引用:2019 UNIVERSAL STUDIOS
最っ高でした。物語の完成度/ツッコミどころ/粗の多さ/などを指摘できないことは無いんですが、それ以上にアクション映画としての完成度が高いうえに、抜け目なく、計算高い演出の数々に惚れ惚れとさせられます。
ワイルドスピードは全シリーズ見ていて、それなりにファンだとはいえると思うのですが、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムが登場してからは完全にこの二人に喰われた感があって、元々本作にはワイルドスピード作品としての魅力を感じていませんでした。ただ見終えてみると……うん、これワイルドスピード超えたね。
先ずは本作を映画館で観ようと思ったきっかけなんですけど、定期購読しているブログしーまんの映画から学ぶ人生にガッツリ影響を受けています。その中では、事あるごとにある監督が登場します。それがデビッド・リーチ監督です。最新鋭のアクションを生み出し、映画業界大注目の存在!ということで、アクション映画好きの端くれとしても見ないわけにはいきません。
結論は何回も言うように「最高っ!」なんですが、先に一つ苦言を言っておくと、本作、ワイルドスピードシリーズを見てきた人にしかわからない小ネタが多いし、メインキャストの過去だったり経歴が物語にがっつり反映されているので、マジでシリーズ未鑑賞の人は何が面白いか/何やってるのか全く意味不明でしょう……
今この世に出ている最も新しいアクション映画を観るためだけに、シリーズ全部見る価値は無い(!)し、シリーズ未鑑賞で観るにはあまりにリスキー。
“家族”をテーマにした家系の映画としては既にシリーズ7作目の『スカイミッション(2015)』で極限まで到達したと思っているので、もう同じ軸で『ワイルドスピード』を観ることができないのもモヤっとするところ。車好きのブライアン・オコナー(ポール・ウォーカー)が天国で悲しんでるよねきっと。
ただシリーズ8作目『アイスブレイク』はめちゃくちゃ良かった。7作出し続ける中で飽和状態になったカーアクション(というか車でどこまで滅茶苦茶できるか、みたいなもの)が落ち着いて、でもしっかり車を全面に出しながら、さらにSF感まで付け足しちゃう。ここにアクションが加わって、なんだかんだでまとまった作品にはなっていました。
で『スーパーコンボ』ですよ。こっからが本題。
上述のSF感というものがぐっと底上げされ、さらにデビッド・リーチ監督によってアクションにさらなる磨きがかけられることで、ワイルドスピードは新たなる次元へ到達しました(もうシリーズ終わりそうだけど)。
こっからはストーリーのネタバレも含むので、未鑑賞の方はお気を付けください。
もう重要なポイントはしーまんさんのブログと動画内で全て語り尽くされていると思うので、自分の記憶の補完のために少しだけ。
まずはさっきも言ったSF要素について
ヴィランであるブリクストン(イドリス・エルバ)の体に施された改造手術からして、オッとなりました。なになに?どこのマーベルかな?とも思ったけど。まあ肝心の改造の中身にはほとんどノータッチだったので、本気でSFしようと思っていたわけではないはず……
攻撃から身を守るために、眼で見た映像を解析する技術は『ミッション:インポッシブル』しかり真新しさは無いものの、格上の敵の演出には十分。ここに一つツッこむとすると、ブリクストンの見た映像の「危険」とか「脅威」ってまんま『ターミネーター』ですよね。好きです。
あと、ブリクストンの乗っているバイクにAIが搭載されているのも時代を感じさせますよねえ。「最短経路を!」とか命令しちゃうとアクションの醍醐味が少なくなる気もしますが。とはいえ最短経路を取ったからこそのあの逃走劇だった考えるとそれはそれで納得です。ついでに言うと、ブリクストンのバイクも『バットマン』のバットモービルっぽくで大好きです。
全部ブリクストンの話になって申し訳ないのですが、黒幕エティオンについては次作で深堀りされるとして、改造人間がブリクストンただ一人ってのはどういうこと?
