データで見るミステリI(探偵編)

   ただ漠然と海外ミステリを読むのではなく、自分なりに、読んだ情報をデータ化して見返す、という作業をずっと続けている。

 

   今日は、ミステリに必須の探偵をデータ化した情報を元に、海外ミステリを眺めてみようと思う。といっても、まだ百数十冊でなかなか客観的で信頼できるデータとは言えないが…

 

   今日まで130冊とちょっと読んできて、出会った探偵は50人を超えた。できれば100人を超えたあたりで、この企画にはチャレンジしたかったのだが、思った以上に探偵との出会いの数が伸びない。シリーズものを読み進めているせいだろうか。

   データ化できた探偵たちは、だいたい1900~1940年の間に活躍した探偵で、1940~現代における探偵たちは、ほとんど入っていない。

   ではさっそく。

 

男女比

予想では、女性は5%未満

結果11.7%(6/51)

   思ったよりいた。いた、と言ってもその内訳は、ほとんどがイギリスの女性作家アガサ・クリスティ作品に登場する人物ばかりで、ミス・マープルを除くとプレーンな女性探偵は少ない。個人的には『シタフォードの秘密』のエミリーがいちオシ。クリスティ初期によく登場する溌剌として才気煥発な美女が中心となる物語は、謎解きの面白さというより、読み物としての面白さが溢れていて、特に女性におすすめしたい作品群まぁ背後に隠されたミステリ要素もなかなか侮れないんだけど…

   純粋な女性探偵、といえば同じくイギリスのグラディス・ミッチェルが創造したミセス・ブラッドリーも忘れられない。3度の結婚と2度の死別という意味深な設定と、魔女を思わせる風貌がなんともエキセントリックな探偵だが、精神分析の専門家という特殊な職業を活かした推理方法は、ロジカルで美しい印象がある。本国では66作もの長編に登場していながら、残念なことに日本ではたった数作しか邦訳されていない。実は今一番邦訳してほしいシリーズだったりする。

 

職業

予想   1位は警察

 

結果
無職25.4%(13/51)
警察13.7%(7/51)
私立探偵13.7%(7/51)

   なんと無職が一位。まぁこれも初期クリスティ作品に登場する前途洋々たる若者が多かったせいなのだが、よく見ると『悲劇四部作』でお馴染みドルリー・レーンも隠退した老俳優だから無職。

   無職探偵の中でも、S・S・ヴァン=ダインのファイロ・ヴァンスが異彩を放っている。もちろん警察関係者からの依頼も多く、もう私立探偵と言ってもいいかもしれないが、まず事件に首を突っ込むのは純粋な興味からで報酬も無いし、莫大な遺産を相続した有閑階級であることから無職探偵に位置付けた。

   有閑階級で無報酬と言えば、ドロシー・L・セイヤーズピーター・ウィムジィが思い浮かぶが、彼はまず貴族属性だし、≪僕の猫舎≫という調査組織を運営している立派な経営者なので、私立探偵に分類した。

 

   無職に続くのが、ある程度予想通りで警察と私立探偵。この二つと医者あたりを探偵役にしておけば、まず事件との関わらせ方は無難に進行できるのだろう。

   最下位には、辞書編纂家だったり、犯罪学者・経済学者、保険調査員といったコアな専門職も多いのだが、職業と探偵を結びつけるのはなかなか難しいようだ。職業スキルを活かした探偵活動というと、やっぱり変装が得意な元俳優ドルリー・レーンが思い出されるが、彼は無職。結局はどんな専門的な職業に付いていても、私立探偵の括りの中に入ってしまっている節がある。

 

   そんな中で職業と推理(ディテクティヴ)の完璧な融合が見られるのが、『ブラウン神父』シリーズだと思う。物語の運び方もそうだが、教訓めいた題材とブラウン神父の語り口の相性の良さが抜群で、まさにブラウン神父無くしては珠玉のトリックも輝かないだろうと思う。

 

まとめ

   ちょっとデータが少なすぎた気もするが、引き続き調査していきたいと思った。次は100人を目標に読んでいきたい。

 

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 では。