『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』【映画ネタバレ感想】マジジュマンジジャナイ

この映画は、アップデートという言葉にいかに信用が無いかを証明している。

 

ここ数年、映画館で見る映画のチョイスにハズレが無く、どれもが「ああ見てよかった、早くブログに書きたい」と思わせる作品ばかりだったのだが、今回久々に頭を抱えたくなる映画を見てしまった。

 

『ジュマンジ』と言えば、同名の絵本を原作にしたファンタジー映画。摩訶不思議なボードゲーム「ジュマンジ」に巻き込まれた少年を今は亡き名優ロビン・ウィリアムズが演じていた。

見た目は普通のすごろくだが、一度始めてしまったらクリアまで止めることはゆるされず、止まったマスに表示された困難を乗り越えなければ次に進むことはできない。過酷ながらも見る者をドキドキさせる素晴らしいアドベンチャー・ファンタジー映画だ。

 

もし最新作を映画館で見よう、DVDレンタルが開始されたら見ようと思っている方は、まず前作『ジュマンジ』を必ず見てほしい。

本作はその「正当な」、大事なことなのでもう一度言うが正当な続編だからだ。

 

 

予告編を見れば大体のあらすじはわかるだろうが、本作は、前作を最新の状態にアップグレードすることをテーマの一つにしているため、「ジュマンジ」自体がボードゲームからテレビゲームへと変わった。

そして作品の良さを全て失った。

 

 

以降ストーリーの全てをネタバレするつもりなので、その前に短く感想を言っておく。

ギャグは笑える、でも心からの笑顔は一つも無い。

レビューを見ている限り、比較的高評価な作品なのだとは思うが、個人的には全く良いと思わなかった。

もちろん見る価値が無いとは言わない。

ムキムキのロック様と名コメディアンのジャック・ブラックがお好きな方なら、楽しめるコメディ作品だとは思う。

 


『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』予告編 2 (2018年)

 

 

 

以下ネタバレ

 

 

ストーリーを追いながら感想を述べたい。

は1996年、「ジュマンジ」が浜辺で発見され、それを拾った父親が息子に与えるのだが、その夜お馴染みのドンドットットッの太鼓の音とともにジュマンジの中身はゲームカセットへと姿を変え…

 

1996年といえば任天堂がNINTENDO64(通称ロクヨン)を発売し、世界的にも3Dゲームが最盛を極めた時代。

ボードゲームなど見向きもされなかっただろう。ジュマンジを与えられた青年アレックスの気持ちはよくわかる。そんな古臭いボードゲームよりテレビゲームの方が間違いなく面白いに違いない。そんな気持ちに呼応したのかジュマンジはゲームカセットへと変化する。

 

素晴らしい導入だと思った。

のも束の間、時代は一瞬で飛んで現代へとやってくる。アレックスの家は幽霊屋敷と呼ばれ恐れられ、アレックスの父親は落ちぶれ、好奇なそして同情の目で見られている。

これは前作『ジュマンジ』の設定とよく似ている。

同じ高校に通う四人の問題児が登場し、彼らがゲームに吸い込まれるに至っては、いずれアレックスと再会し協力してゲームもクリアするんだろうストーリーは丸見えで、ああ独創性のカケラもないな。とこの時思った。

アップグレードと言いこそすれ、より新しく、より高性能になることもなく、不具合が修正されることもない。ただの置換だった。

そしてこのアップグレードは無償ではない。配信地域差はあるが、2,000円前後の有償アップグレードなのだ。返金は無い。

 

 

4人がゲームに吸い込まれる場面も納得いかない。

時は2018年、最新のゲーム機の性能は計り知れない。VR技術が進歩し、まるで現実かのようにゲームの世界を疑似体験できる時代が来てしまった。なのに、なぜジュマンジは最新のデバイスじゃないのだ。一度変身してのけたのだから、次も最新のゲーム機へと変身すれば良いのに。昨今のボードゲーム人気を考えると、むしろ一周まわって、元(ボードゲーム)に戻った方が、喰いつきはよくはないか。アレックスは1996年にボードゲームを古臭いと思ってしなかったのに、なぜ4人は何の違和感もなく1996年当時の古臭いゲーム機に手を出すのか。

どちらにせよ、ゲームに吸い込まれれば話は進むのだから、どちらでも良いのだが、制作側に想像力が無いのはようくわかった。

 

 

