死んでも観たい映画100選【魂コレ】No.4

    子どもの頃の憧れの大スターたち、と言えば誰を思い出しますか?自分の場合は『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスや『インディ・ジョーンズ』のハリソン・フォードがそうでした。

    しかし、時は2019年。かつてのスターたちの勢いにも翳りが見え、深刻なおじいちゃん化が進んでいます。彼らの出演する最新作が出ても、よほど他に見たい俳優が出ていない限り映画館へ行くことはなくなってしまいました。自分が純粋な映画ファンでない証拠なのかもしれません。

    ただ、あの時代はあの時代で既に完成している、と思っています。陳腐な言葉ですが「代表作」がある、ということ。そして「代表作」と呼ばれる作品は、時を超えていつの時代に見ても楽しめるということ。そんな「代表作」を完成させたかつての大スターたちの輝きも同じく、時間が経っても色褪せることはなく、超えられない壁となって“出来上がっている”感覚があります。

 

    そして、そんな大スターに名を連ねるであろう俳優がまた一人。

    どんな過酷なアクションもスタントマンを使わず生身で挑戦し、2000時間もの訓練を積んでヘリを錐もみ回転させたり、高度8000メートルからダイブしたり、とどこか頭のネジが外れちゃってるんではなかろうかという俳優。

 

そう、トム・クルーズです。

 

    さてさて、あとは死んでも観たい映画ですねえ。なんでしょうか。もちろん

『ミッション:インポッシブル(以下M:I)』シリーズ!…でもなく、出世作『トップガン』(1986)でもなく、若きぼくねこ(筆者)をバーの沼へと突き落とした『カクテル』(1988)でもありません。

 

 

『ナイト&デイ』(2010)

    え?知らない?

    ふふふ。

    興行的には失敗と言われた作品ですが、当時の日本でのプロモーションには結構力が入っていて、主演のトム・クルーズとキャメロン・ディアスが揃って来日しバラエティ番組(しゃべくりだったかな?)にも出ていたので、それなりに見たことある人は多いのかも。

 

    まずは本作、ジャンルとしてはアクション映画に分類できます。そして、ここに呆れるほどの荒唐無稽さが加味されます。

    アクション+荒唐無稽さというのは別に珍しいもんでもなくて、スパイものの金字塔『007』シリーズにだって、またトム主演の『M:I』シリーズでも、無理があり過ぎるほどの設定や荒唐無稽な物語は多いです。でも本作はそれら何倍も荒唐無稽、そしてハチャメチャです。

 

まずはあらすじ

自動車修理工場の経営者ジューン・ヘイヴンス(キャメロン・ディアス)は、カンザスのウィチタ空港でハンサムな男性ロイ・ミラー(トム・クルーズ)と激突する。その後もロイと運命的にも思える遭遇を繰り返すうちに、恋に落ちてしまうジューンだったが、なんとロイはCIAの腕利き諜報員だった!?

同業のはずのCIAから追われるロイが、抱える秘密とは一体何なのか、そして巻き込まれたジューンは再び元の生活を取り戻せるのか。

 

    本記事のテーマが「死んでも観たい」ですから、何度でも観たくなるポイントを紹介すべきなんでしょうが、実は本作、単体として、というよりも連作映画として是非とも見ておきたい一本。

    これからトム作品を攻めようと思う方は、まず出世作『トップガン』あたりから入って、なんなら最初期の『卒業白書』(1983)から見てみようか、なんて思った後、歴史的名作『レインマン』(1988)を齧ってから、最後にご飯を食べながら『M:I』シリーズを流し見、みたいなプランニングが多いのではないでしょうか。

    どうせなら家族で『ラストサムライ』(2003)とか『宇宙戦争』(2005)見てみようかなんて人も多いでしょう。

 

しかぁし!

 

まずは『バニラ・スカイ』(2001)を見ましょう。それから『ナイト&デイ』を見るのです。

 

    『バニラ・スカイ』はSF・ロマンス・サスペンスの要素がほどよ~く一体となった作品。この作品で主演のトムとペネロペ・クルスが実際に恋に落ちたのは有名な話ですが、本作には重要人物としてキャメロン・ディアスも出演しています。それもかなりバッキバキにキマったキャラクターで

    この作品を見てから『ナイト&デイ』を見ると、二人の関係性が全然変わっておらず、むしろもっと混沌としてぐちゃぐちゃになっている様が笑えます。

    しかも二人の性質というか特性が上手いこと入れ替わっている感もあって、狂ったトムともっと狂ったキャメロンを見れるだけでもニヤケが止まりません。とはいえ、どちらもハッピーエンドなんですよ。

    『バニラ・スカイ』自体は、お子様には過激なシーンもあって“死んでも観たい”かと言われれば……なのですが、本作の演出に『バニラ・スカイ』をモチーフにしたものがこれでもかと出てくるので、見ておくとより一層楽しめるに違いありません。

    また、『ナイト&デイ』は過激なアクションではあるものの、随所にコメディシーンが挿入され、レーティングも上がっているので、家族で笑いながら見ることも可能です。

 

 

    あとは、なんて言うんでしょうか…エモいってゆうのかなあ。ロイとジューンが飛行機の中で交わす“いつか”の話や、ロイがスパイになるために払った犠牲と贖罪、そして感動的?なオチ。それらが本作の物語という軸の中で感情を揺さぶるのと同時に、かつてトムとキャメロンが演じた『バニラ・スカイ』の背景に溶け込んで、どこか清々しさすら感じます。

 

    物語の筋はけっこうぐちゃぐちゃで、特に物語のキーアイテムなんて子どもの玩具レベルの安っぽいものですし、命の尊さなんてテーマも皆無。ジューンは覚醒するまでは完全におバカキャラだし、ロイには雨霰のように降り注ぐ銃弾が一発も当たらない謎のヒーロー補正がつくなど、超ご都合主義的なところにも辛抱が必要です。

    しかも、M:Iシリーズで培ったアクションスキルやスパイ知識がこの映画のために総動員されたかと思うと、もう笑うしかありません。        

    ただ、テイストはB級でもお金の使い方はセレブなので、豪華なロケ地やCGを見るだけでもエンタメ作品としては十分満足させるものがあります。

 

映画に、

道徳的な観点から得るものがあるか、や社会情勢を反映させた攻めた演出、またメッセージ性の強さを求める観客には、間違いなくオススメできませんが、

エンタメ性がある作品が好きで、頭を空っぽにして楽しめる余裕のある方には、トム・クルーズ中期の集大成的な作品の一つとして、是非ともチラ見してほしい映画です。

 

 

    余談ですけど、この企画4回目にして、もう2回もキャメロン・ディアスが登場って…たぶん好きなんでしょうね。

    パニック系の絶叫があそこまでコミカルにできる女優さんって中々いないと思います。なんかお高くない、というか親しみやすいというか…女優、引退したんですよね?また見たいなあ。

 

では!