ゲイリー・オールドマンといえば、ハリウッド屈指の演技派俳優です。また、同業者の中でも、好きな俳優にゲイリー・オールドマンの名を挙げる俳優は少なくありません。
そんなゲイリー・オールドマンのおすすめ映画2選?少なくね?とお思いのあなた。ごもっともです。別に、特におすすめの2選という意味では決してありません。有名な映画評論サイトやブログであまり取り上げられていない2作を、今日は紹介したいと思います。
ちなみによく目にするおすすめ映画はこれら
『レオン』『ザ・ウォーカー』『クリスマス・キャロル』『ハンニバル』『告発』『シド&ナンシー』『ハリー・ポッター』『ダークナイト』『裏切りのサーカス』『フィフス・エレメント』『トゥルー・ロマンス』『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『不滅の恋/ベートーヴェン』『ドラキュラ』
数作、見たか見てないかあやふやな作品も入っているし、私自身ゲイリー・オールドマンの全てを見てきたわけでもないので、完全に独断と偏見でおすすめする2作がこちらです。
※優劣はありません
エア・フォースワン
正直、なぜ誰もおすすめに挙げないのかわからない一作です。
テロリストにハイジャックされた、アメリカ合衆国の大統領専用機エアフォース・ワンを舞台に、単身でテロリストたちに立ち向かう大統領をハリソン・フォードが演じています。一方、ゲイリー・オールドマンは、テロリストグループのボスであるイワンを演じているのですが…全体的にそこはかとなく小物感が漂っているのが、ゲイリー・オールドマンにしては珍しいところです。ただ、対するのは、世界一の超大国アメリカのさらに頂点に君臨する大統領なので、比較するのが不適当かもしれません。
女子どもを盾にするという極悪非道な戦法をとったとはいえ、世界一の権力とその実行力を持つ大統領を追い詰める悪役というのは、かなり存在感があります。
真の目的が、自分のボスの釈放を要求する、という小ぶりな点は置いておいて、いちテロリスト対大統領という設定は、別に珍しくもありません。『ホワイトハウスダウン』や『エンド・オブ・ホワイトハウス』で見慣れているし、テロリストに拘らなければ、『インデペンデンスデイ』や『マーズ・アタック』なんかも大統領が活躍?する映画の一つです。しかし、一人の人として、テロリストと大統領を描き出した映画は案外少ないんですよね。
本作は、どちらかというと孤軍奮闘する大統領、という目線で進みがちですが、視点を少し変えてゆくと、次第に追い詰められてゆくテロリストは最初から少数派であり、既に追い詰められていたがゆえのテロリズムなのです。
大統領を最高権力の椅子から叩き落とし、同じ舞台で一騎打ちをする。そんな悪役がいままでいたでしょうか。そして、そんな魅力的なテロリストを演じるのが、ゲイリー・オールドマンなのです。
また、最初は孤立無援かに思えた大統領でしたが、物語が進んでいくと熱心で忠実な支持者が多くいることが丁寧に描かれています。これは、自分たちが優位いると勘違いしているテロリストに対する、強烈な皮肉に思えて仕方がありません。そして、はたして今のアメリカに同じ熱を持つ支持者がいるだろうか。と考えた時、どこかの大統領に、是非この映画を見てもらいたいと痛切に思いました。併せて、大統領をここまで輝かせた存在は一体誰なのか、と追想すると、紛れもなくゲイリー・オールドマンのおかげだと胸を張って言える。そんな素晴らしい映画なのです。
ロボコップ(2014)
もうひとつのおすすめ映画がこちらです。
本作は、1987年に製作された作品のリブート版であり、ストーリーの核は変わっていませんが、第一作の過激なアクションは随分マイルドになっています。そのせいか、どこかインパクトも弱く、コレと言った見せ場も薄い、なんでもないSFアクション映画になってしまっているのは残念です。
しかし、そんな中でも、味わい深い演技と存在感で観客の目を奪う俳優がいました。そうゲイリー・オールドマンです。
本作でゲイリー・オールドマンは、ロボコップの生みの親であるノートン博士を演じているのですが、このノートン博士、間違いなく本作の第二の主人公と言っても良いでしょう。
ロボコップを見たことのない方のために、少しだけ設定を紹介しておきます。
近未来の都市デトロイトに拠を構える巨大企業オムニ社(本作ではオムニコープ)は、人間の警官にとって代わるロボットの開発を行っている。しかし、開発途中の人身事故(本作ではロボット故の欠陥)で、ロボット開発は中止に。そこにタイミングよく、マフィアに襲撃された警官マーフィが運び込まれ、マーフィは「ロボコップ」として生まれ変わった。
これがざっくりとした流れ。オリジナル版とリブート版で、ロボコップの設定自体がオリジナル版と大きく変わっているところもあるので、作品の善し悪しについては、ここであえて述べるつもりはありません。
ざっくりとした設定を知ったところで、作品の中でのゲイリー・オールドマンの立ち位置なのですが、彼は、マッドサイエンティストとも人格者ともとれる不思議な人物です。
ロボコップは、ロボットとの融合を経て完璧かつ公正な警官になったとはいえ、意思決定から実行までの時間を比べると、純粋なロボットとはまだまだ大きな差がありました。それは、マーフィが敵と認識した対象を撃ってもいいかどうか、という決断を“人間レベル”で行っているからであり、善悪の判断基準がマニュアル通りのロボットとの溝は、どうしても埋まりません。
そこで、ゲイリー・オールドマンのとった方法は、更なる改良により“実際はコンピューターが判断し撃っているが、マーフィ自身は自分の決断で撃っている”と錯覚させるというものでした。
なんてマッドなんだ。
ロボコップ早期実働のプレッシャーがあったとはいえ、多少のためらいは見せつつも、およそ人道的とは言い難い改良をさらりとやってのけるゲイリー・オールドマンに鳥肌が立ちました。
そんなモヤモヤが、ロボコップの爽快なアクションで吹き飛んだかと思ったら、お次は、犯罪者データベースのアップロードに伴い、ロボコップの脳がクラッシュしてしまいます。市民へのお披露目が数時間に迫る中、ゲイリー・オールドマンがとった行動は、脳内物質(なにかは忘れました)の量を調節し、人間としての良心を消し去ってしまうという方法でした。もうこれでマーフィはマーフィでなくなります。ロボコップではなく、ただのロボットになってしまったのです。
しかし、物語はここで終わりません。終盤の強引さは大目に見るとして、巨悪との全面対決の勝敗、そして家族との絆を軸に、マーフィがどうやって自分を取り戻すのか。キーマンは、最愛の妻でも息子でもありません。
その絆を再び結びつけた張本人。
それは、自らマーフィを葬り去ったはずのゲイリー・オールドマンでした。“強引な終盤”とは言いましたが、ゲイリー・オールドマンの心理過程には、なんら強引なところはありません。彼の表情や仕草、その演技すべてに巧妙な伏線が張られており、なんの違和感もなく物語を楽しむことができます。
オリジナル版とリブート版、どちらからでも良いが、是非どちらも見てほしいです。
どっちから見てもゲイリー・オールドマンの存在の偉大さを感じることができる。
そんな素晴らしい映画なのです。
では!
こっちも見てね。
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