いざゲームが始まり、4人はゲーム内のキャラクター(アバター)の姿となってジュマンジの世界に迷い込んでしまうのだが、さっそくライフを一つ失ってしまう。

そもそも腕にあるタトゥーがいかにも謎っぽく描かれていたこと自体が謎だし、ゲームの案内人(NPC)ナイジェルによるチュートリアルも無しに無慈悲に死んでしまうのもいただけない。

いかにも「テレビゲームらしさ」を出したかったのであれば、ゲーム概要や基本的なルール説明は一番最初にあってしかるべきだ。

いっちょまえにジョブシステム(キャラクター毎に職業が割り当てられ、その職業の持つスキルを使うことができる)を導入しておきながら、その設定はガバガバ。

とにかく、しんどい時間がしばらく続くのが序盤だ。

 

 

別に、ゲーム本編に入ってからもスピード感は増すなんてことはなく、終盤までゲームあるあるをただ重ねるだけで構成されている。

NPCも実質ゲームに絡むのはたった2人だけで、他のキャラクターとの会話から謎を解いたり、アドベンチャーゲーム『アンチャーテッド』みたいに古代遺跡の仕掛けを解いたりも全くしない。

ただ延々動物たちから逃げて、行き当たりばったりの作戦でなんとなくステージをクリアし、適度にライフを減らして危機感を煽り、気付けばいつのまにかゲームをクリアしている。

前作では主人公を付け狙う容赦ないハンターだったヴァン・ペルトも本作では全然魅力的じゃないし、強くもない。ただただキモいし、ハムナプトラ感が凄い。

 

テレビゲームとしての面白さが皆無なのはお分かりいただけたかと思うが、なによりショッキングなのは、『ジュマンジ』という最高に面白いボードゲームの価値そのものを貶めてしまったこと。

前作『ジュマンジ』には、一歩間違えば命を失う途轍もなく危険なミッションをこなすという、スリリングで興奮する冒険があった。

プレイヤーには、ただのボードゲームが世界を破壊してしまうのではないかという恐怖や、絶対にクリアして全てを元に戻さなければ、という使命感があった。

世代を超えた強い絆や親子愛、困難を乗り越えて結ばれるロマンスがあった。

 

アップデートの意味は、本作にはその全てをデリートした、というなのだろうか。

 

 

ここまで酷も酷評だが、ギャグ要素だけは笑えないわけじゃない。

ジャック・ブラック(『スクール・オブ・ロック』(2003))が出ているだけあって、数だけは豊富に用意されているが、個人的に一番面白いと思ったのはドウェイン・ジョンソンのキメ顔。キスシーンはスベっていた気もするが…

ジャック・ブラックはほんと自由にやっていたんだろうな、と思わせるほどのハマりっぷりだったが、ストーリーにムカついていたので心から笑うことはできず。

下ネタ偏重のギャグもそんなに良くできたものじゃなく、もしかしたら撮影風景(アドリブ)を映していた方が面白かったんじゃなかろうか、というレベル。

個人的には↓このオリジナルテーマが本編より数倍面白い。


映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』オリジナルテーマソング?ミュージックビデオ完成!

 

 

笑うと言ってもはにかむ程度のコメディラインを通過してようやくゲームはクリア。

よし!あとはオチだけだぞ。着地大丈夫かな、と言う不安は、見事ど真ん中に的中、ホームランの看板にボールは当たり、くす玉が割れ、お店のスタッフがファンキーな格好で踊り出し、そして絶望を告げる。

 

今までやったことの逆を行く、というのは別に新しいことでもなんでもない。20年以上もの時を経て、使うツールも人々の生活様式もガラリと新しくアップデートされた中、絶対に変えてはいけない『ジュマンジ』のルールをなぜ変えてしまったのか。

変えたことに怒っているのじゃない。なぜ変わったのかの説明が絶対に必要なのだ。

本作のようなオチなら、前作のアランはなぜあんな悲しい思いをしなければならなかったのか。

「それはおかしいよ」「正当な続編なのに前作を無視しちゃってるよ」と製作スタッフは誰も言えなかったのだろうか。

 

 

書けば書くだけ、愚痴しか飛び出さないので最後にするが、『ウェルカム・トゥ・ジャングル』の副題が付いていて、メインテーマにガンズが使われているのにも関わらず、もっとも盛り上がりそうなアクションシーンで使わずに、エンドロールで流してしまったのはなぜなのか。音楽がとにかく少なく、そしてショボイ。

 

 

興行的には大成功らしく、続編の製作も進んでいるらしいので期待はしているが、監督・脚本がこのまんまだったら絶望しかない。

 

とにかく本作は、見終わった後ちゃんとした『ジュマンジ』をもう一度見たくなる映画だろう。

では。