ミステリ作家

   先日人生で初めて、創作の物語しかも短編ミステリっぽいものを書いてみた。自分で書いてみて初めて、物書きの方々の凄さを理解できた部分もあり、感想記事以外のものを書く楽しさを感じることができたので、忘れないうちに記録を残したいと思う。

 

   「ミス・テリー殺し」を書くにあたっては、そんなに熱い思いや構想があったわけではなかった。今月は「ミステリ」という単語が入った記事を連投しているので、ちょっとひねってみようか、くらいの軽い気持ちで書き始めた。

 

舞台

   まず国内でちょろっと書き始めたが、人名で躓いた。どうも自分で考えた日本人名はクスクスしてしまってダメだった。全く自信はなかったが、舞台をイギリスと設定し、イギリスっぽい名前でかなり適当に考えてみると、思ったよりしっくりきたので、そのまま一心不乱にキーボードをたたいた。イギリス人でテイラー仕立て屋)警部はちょっとやり過ぎた気もするが…

 

謎と解決

   登場人物も犯人も全然決まっていなかったが、序盤で仄めかされた謎がどのように解決と結びつくか(最後の手がかり)は先に決まっていて、どうオシャレっぽく終わらせれるかをイメージしていた。オシャレな比喩とか印象的な台詞を盛り込んでみたい欲求に駆られたが、結局「オシャレっぽいけどよくわからない」感じになってしまったように思う。


文字数の目安

   今考えるとほんとバカだな、と思うのだが、書き始めた当初は1500字くらいでなんとかならないか、と思っていた。そのために登場人物の証言などの手がかりは全て箇条書きにして、多くても2000字くらいには収まるだろうとたかをくくっていた。

   書き終えてから、短編部門で出版社の公募している賞の募集要領を調べてみると、最低でも12000字ほどだったと気づき驚いた。結局、当初の予定を大きく超える4000字ちょっとで書くことができたのだが、超えた原因は、たぶん解決を担う探偵にぺらぺら喋らせたくなったからだろう。


自己評価

   自分で言うのもなんだが、ネタバレがある(笑)のでもしよければ、「ミス・テリー殺し」を読んでから見てほしい。

 

まずトリックがないのはどうなのか?

   結局、全員にアリバイがなく容疑者候補と言う状況の不自然さは、ご都合主義に感じなくもない。執事ロマンを容疑者から外す根拠の薄弱さ。もう少しロマンにミスリードさせても良かったのだが、逆に容疑者から除外する根拠が見つけきれずぼんやりした記述になった。

 

殺害方法の説得力

   はたして青酸カリ入りのカプセルを嚥下しても即効性はあるのか?青酸カリは独特の異臭と強酸性があるらしく、飲料物に混ぜて摂取させるのは難しいらしい。

   ある程度早く効果が出て→嘔吐→リンゴの物証、と繋げるために強引にカプセルを用意したので、やや説得力に欠ける気がする。

 

リンゴのカケラ

   そもそも一口リンゴを齧って、咀嚼もせずに原型をとどめたまま嘔吐するなんてことがあるのか。普通はリンゴを一口でも丸呑みすることがないので、やはり論理性に欠けるかもしれない。

 

最後の一文

   どう締め括るのか、という点は全ての作家が苦悩する部分なのではないかと思った。犯人を名指しして「はい、わたしがやりました」はなんともダサい。かといって、男女のロマンスで締めることもできないし、後日談も全然思いつかない。そこで決定的な証拠を提示して「さあ見せてください」で終わったのだ。

   今考えると、これ、持っていないパターンもありだった気もする。探偵が見事推理を外して、物語は迷宮入りで終幕し、後日、執事のポケットか医者の白衣の中にあったリンゴのカケラをこっそり捨てて、ほくそ笑む容疑者(執事か医者)。悪くない気もする。

 


まとめ

   いつもの感想記事とは違い、達成感と充足感が凄まじく、個人的にはむちゃくちゃ楽しい体験だった。これからも何か思いついたら、4000~5000字程度でちょくちょく書いてみようかと思う。手がかりはもちろん箇条書きで、キャラクターは薄っぺらくても仕様がないだろう。

 

では。