もちろんバカバカ改造人間が出てきたら萎えるし、ラストの展開も変わっちゃうので無理からぬところなのはわかりますが、ブリクストンがただ一人の成功例、的なエピソードか、全国各地にいるにはいるけど、ホブス&ショウ担でブリクストンが付いているみたいな解説があっても良かった気がします。うろ覚えですが「まだ他にもいる」的な説明は最後にあったのでここは要確認。
全然SF関係ないけどブリクストンの胸元にあるガンホルダー、ドチャクソかっこいいね。あれは実践でも使用されているのかな?詳しい人教えてください。
ストーリーについて
物語については荒唐無稽なところは突っ込みません。なんで?とかどうして?という根本的なところは一定スルー。個人的にもうちょっと知りたかったところを中心に書きます。
またまたブリクストンの話だけど、しょっちゅう「顔を撃たれた」って言ってるけどどこを?下の歯が銀歯だったから多分口腔内かな?「頭」じゃなくて「顔」だから、口に銃を咥えさせられて処刑的な撃ち方をされたのかな?とは思っているのですが、二人の繋がりがややわかりにくかった(説明時間不足)気がしました。
あと冒頭のシーンで、ショウの妹ハッティ(ヴァネッサ・カービー)が自身の体にウィルスを注入してブリクストンから逃げるシーンがあるのですが、注入しないといけない必要性が薄くないですか?持って逃げる選択肢は、ウィルスが破壊され拡散した時のリスクを考慮して消したとして、容れ物自体は缶コーヒーくらいの大きさだし、どうしても体に注入しないといけなかったとは思えません。それに注入したものを取り出す施設もエティオンにはあるなら尚更必然性は無さそうです。
体に注入で思い出すのは『ミッション:インポッシブル2』ですよね。大きな目的のために死を覚悟して自身の体に注射することで、その後の解毒剤争奪戦への重要なシークエンスになっていたのは巧かったと思うので、本作ももう少しなんとかならんかったかなあ、と。そういえば、ハッティ役のヴァネッサ・カービーは『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』にも出てたね。
エティオンの戦闘兵たちがグローブを無力化されて肉弾戦に持ち込まれるってのは冴えたアイデア。デジタル社会(これも古い表現か?)にアナログが勝つ方法ってまあコレしかないですよね。
『ダイハード4.0』みたく味方にもハイテクに長けた仲間がいて、それぞれの得意分野で協同しながら強大な敵を倒すという展開も熱いです。
話が逸れますが、強大な敵が出てきたときに、対するヒーローがとれる策は大きく二つあると思っていて、一つはシンプルに自分たちも見合う力を手に入れ立ち向かうパターン。『アイアンマン』とか機械系ヒーローは改造や科学技術の進歩などを組み合わせれるので相性が良い傾向にあります。
でもう一つは、相手を弱体化させて、こちらの得意分野で戦う(能力・地理etc……)パターン。本作はもちろん後者なわけですが、この手法の良いところってパワーのインフレ化を抑制できるところ。前者みたくヒーローも成長しちゃうと、次作で前作よりももっと強い敵を出さなきゃいけなくなるし、その加減とかバランスを取るのに苦労する傾向があるんですよね。だからこそ、『スーパーコンボ』で後者の手法を取ったのは完結編への道程を考えると英断だと思うわけです。(まあ、制作サイドが見せたかったアクション重視という理由でしょうけどね)
『ワイルドスピード』ファンにとってのワイスピ感ってのは、ニトロや連結、フットスペースの撮り方にビシビシ出てます。ただ、登場車種が少ないってのは悲しかった。もう少し公開を待てば、スープラとか出せたかもしれないのに……まあ、ショウが乗ってたマクラーレンとは値段(5,000万クラス)が釣り合わんから無理か……
最後に撮り方について少しだけ。アクションの凄さとか演出は詳しくわからないですが、最後の滝下のシーンは別格です。最終決戦が夜明け(ほぼ真っ暗)から始まって、朝(明るい)のシーンに繋がることで、二つの時間帯/映像をスムーズに観客に見せる手法にも痺れたんですけど、こっちはそれ以上。
滝下への落下の衝撃でも急に壊れなくなったハッティのウィルス抽出装置の件は置いておいて、滝下だから、滝から流れる水が岩に当たって雨っぽくなってるんですよ。ヘリが壊れて火がでたり明滅していて、なんとなく天候が雷雨っぽく見えるのも最高です。最終決戦ひとつで時間帯/天候(実際には変化無し)まで動かしながら、乱戦からカーチェイス、一騎打ち(実質は違う)、決戦後の抱擁/邂逅まで、一つの大きな流れの中で違和感なく見せてくれた時は終始鳥肌もの。
-HD-世界最高の落差を誇るエンジェルフォール(ベネズエラ/ギアナ高地)-Angel falls, Guiana Highlands,Venezuela-
一応、滝が雨になってる有名なエンジェルフォール貼っとこう……
もちろんアクションに関しても、雨とスローモーションという組み合わせの妙技も光っていて、ただのアクション映画ではなく演出、撮影にも細かすぎる配慮が行き届いたうえで制作されていると感じました。
最後の最後に蛇足ですが、しーまんさんがおっしゃっている音(BGM)が五月蠅い問題は、たしかにあります笑
個人的には爆音カモンなんですが、せっかく白眉のアクションシーンが多いだけに、やっぱり爆音BGMが邪魔をしていたのかな、と。だって、見終わってみて今どのアクションが印象が残っているかなと思い出すと、序盤にショウがハッティの家で襲撃を受けた時、トースターをグローブ代わりにして、殴る度にチンチンいっているシーンでした。BGMミュートVer.とか発売されれば絶対DVD買います。
では!