か。欲しいのは真摯な態度、真剣な姿勢で、砕けた雰囲気ではないし、あなたが水泳部で全国大会に出場したことにも興味はない。

「これからたくさん質問をさせていただきます。かなり個人的な情報もお伺いするかもしれませんし、すでに他社との打ち合わせで何度もお伝えいただいたことを重ねてお聞きしなければなりません。しかし、それは全て、○○様のご要望をお聞きし、理想の/夢の家を建てるためのプランニングを行うためです。」これだけでいいのだ。

 なんか怒ってると思われるのも嫌なので、フォローしておくが、別に営業マンのプロフィールチラシを全否定しているわけではない。言いたいのは、こちらの真剣な気持ちをどれだけ汲んでくれるか、相手がどれだけ本気で向き合ってくれるかを見極める力を培うべきだ、ということ。基本的には楽しくやればよい(投げやり)。

 

 

2 すぐに図面を書きたがる営業マン

 家の図面無しに比較も検討もできないのは当たり前だが、打ち合わせ当初からすぐに図面を書きたがる営業マンには要注意だ。彼らは焦っている。

 住宅業界に働く営業マンの多くの給料制度は歩合制である。一定期間ごとに契約数の査定があり、それが給与・賞与にもろに影響する。だからこそ、「契約」に対する思いは深く熱い。私たち“お客様”がのらりくらりと本気度を見せず時間を潰そうものなら“見込無し客”と思われてしまい、結局良い家作りから遠のいてしまう。

 しかし、これはそもそも最初の図面が仕様もないのが原因なのだ。仕様もない営業マンが設計士に頼む図面は結局仕様もないものにしかならない。

 

 もうお気づきだろうが、そもそも“図面を書く”ということ自体が営業テクニックのひとつである。

 要望・希望だけが渦巻いていた頭の中のモヤモヤが、実際に形になり「○○様の夢のマイホーム」などというタイトルで図面となって表れる。カラーで描かれた図面の空は澄んだように青く、青々とした庭の緑が眩しい。実際には隣家があるはずなのに意図的に消され、広大な土地に見紛う立面図にも違和感は感じない。心臓は期待と喜びで高鳴っている。興奮と高揚で顔が火照る。そんな素振りをおくびにも出さず「ふ~ん、こんなもんね。」みたいな顔を装い、見積書の検討に入る。「なんだ以外に払えそうじゃん。」「他社とも比較してみたいので、いったん検討させていただきます。」ここまできたら、営業マンにとっては8割方勝利といっていい。“お客様”の具体的な検討の中に食い込めたからだ。

 メンタリストのDaiGoが言ってた気がするが、言葉や文章によって相手に想像させることは、その人に具体的な(しかもこちらが意図した)行動をとらせることに等しいらしい。

 つまり、“お客様”が図面と見積書を見、将来その家に住む家族の姿を想像し始めた時点で仮契約は始まっているのだ。だから、営業マンはすぐに(粗悪でも)図面を書きたがる。

 

 ハウスメーカーとの打ち合わせでは、おおむね2回目の打ち合わせで図面が出てくる。これ自体に何の問題点もない。問題なのは、営業マンが“要望を聞いた気になって”客に“想像させるために”書いた図面が出てくること。

 打ち合わせ中はそれなりに盛り上がったのに、家に帰って冷静に図面を眺めてみると、一つの要望を叶えるために、三つの要望が台無しになっている、なんてことはざらにあるし、絶対に要らないと言っていた設備がものすごい存在感で鎮座していることも多々ある。

 だからこそ言いたいのは、営業マンの第一印象も大事だが、図面の第一印象も等しく重要だということ。最初の図面と完成図面がほとんど一緒なんてことは滅多にないことはわかっているし、初回図面の完成度を求めているわけでもない。最初の打ち合わせで聞き取った要望のどこが実現できてどこが実現できなかったのか、今後どこに費用がかかってくるか、予算金額の積算根拠は何か、全てをわかりやすく説明できる準備が整わないならすぐに図面など書かなくていい

 

 

3 他社を落とすことでしか自社の価値をアピールできない営業マン

 今時、こんな旧式の営業マンは少なくなってきているだろうが、一定数いる他社の悪口ぺちゃくちゃ営業マン。

「●●さんって、設備のわりに値段高いでしょ?」「△△と契約してトラブった、みたいな話はよく聞きますねえ」「■■が謳ってる耐震構造って実はあんま意味ないんですよ」

 そもそもあまり気分が良くない話ではあるが、実はこれも立派な行動心理学。ネガティビティ・バイアスといって、ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が価値が高く、判断に大きな影響を及ぼす現象のことを指す。芸能人のスキャンダルとかに感じるあの現象だ。

 

