僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

物語は腰砕け?【感想】レックス・スタウト『腰ぬけ連盟』

 

腰ぬけ連盟 (ハヤカワ・ミステリ文庫 35-2)

腰ぬけ連盟 (ハヤカワ・ミステリ文庫 35-2)

 

 


発表年:1935年

作者:レックス・スタウト

シリーズ:ネロ・ウルフ2

 


まずは粗あらすじ

かつて一人の少年を破滅させた学生一同は、贖罪連盟なる団体を結成し、その少年を援助してきた。少年は大人になり、かつての地位も名誉も回復したかに思えたが、突然連盟のメンバーが不可解な死を遂げる。以降、メンバーに次々と届く脅迫状に彼らは狼狽え怯え始め…

 

ネロ・ウルフシリーズ1作目『毒蛇』が、とうてい正統派の本格ミステリとしては面白くなかったので、正直なかなかチャレンジする勇気が出なかったのですが、たった1作でシリーズの善し悪しを判断することはできませんからねえ…

というか、ネロ・ウルフシリーズってそもそもハードボイルドなの?そこらへんがよくわからなくて混乱したのも事実です。

 


全作に比べ読み易さは格段に上がっています。まず状況設定が面白い。若気の至りで一人の少年を破滅させた学生たちによる団体という設定も効いていますし、もう否が応でも目をつけたくなるその少年というのが、性格も風貌も奇天烈で異様な存在感があります。

ただメインの事件はすでに起こっちゃっているので、事件の盛り上がりは欠け、舞台の転換も緩やかでストーリーの起伏はあまり感じません。まあ素材(設定)が良いので、バリエーションに富んだアーチーの捜査は楽しめます。

設定で言うと、ウルフと連盟のメンバーとの私的な契約も秀逸です。アメリカの推理小説って探偵VS警察みたいな構図も特徴ですが、やはり私立探偵にルールがない自由な活動ができる分、物語の細やかな造り込みや展開の豊富さは魅力的なものがあります。

 

で、アーチーの型にハマらない自由な捜査から得た事実から、絶対的なブレーンであるウルフが少しずつ真実に近づくはず…なのですが、どうもここらへんが釈然としません。

まず、挿話の一つである失踪事件が引っ張った割にインパクトがなかった点、たくさん事件が起こる割に何が謎が曖昧な点。

謎が曖昧なのは別にいいんです。どの事件に着目しないといけないか、謎の誤認を目的とした事件の配列というのは、たしかに作者の腕の見せ所ですからね。でも、それもあまり考えられているようには思えない。

別に真犯人が幸運を上手く捉えたってわけでもなし、純粋な犯人当てってわけでもなし。

 

謎解きの盛り上がり、トリックの鮮やかさ、驚愕のサプライズといったものを求める読者は、たぶん満足できないんじゃないでしょうか。とはいえ最後はしっかり締めてくれます。

 

これ、最後犯人の返答が違ったものならどうしたんでしょうねえ?

ここにも私立探偵というエッセンスが利いていて、たしかにこの雰囲気はネロ・ウルフシリーズじゃなきゃ味わえないものなのかもてしれません。

チャピンのキャラクター然り、アーチーの利発さと軽さ、ウルフの皮肉っぽい性格など、出汁は十分出ていて楽しめる要素はあるとは思いますが、英国本格!みたいなのが好きな私には少し合わなかったのかもしれません。

 

ネタバレを飛ばす 

 

 

以下超ネタバレ  

《謎探偵の推理過程》

 本作の楽しみを全て奪う記述があります。未読の方は、必ず本作を読んでからお読みください。

 

 


チャピンが良い。

可愛い名前に合わず、捻くれてあくどい奇妙な人物としてうまく描かれていると思う。

しかも、変人という片側だけじゃなく、ある意味でウルフと似通った部分(頭の回転)もあるような気がする。

 

贖罪連盟の面々はどうも頭足らずだし、そもそもちょっと多すぎて覚えられない。


この手の事件から推察するに、安直にチャピンの復讐劇か、チャピンを利用して利他的な目的でメンバーを殺す連盟のだれか、のどちらかだろう。

ただチャピンはもう社会的に一定の成功を収めていて、わざわざ今更復讐する理由もないように思える。

あるとすれば、かつての恋敵バートン殺害にだけ明確な動機があるように思われる。…けど、バートン夫人の手袋を収集していたり、変質的ではあるけどチャピンはそれで満足していて、それ以上求める理由もないか。


だからたぶん連盟の誰かが、連盟の誰か(もしくは3人)を殺したんだろうけど、被害者と関係がありそうなのはバートンの生前に会ったバウエンのみ。あと候補になりそうなのは、自ら失踪したヒバードか。

そもそも殺される恐怖から失踪し、チャピンを見張るという行動自体理解しがたい。なんだそれ。

その間のアリバイはほとんど不明だし、殺害が可能っちゃ可能な気がするが、動機の方は全く不明。

 

あと思いつくのはチャピンの妻ドーラ

チャピンに罪を擦りつけて自らを解放する為?

理解できないことは無いが、物証は皆無。

 

う~ん作者は何を見せたいんだろう。

チャピンは絶対だろう。チャピンは見てるすっごい見てる。でもたぶんウルフはチャピンを疑ってないし、犯人は別にいるはず。

 


すごい突拍子もないことを思いついたが、全ての事件が別々の犯人?

ハリスン判事はコラードが、ドライヤーは自殺、バートンはバウエンorチャピンorドーラが、ってのはどうだろうか。全く根拠は無いけど。

 

 

推理予想

いろいろ

結果

まさかのニアピン笑

イライラするのは、ふたを開けてみたら、3つ目の事件だけが本作の中心になっているところです。正直短編でいーよこれくらいなら

 

そこにチャピンが勝手に脅迫状を書いたり、ヒバードが勝手に失踪したりするからややこしくなるわけで、風呂敷の広げ方は良いのに、中身がほとんどありませんでした。

クリスティの某名作みたいに、バウエンが3人とも殺しちゃっても良かったんじゃないかとさえ思います。まあそうなったらなったで完全に二番煎じですが…

 

 

ネタバレ終わり 


個人的にはこれに懲りずに、どんどんネロ・ウルフシリーズにチャレンジしようと思っているのですが、やっぱり相性は悪いかなあ…

 

とんでもトリックでもいいから、オーソドックスな型の中でやってくれるミステリの方がたぶん好みなんだと思います。

次作『ラバー・バンド』は、未だ手に入っていないのでなんとも言えませんがもう少し普通の、普通のウルフも見たいです。

 

では!