ミスリルとミステリ

   ミスリルという言葉が好きだ。

 

ファンタジーでよく登場する架空の金属ミスリル

   Wikipediaを開いてみると、初出はJ・R・R・トールキン原作の『指輪物語』らしい。その紹介文では、銀の輝きと鋼のしのぐ強さを持ち、非常に貴重なもの、とされている。

   実際に原作でどのように登場し、物語とどんな繋がりがあるのか、紹介したいと思ったのだが、実は評論社の文庫版は未だ積読状態のため、情報はほとんどない。ただ、インターネットで調べれば、ミスリルの詳しい由来や、語源となったシンダール語(架空のエルフ語)をまとめたサイトを運営している猛者にも出会ったので、そこから得た僅かな知識で書いてみようと思う。

 

   まずわかったのはミスリルの言葉の成り立ちだ。エルフ語で「ミス」は霧や灰色の、そして「リル」は輝きを意味するらしい。つまり灰銀色に輝くもの、それがミスリルなのだ。文献学者でもあった作者のトールキンは、人工言語を15も開発したとされ、その中でもエルフ語の完成度は極めて高い。

   例えば『指輪物語』に登場する魔法使いガンダルフはエルフ語で「ミスランディア」と呼ばれている。「ミス」はもうお分かりの通り灰色の、そして「ランディア」はさすらい人を意味し、繋げるといつも灰色のローブを見に纏ったさすらい人であるガンダルフを巧みに言い表している。また主要人物のエルフの王子レゴラスは、「レグ」緑の「ラス」葉というなんともエルフらしい美しい成り立ちになっている。

   

   ではもしミステリという言葉がエルフ語だったら、と仮定してはたしてどんな意味があるのか考えてみたい。

   「ミス」はそう、灰色。ミステリファンであればここでエルキュール・ポワロの「灰色の脳細胞」を思い出すに違いない。そして「テリ(teli)」はなかなかしっくりくる意味を見つけれない。近い言葉を見てみると、「tir」は眺める・見る、「til」は先端・角、「ta」は高い、「tel」は覆う、を意味するらしい。どれも、ミステリに抱くイメージに近からず遠からず、という印象である。

   「灰色の眺め」これは真相を見透かせない靄がかかったような謎を連想させる。

   「灰色の角」尖った箇所や先端は、線から到達する点であることから、唯一の真実や真相というイメージを受けなくもない。高い、という言葉との組み合わせも同じである。

   「灰色の覆い」これは「眺め」と繋がってくるのではないか。灰色のヴェールに覆い隠され見えにくい真実。まさにミステリとはそういったものだろう。

 

   もしかするとミステリはエルフ語なのか?そんな疑いさえ抱いてしまい、妄想を膨らましすぎて、イメージを形にしてしまった。

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   どこでどう使うかは全く不明だが、自分の中でミステリを表す図形に決めた。

   一見、二色使いされた、ただの二等辺三角形だと思われるだろうが、そう単純ではない。

   ごりごりこじつけていきたいと思う。

 

   まずこれは二等辺三角形ではない。二つの向き合った直角三角形である。「テリ」を意味する(としている)先端・高いという要素を盛り込んだ。

   そもそも三角形という図形に当てはまる定理が美しい。ミステリに表れるロジカルで美しいパズル要素は三角形で表すことが可能かもしれない。二つの向き合った直角三角形は、「ミス」を意味する二色の灰色で彩られ、「向き合う」という行為は、探偵と犯人だけでなく、物事の表裏一体、見せかけのトリックを意味している。

   さらに二つの三角形の間に空いた空間は、探偵が辿る唯一の真実への通り道を表し、前述の三角形の意義に対する明確な境界線にもなっている。

   そして、三角形の頂点は、若干ズれている。これは、見た目は精巧で美しい真実かのように見える事象への警告を暗示している。さらに、探偵・犯人どちらかの勝利で幕が閉じることも表している。

 

   いかがだろうか。

   男なら自分の造ったものにドンと胸を張らなければならない。自分だけは愛してあげなけれならないのだ。

   とりあえずスマホには保管しておこう。

 

では。