 単純に営業マンの好意で教えてくれる場合もあるので、こちらとしては悪口なのか有益な情報なのかの判断がつきにくいし、かといって自社の有益な情報だけを提供されても怪しく聞こえる。

 なので、ここは敢えて他社を上げつつ、自社をさらに上げる。いわゆるアゲアゲ効果を用いてはどうだろうか。

 前述の例を挙げると

「●●社の全館空調設備はかなり高額ですが、たしかにそれだけの価値がある商品ですよね。でもうちの全館空調システムには●●にないこんな機能が備わっているんです。」「■■の耐震構造は~には強いのですが、~には弱い特徴があります。私どもは、そのデメリットを解消するための新しい構造躯体を考案いたしました。」

 他社を褒めつつ、さらに自社は他社と比べてこれほど優れているという客観的データを用いたプレゼンができれば、その会社(営業マン)への信頼感も爆上がりである。

 

 逆も然り、他社を落とすことでしか自社の価値をアピールできない営業マンは、自分の会社(と建てる家)に愛情を持っていないのではないだろうか。

 心の奥底では「こんな高い家が売れるかよ」「自分は社員価格で安く建てたけどそんなにデザインもかっこよくないし」とネガティブな感情を抱いてはいないか。

 自分の会社が大好き!自分の会社が作っている家が大好きだ!という営業マンなら、取り扱う商品についての知識は豊富だろうし、お客の要望を自社プランに合わせたプランニングも上手だろう。だからこそ、書いてくる図面は的を得ているし、金額設定の根拠や説明も的確になってくるはずだ。おい!そこの営業マン!自分の会社が建てた家は好きか?

ちなみにアゲアゲ効果なんてものはない。

 

 

4 すぐ値下げ交渉してくる営業マン

 これは声を大にして言いたいのだが、注文住宅において契約前の「値切り・値下げ」はそもそも存在しないと思っている。なぜか。単純に、値下げ分の金額を最初っから上乗せして提示しているからだ。

 

 実際の写真をお見せしたいくらいなのだが、別に何の交渉も始めていない段階で、建築費用3000万と書かれたすぐ下に赤字で「○○様 特別サービス△210万」「7月キャンペーン特別割引△40万円」とか書いてあるので魂消る。てか、たまげる、って字こえぇな。

 過度な値引きは不信感を増大させることに気付かないのだろうか。あと、値引きの根拠が“特別”とか“7月キャンペーン”とか意味不明なため、どれだけぼったくられているか想像すると本当に怖い。

 また、最初の数百万円の値引きなどハウスメーカーにとっては痛くも痒くもない数字だ。どうせ後から追加オプション等で数百万は回収できるからだ。ここで言うオプションとは設備(キッチン・照明・トイレなど)のグレードアップ、壁紙の変更、エクステリアの追加などで、いわゆる「標準」と呼ばれる仕様で家を購入すれば全くかからない費用なのだが、そんな人いるの?ってレベルでオプション費用がかかるのは必至。

 

 私たち客は、見積書に対して自ら数百万円を足していくような感覚が必要だし、値引きに対する耐性と、裏を読み取るような洞察力・観察力を磨いて営業マンにナメられない努力が必要だ。

 一方、営業マンは即刻過度な値引きを止められたい。お客の不信感を煽ることになりかねないし、なんでその金額を値引いたのか詰め寄られても答えはないだろ?なかったぞ。

「250万円値引かれている根拠がわからないのに、250万円の値引きで喜べるわけがない。△1000万円なら嬉しいが無理でしょ?今のところ我が家の予算内には収まっているけど、(値引きのせいで)この見積書のその他の費用についても、適正なのかどうかの判断がつかなくなってきている。値引きは一度要らないので、改めて出しなおしてください」

って言って8月に出てきた見積書の7月キャンペーンが消えてなかったのすごいよ。本当に何なの7月キャンペーン怖い。

 

 やや脱線したが、本当に良いものを売っているならむしろ断固として値引きはしないはず、と思っている。だから契約前の値引きなど意味はない。

 いくら会社の方針とはいえ、値引き頼みの営業マンに明日はなく、信頼できる営業マンには程遠い。実際に意味ある値引き・値切り交渉は、契約後に発生する諸費用やオプション費用の精査中にあるが、ここら辺は機会があれば書きたい。

 

 

おわりに

 今まで書いたことはあくまでも筆者個人の意見で、信憑性のあるデータをもとにしておらず、ただの実体験に基づいた記録以上のものではない。

 ひとつお詫びしないといけないのは、営業“マン”という昨今のジェンダー概念を蔑ろにする用語を多用した点。個人的にお会いした営業職員が全員男性だった、という以外に営業マンという言葉を使ったので他意はない。

 男女関係なく、顧客との信頼関係を重視するだけでなく、良い家づくりのための熱意を持つ営業職員と多く出会いたかったと思う次第である。

 

では!