発表年:1905年
作者:モーリス・ルブラン
シリーズ:アルセーヌ・ルパン1
日本人にとってルパンという名は、決して聞き馴染みの無い名前ではないはずです。もちろん、モンキーパンチ原作のコミック「ルパン三世」のおかげもあるでしょうが、老若男女にわたって「ルパン」という名前は広く浸透しているのは周知の事実です。
ただ、「ルパン」が何者だったのか?今の世代の子どもたちは知っているのでしょうか。そもそもルパン三世自体が、ルパンの孫である、という設定すら、知らないのでは?
私は幸か不幸か、学生時代、全くルパン作品に触れることなく、気が付けば大人になっていました。そのため、今になって初めてハヤカワミステリ文庫の「怪盗紳士ルパン」を読み、改めて、世代を超えてルパンが愛される理由を理解できたつもりです。
フランスの作家モーリス・ルブランによって、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンが想像されたのは1905年、今から100年以上前の話です。
その爆発的な人気は、日本でも1918年には邦訳が始まっていたことからも容易に想像できます。
本作は、そんなルパンの生い立ちから、初めての仕事、初めて「アルセーヌ・ルパン」を名乗った事件などが収録された短編集であり、ルパン作品の導入としては、これ一冊で十分です。
読み終えて驚いたことがあります。
読む前までは、ルパン作品はどちらかというと子供向けの児童書というイメージが強かったのですが、それは、児童向けに抄訳されていることから生まれる、全くの誤解であり、本来は大人向けの読み物だったのです。ルパンが“怪盗紳士”になる過程など、まさに玄人好みのストーリーじゃないでしょうか。
また、推理小説としても水準を大きく超えており、意外性はもちろんのこと、今世に出ているトリックのほとんどはルパンが生み出したのではないか、とも思えるほど豊富で多才なトリックの数々に感嘆の声を上げることでしょう。
未だ手に取っていない読者は、傑作かどうか眉唾物の推理小説を読むより、まずルパンを読むべきです。
そこには、推理小説でも冒険小説でもない唯一無二の「ルパン」小説があり、一度読むと抜け出せない中毒性と、読み終えた後に感じる爽快感とが絶妙に混在しています。
ただし、早川書房さん。
2005年にルパン生誕100周年を記念してハヤカワミステリ文庫から新訳を全て刊行するんじゃなかったのですか??飛び飛びでしかもまだ5冊じゃないですか!!ルパン中毒にさせておいてこの扱いは酷い>_<
願わくば、この記事を見ている(いるか?)早川書房の関係者様、どうか頑張って全ルパン作品の刊行を宜しくお願い致します。絶対買います。
では!