『ストレンジャー・シングス』がめちゃ面白かったので今更だが布教したい【ネタバレなし感想】

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 新型コロナウイルスによる自粛期間中にNetflixに加入した。お目当てはクリス・ヘムズワース主演、サム・ハーグレイブ監督で4月24日に公開した『タイラー・レイク

 『タイラー・レイク』は、Netflixの1か月の視聴世帯最高数を公開からわずか1週間で塗り替えたモンスター級の作品。レーティング(いわゆるR指定)は厳しめで、残虐な描写が多いので、全世帯にオススメとまでは言えないが、拘りぬいたアクションの数々、男と男の血沸き肉躍る戦闘シーンは圧巻。

 登場人物の行動理念や原動力について「なぜ?」や「どうして?」といった質問はもちろん無粋。その分、一つ一つのアクションが論理的に考えられており、説得力と整合性は高められている。機会があれば鑑賞して欲しい。

 

 

 

 今日ご紹介したいのは上記の作品ではなく、連続ドラマ仕立てのSFホラー作品『ストレンジャー・シングス

 ちなみに『タイラー・レイク』でも登場した俳優デヴィッド・ハーバーがメインキャストの一人を務めている。未だシーズン1のみの鑑賞だが、本シリーズ単体で十分な完成度になっているのでぜひ見て欲しい。

 

特にお勧めしたい人は

  • サイレントヒルやバイオハザードといったホラーゲームが好き
  • スティーヴン・キングを代表とするモダン・ホラー小説が好き
  • ホラーは苦手だけど、少年少女の冒険小説は好き
  • 80年代アメリカの雰囲気、音楽、ファッションが好き
  • 80年代アメリカの冷戦やエネルギー危機といった歴史にも興味がある

 

 オススメとか言っときながら、配信は2016年~なので漂う今更感……。だが、オススメに早いも遅いもないはず‼臆せずやってみたい。

 

 

以下物語のネタバレはありませんが、1話以降の登場人物紹介や展開バレを含む恐れがあります。

 

 

 

 第一話『ウィル・バイヤーズの失踪』のタイトルどおり、シーズン1は12歳の少年ウィルの失踪をめぐる謎とその解決に焦点があてられる。彼の失踪を発端に、悪質な事件など何十年も起きたことがない平和な町ホーキンスで、異様な事件が頻発する。その影には、ホーキンス研究所の極秘研究が影響しているようなのだが……。

 

 第一話からショッキングな映像が盛りだくさんで飽きさせない。研究所から逃げ出したであろう“ナニカ”、そして何の痕跡もなく忽然と姿を消す少年。非常時に明滅する照明やダークファンタジーらしい“闇の森”など映像で楽しめる仕掛けもふんだんに用意されている。大人に相談せず、自分たちで捜索へと乗り出す少年たちの冒険劇は言うまでもなく楽しい。

 “ナニカ”の正体と、“どこに”消えてしまったのか、というメインの謎を装飾するのは、ホーキンス研究所で実験体として育てられた011のタトゥーが入った少女。ホーキンス研究所は何の研究をしているのか、何のために?少女はなぜ研究所にいるのか?こちらは、当時のアメリカの情勢を色濃く反映した真相となっており、メインの謎に引けを取らないぶ厚いストーリーを構成している。

 それらストーリーから伸びた人間ドラマの枝葉も生き生きとした活劇で描かれる。少年たちを事あるごとに虐める典型的ないじめっ子や、少年少女たちのロマンスが物語に見事に調和し、本作に夢中にさせる要因になっている。

 

 時代が80年代ということもあって、小道具の魅力にも事欠かない。ボードゲーム「D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)」に始まり、トランシーバーやラジカセなどのレトロ家電、クラシックカーの数々、また、流れる音楽は70~80年代の伝説ロック・バンドたちの名曲揃い、ときている。

 特に音楽は、80年代を席巻したオルタナティヴ・ロックではなく、ポストパンク、ニュー・ウェイヴといったジャンルのイギリス出身バンドの曲が多く使われているのが印象に残った。(「ザ・クラッシュ」「ジョイ・ディヴィジョン」「デヴィッド・ボウイ」などなど)

 

 

 最後は、本作の重要人物を演じる多彩な俳優陣について。特に、ホーキンス警察署長ホッパー役のデヴィッド・ハーバーと、失踪したウィルの母ジョイスウィノナ・ライダーの二人は圧巻だ。

 ホッパーは、見た目は厳つく、乱暴で粗雑な印象を受けるが、言葉の端々からは隣人愛に満ちた好人物だとわかってくる。今は田舎警察の署長だが、昔は都会の警察で働いていたことが仄めかされているし、ホーキンスという田舎町でも怠けることなく職務に専念していることは、彼がホーキンスの過去の事件や、データをかなりの長期間にわたって記憶していることからわかる。謎を追う際の調査方法は都会で学んだものだろうし、咄嗟の機転やいざというときの腕っぷしの強さも魅力だ。

 このようなハードボイルドなキャラクターが一人いると、作品がぐっと引き締まるのがよくわかるし、それら細かい設定に振り回されない、むしろ完全に自分のモノにしているデヴィッド・ハーバーという俳優のすごさがわかるだろう。

 

 もう一人の名優はウィノナ・ライダー。恥ずかしながらウィノナ・ライダーは『シザー・ハンズ』のキム役で止まっていた。こんな素晴らしい女優になっていたとは。

 本作で彼女は、最愛の息子を奪われ狼狽し恐慌をきたす母親という典型的なパニック状態だけでなく、妄信的にも見えるほど強い信念と確信をもってウィルを探す力強い母親を演じている。これら異なった2つの性質を、分裂させることなく融合させ滑らかにシフトチェンジし、時には鋭くギアチェンジして観客の心を不安から高揚まで揺さぶる演技力は本作の中でも特出している。

 ドラマで演技力?と訝しむ人はいないだろうし、上述の2人以外の若手俳優陣だって中々頼もしい。彼らの迫真の演技が『ストレンジャー・シングス』の魅力の源泉であり、ヒットの要因なのは間違い無いと思う。

 

 

おわりに

 BGMは怖いし映像も恐い。けれど、友情は熱いしロマンスもアツい。SF好きにも、ホラー好きにも、冒険好きにもレトロ好きにもオススメしたいTVドラマシリーズだった。

 

 ここにきて、主人公の少女にも、本作の重要なテーマ○○○○(別名○○○○○ー○○)にも全く触れていないことに気付いて後悔している。まあネタバレにはならないだろうが、そんな重要なキーワードなしでも十分楽しめること請け合いなので、ぜひこの退屈な自粛期間中に体験してみてほしい。

では!

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