緋色の研究【感想】アーサー・コナン・ドイル

発表年:1886年

作者:アーサー・コナン・ドイル

シリーズ:シャーロック・ホームズ

 

緋色ってなんかカッコイイですよね?

青よりも藍色がいいし、緑より翠色、赤よりも緋色ですよね?

そんな厨二心くすぐる作品こそ、1886年に執筆されたサー・アーサー・コナン・ドイルの記念すべき第一作である「緋色の研究」です。

 

コナン・ドイルと言えば、名探偵コナンの主人公「江戸川コナン」の名前の由来にもなっており、日本では広く知られた名前です。しかし当方、小学生の頃は、作家の名前ではなく探偵の名前だと思っていた時期があり、同じような勘違いをしていた人いませんかね?

 

そして、その高名なサー・アーサー・コナン・ドイルが創り上げた最も有名な探偵こそ、今作で華々しく全世界にその名を轟かす、シャーロック・ホームズ、その人です。

昨今では、アイアンマンでお馴染みのロバート・ダウニー・Jrが演じ話題となった、同名のハリウッド映画が製作されるなど、誕生して130年近く経つ今でも尚、根強い人気があることがわかります。

 

前置きはさておき、肝心の本作の中身ですが、本作は2部構成となっており、1部では事件の発端から解決まで、2部では犯行までの歴史が語られます。今となっては物珍しいことでもありませんが、個人的にこの第2部の情景描写には心打たれるものがあります。

もちろん、訳者延原謙氏の多大なる功績によるものであることに異論はありません。

 

1部では上と下、貧と富、あらゆる有象無象の集積地のような大都会ロンドンを舞台に、ワトスンとホームズの出会いと事件の発生から解決まで軽やかに時にはコミカルに描いています。

一方、2部では事件の発端となった、北アメリカ中部地方の荒漠たる領域を、厳しくもどこか儚げで美しさを感じる表現方法で見事に描写し、そこで紡がれるロマンスと、そんな苛烈な環境で、力強く生きる人々の悲運の物語が、読者の心を強く揺さぶるに違いありません。

 

これら、相反するかのように見える舞台で起こる事件が、ホームズの“超人的”推理によって暴かれ、ワトスンの手記という形で読者のもとに提示されるのです。

 

超人的とはよく言ったもので、本作は読了後、どうしても作者対読者の体で読むことはできないのではないかと強く感じました。

とうていホームズと同じ世界で事件を解決できるようには思えないし、ただ淡々とワトスンと共にホームズの辣腕ぶりを傍観しているのが関の山です。

とはいえ歴史に名を刻んだ、世界的名探偵シャーロック・ホームズの第一作。

いくら古典とはいえ見逃すべきではなく、彼の天才的・超人的分析能力を頼りに、推理分析学について学んでみるのも悪くありません。

 

 『緋色の研究』は数々の出版社から出版され、児童向けのものから、古典的な作品まで翻訳のバリエーションも多い作品です。

その中でも新潮文庫のものは、出版された年代が年代なだけに、文体や表現だけ見ると少々古めかしいところがあるかもしれません。でもそれがいい味出してると思うですがどうでしょう?

わからない単語が出てきても、それを辞書で調べたりなんかして、そうやって知識欲も満たせる、奥深い作品なのではないでしょうか?

あと新潮文庫の改訳後のシリーズは、表紙のデザインがカッコいい!

これだけでも蒐集する価値アリです!

 

では!