脱ミステリ

   もし画面の前のあなたが、定期的に≪僕の猫舎≫を訪れてくださっている読者であれば、ここ数日、私がミステリというジャンルやワードそのものと何故か必死で向き合おうとしていることを感じ取っていただけるだろう。

 

   しかし、ここにきて既に限界が来ている。ネタが無い、ということではなく、ちょっとお腹いっぱいという感じなのだ。こういう時は、どうしたらいいのか。アイスクリームの合間にはしょっぱいものが欲しくなると良く聞く。そんな時にチャンジャや塩からを平気でぱくぱく啄ばむ人種を私は軽蔑していた。だが今度は私が今猛烈にたこわさが食べたい心境になっているのだ。全くミステリ関係の無い、紙を束にした物体を欲している。

   以前「この世にミステリじゃないものはないのではないか」と提唱したはいいが、あっさり撃沈してしまった私は、その中から純文学を一度読んでみようか、と考えてみた。しかし、なかなかのボリュームと(これは想像だが)どっしり感が逆に胸やけを起こすのではないか、と思って、今回は図鑑や辞書に焦点を絞って対象になりそうな作品を探してみた。しかし探してみたはいいが、家にその類の本が全くない。1時間ほど押入れやウォークインを荒らしまわって、ようやく見つけたそれらしき1冊がこれだ。

f:id:tsurezurenarumama:20170502170623j:image

   右上に『The Gran Turismo Magazine Beyond the Apex』これはPS3向けレーシングゲームであるグランツーリスモ6初回限定盤ボックス付属のブックレットであり、『Beyond the Apex』は直訳すると“頂点を超えて”となる。

   これが目次部分

   f:id:tsurezurenarumama:20170502170730j:image

   内容はというと、目次を見ていただければわかるように、序文が『自動車のための工学』から始まることからも、自動車の中で起こる物理現象一つ一つを解説した、なかなかコアな読み物と思いがちである。しかし、その解説が驚くほど解り易い

   先ほどの序文の一部を抜粋する。

自動車について深く知りたいと考えたクルマユーザーがいきなり専門書を手にとっても、難解な理論や数式に読み進める意思を奪われてしまうケースが多い。自動車のテクノロジーは広範な工学的基礎知識の上に成り立っており、専門書はその基礎知識の理解を前提としているからだ。ならば、その工学的基礎知識を解説したテキストがあれば、多くのクルマユーザーとプロフェッショナルを繋ぐ橋渡しができるのではないか。

   まさに本書はこれを体現している。私は特段車が好きなわけではないし、あまり興味もない。エンジンがどうやって動いているかやブレーキの制動方法もなんとなく知っているし、全くの無知というわけでは無いと思うが、それでも+αの知識の全てがここには詰まっていると感じる

 

   実際に今年の2月、自家用車が故障し正規ディーラーに修理に出した際にもエンジン部の不調が判明し、担当者から聞いたこともない単語で「あれやこれやが色んな作用で不具合を起こしている」と説明されてかなり戸惑った。

   家に帰り『BtA』を手に取り、エンジンの項目を見ると、担当者が言っていたエンジンのパーツ名が載っているではないか!もちろん、こんな限定的な修理事例に対応可能な教則本というわけではない。あくまでもクルマユーザーとプロフェッショナルを繋ぐ橋渡しでしかないが、それにしては充実しており、運転席のドアの内張りに収納しておいてもいい一冊かもしれない。

 

   ここまで書いてきてなんだが、最初は「オチはしっかりミステリと絡めよう」と思っていたことだけは知っておいてほしい。

   今回は、ミステリを読みすぎて食傷気味の読者に是非オススメする、書籍ですらない、単品で販売さえされていない付属品の紹介である。

 

 

では!