なんとか1年間通して読書し続けることができました。というか今年はやりたいことが多すぎた1年だったように思います。
ゲームだとポケモンやFF、Gジェネといったシリーズものの最新作がどんどん発売されたので、勢いで買ったはいいが未だクリアしきれていないものばかり。
映画も話題作だらけの1年間で、感想書きもろくにできていない現状です。
そんな中ミステリだけはコンスタントに読み続け、そしてブログに感想をあげることができたので、個人的には大満足。
では早速下半期ベストテン…といきたいのですが、先刻承知なようにベストテンと言っても、あくまで「今年私が読んだ」ミステリベストテンなわけで、今年刊行された作品というのほとんどありません。すでに擦りつくした感もあり、時代錯誤だとも思うのですが、やりたいので仕方がありません。
暫しお付き合いいただければ幸いです。
下半期に読んだミステリ数は37冊。1930年代を中心にシリーズものを続けて読んだり、黄金期に活躍した大御所の作品に初挑戦したりと、これまた安定の作品たちと多く出合ったので、ベストテンという括りで書くのは不安でいっぱいです。
第10位『サイロの死体』(1933)ロナルド・A・ノックス
特徴的な舞台、特殊な探偵、独創的な解決編と種々のうま味成分が融け合った作品。国書刊行会の世界探偵小説全集でないと読めないのがネックか。
第9位『魔女の隠れ家』(1933)ジョン・ディクスン・カー
ギデオン・フェル博士ものの記念すべき第一作。怪奇とミステリの融合というカーお得意の見事な手腕と同時に、特異なキャラクター描写も味わえる秀作。フェル博士のキャラクターも初登場にして強烈な個性が爆発している。
第8位『火刑法廷』(1937)ジョン・ディクスン・カー
言わずと知れた推理小説界の傑作。結末部だけ切り取るとアクロバティックにも見えるが、中核を成す珠玉のトリックには脱帽。何度読んでも楽しめると思うが、どんどん意味がわからなくなりそうで怖い。
第7位『ひらいたトランプ』(1936)アガサ・クリスティ
今年2冊目のポワロは納得の一作。決定的ななにかがなくてもしっかり読めるのは、クリスティ女史の巧みな文章力によるもの。ブリッジ(トランプゲームのひとつ)について勉強したくなる作品でもある。
巧みな舞台設定と小道具の数々が光る中期の名作【感想】アガサ・クリスティ『ひらいたトランプ』 - 僕の猫舎
第6位『ギリシャ棺の謎』(1932)エラリー・クイーン
巨匠クイーンの第4作目がランクイン。ハリウッド的というか、華やかなミステリという印象。どんでん返しもしっかりあり、目の肥えた推理小説ファンも納得の作品になるはず。幻の美術作品が出てくるあたり、さすがクイーンの作品はおしゃれ。
ミステリの意匠にクイーンの職人技がキラリ【感想】『ギリシャ棺の謎』エラリー・クイーン - 僕の猫舎
第5位『迷走パズル』(1936)パトリック・クェンティン
これは生涯ベストテンに食い込む名作。よくプロ野球選手のヒット一本当たりのコスパみたいなのが出るが、本作もページ一枚当たりの価値で言うと最高レベル。異常な雰囲気の中で明かされる論理的な真実というのは、一見矛盾を引き起こしそうだが、その雰囲気自体もトリックの一つになっている点も秀逸。
第4位『オランダ靴の謎』(1931)エラリー・クイーン
ミステリにおける論理性の追求極まれり。ミステリの一つの完成形とも言える、まさしく不朽の名作。それ以外にない。
オランダ靴の謎【感想・雑記】ーエラリー・クイーン - 僕の猫舎
第3位『Xの悲劇』(1932)エラリー・クイーン
ご存知『悲劇四部作』の一作目。好人物である老優ドルリー・レーンの完璧なロジックに酔いしれる。大いなる悲劇の幕開けとして絶対に読んでおきたい一作。
最後の一文にまで細やかな配慮【感想】エラリー・クイーン『Xの悲劇』 - 僕の猫舎
第2位『ナイン・テイラーズ』(1934)ドロシー・L・セイヤーズ
衝撃度は第1位の作品に負けるとも劣らない。むしろ、余韻としてはこちらの方が長く重い。シリーズ探偵のピーター卿と僻村の住人達と共にややオカルティックで不思議な世界に挑んでほしい。
荘厳で重厚な傑作長編【感想】『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ - 僕の猫舎
第1位『Yの悲劇』(1932)エラリー・クイーン
文句なし堂々の第一位。インパクトだけではない。真相に至るまでのロジックの美しさと対比するかのような残酷で衝撃的な真相が圧巻。シリーズ作品としては転換期になる作品だと思う。
どうだったでしょうか。
そういえば上半期ベストテン記事内でこんなことを書いていました…
年末に「今年のベスト10」なんてやろうものなら、そのまんま生涯ベスト10になってしまうんじゃないだろうかと危惧しています。
杞憂じゃなかった。
ご覧の通り、作品内容からしても下半期はかなり充実していました。一方、推理小説以外ではモーリス・ルブランの『リュパンの冒険』(1909)しか読めず。
国内ミステリもテレビドラマ放送の機会に法月綸太郎『一の悲劇』の1作だけ。
短編はたったの4作で、中でも一番おもしろかったのはアガサ・クリスティの『謎のクィン氏』(1930)です。
ロマンスとミステリの融合の中に、ファンタジーな雰囲気も入り込み幻想的で不思議な短編集に仕上がっていますが、不思議という部分ではやはりT.S.ストリブリングの『カリブ諸島の手がかり』(1929)越えはならず。むしろしっかりミステリとして基礎が仕上がっているのが『謎のクィン氏』の方でしょうか。名探偵リストの中に、全編に登場するサタースウェイト氏が入ったのが収穫です。
ベストテン外では…お勧めしたい作品が多すぎて迷います。
当ブログでミステリの感想を書くにあたって最大の目的は、もちろん自分の記憶が信用できないので覚書がメインなのですが、他に極力ネタバレなしにミステリ初心者におススメできる作品を紹介する、ということ、そして海外ミステリの普及(そうだったの?)だったので、今回はそっちの観点で紹介したいと思います。
リチャード・ハル『他言は無用』(1935)
初心者におススメのミステリというと大事なのは、王道であること、長すぎないこと、そして面白いことに尽きます。
ただし、本作は残念ながら王道ではありません(え)。とにかく短くて面白いんです。下半期のベストテン第5位『迷走パズル』とあわせてどちらもおススメしたいのですが、どちらもミステリの形式で言えばやや特殊な部類なので悩ましいところです。
王道でザ・ミステリな作品、例えば重厚感溢れるクロフツの『樽』とか複雑でゲーム嗜好のあるクイーンの『ローマ帽子の謎』あたりを読んだ後に該当作を読めば、びっくりするほど読み易く面白いと感じること請け合いです。
※感じ方には個人差がございます。
まとめ
視野が狭いなー。
海外ミステリを極めたいと思う自分と、国内ミステリを攻めたい自分が戦っています。積んでいる海外ミステリがまだ大量にあるのでそれらを消化しながら少しずつ横溝正史にちょっかいを出していく2017年になりそうです。
このペースだとあと4,5年は読み終えるのにかかってしまうので、それまでは細々と情報収集します。
…ということで
皆さんの下半期ベストテンを教えてください。
では!