『きまぐれロボット』星新一【感想】子どもにも読ませたい

1966年発表 角川文庫発行

 

 

 フラッと立ち寄った古本屋で見つけた一作。そういえば子どものころ理論社発行の絵本版『きまぐれロボット』にどっぷりハマっていたっけ。だからか今でもタイトルだけ聞けば、作品のあらすじとオチは空で言える。絵本版は和田誠氏の独特のイラストも作品に絶妙にマッチしていて、今でも手元に残っている大切な宝物の一つだ。

 角川文庫版の本書には理論社版には掲載されていない作品が5作追加されており、絵本版に慣れ親しんだ読者でも新たな楽しみが見出せると思う。ちなみに、本書の購入を皮切りに星新一作品の収集にも火がついた。

 基本的にはショートショート(一般的な短編よりも短い)なので感想を書くと物語の全てを書いてしまうことになるし、そもそも設定(導入)そのものを味わえるのが星新一作品の醍醐味一つなのでレビューは控えるつもり。

 以下収録作をざっくりジャンル分けしベスト作品を挙げたい。

 

収録作

新発明のマクラ(1961)

試作品(1965)

薬のききめ(1965)

悪魔(1964)

災難(1964)

九官鳥作戦(1964)

きまぐれロボット(1964)

博士とロボット(1965)

便利な草花(1965)

夜の事件(1965)

地球のみなさん(1965)

ラッパの音(1965)

おみやげ(1965)

夢のお告げ(1965)

失敗(1965)

目薬(1965)

リオン(1965)

ボウシ(1965)

金色の海草(1965)

盗んだ書類(1965)

薬と夢(1965)

謎のロボット(1965)

へんな薬(1965)

サーカスの秘密(1965)

鳥の歌(1965)

火の用心(1965)

スピード時代(1965)

キツツキ作戦(1965)

ユキコちゃんのしかえし(1966)

ふしぎな放送(1966)

ネコ(1964)

花とひみつ(1964)

とりひき(1966)

へんな怪獣(1967)

鏡のなかの犬(1961)

あーん。あーん。(1963)

 

 

 

部門別ベスト3

 

ロマン部門

 とにかく登場する発明品にワクワクしてしまう作品たち。子どもの頃はお金儲けなんて考えなかったので、とにかく「美味しそう!楽しそう!おもしろそう!」な作品に惚れ込んだ。

 今でもカロリーメイトが大好きなのは、たぶん『試作品』を読んだから。パグと柴犬のミックス犬を買ったのは『リオン』を読んだから。1年に一回くらい園芸熱が出るのは『スピード時代』を読んだから。

1位 試作品

2位 リオン

3位 スピード時代

 

SF部門

 星新一のSFショートショートは衒学的な記述もないし、かなり簡略化されて書かれた作品が多いが、中には星新一の慧眼に唸らされるものも。特にロボットと人間の関係性にフォーカスした作品には良作が多くて、もっと引き延ばして長編が組めそうな作品もある。『へんな怪獣』も映像で映えそう。

1位 きまぐれロボット

2位 謎のロボット

3位 博士とロボット

 

ホラー部門

 ホラーってほどじゃないけど、ちょっとゾッとしてちょっとヒヤッとするそんな作品群。得体のしれない怖さだけでなく、人間の恐ろしさにフォーカスした作品。『あーん。あーん。』は子ども向けの理論社版には収録されてないのが納得の出来。

1位 あーん。あーん。

2位 地球のみなさん

3位 おみやげ

 

ユーモア部門

 皮肉の利いたオチにクスリときてしまうそんな作品群。ユーモアがあるだけでなく思わず「うまい!」と言いたくなる作品も。

1位 とりひき

2位 ネコ

3位 ふしぎな放送/鳥の歌

 

 

 

では!

 

きまぐれロボット (角川文庫)

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  • 作者:星 新一
  • 発売日: 2012/10/17
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きまぐれロボット (新・名作の愛蔵版)

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