2016年上半期読了ミステリベストテン

2016年ももう半分が過ぎようとしています。アガサ・クリスティとの出会いからははや1年が経ちました。

 

推理小説にのめり込んで、毎週古本屋を巡り、ネットを漁る日々もようやく落ち着き、今は時間を見つけては読書の日々です。

 

この上半期に読了した本の冊数は、締めて35冊(結構頑張ったと自分では思っています)。週に1冊のペースを目標に掲げていたので、今のところ目標はクリアしています。

上半期に読了した本のリストを見返してみると、見事なまでに推理小説界の伝説が名を連ねているのがわかりました。そもそも基本的に集めた本を発表された年代順に読んできたため、今読み進めている1920年代の作品は作者の層の厚さ・作品の出来ともに圧巻のものばかり。シャーロック・ホームズやブラウン神父もまだ第一線で活躍していた時代なのに、それを圧倒してしまうほど名だたる推理小説家がこの10年の間に誕生していました。

 

まず1920年クリスティとクロフツのデビューを皮切りに、23年にセイヤーズが、ここから立て続けに24年フィリップ・マクドナルド、25年アントニー・バークリー、26年S・S・ヴァン=ダイン、そして29年エラリー・クイーンと、確実に1920年代は(できることなら1930年に『夜歩く』でデビューしたジョン・ディクスン・カーも入れたい…本格ミステリ黄金時代の幕開けと言ってもいいでしょう。


そんな黄金時代の作品ばかり読んでいたので、上半期ベスト10!とかやっても、どれも超有名作品かつベスト10級の作品だけに面白みも少ないかもしれません。

だがやってみたいのだからしょうがない!

 

そもそも、ベスト10を決めるにあたっては、まず評価の観点というものを事前に決めておかなければなりません。これは、推理小説において重要だと思える項目において10点満点で計算した合計点数で決める、といった方法で行いたいと思います。そしてその観点はエラリー・クイーンの探偵小説批判法の十項目を活用させていただきました。

※リンク貼ってたんですが文字化けのため削除しました…悲しい

 

この探偵小説批判法を用いて点数をつけ、合計100点満点中何点か、そして基本的にはその大小でベスト10を決定します。同点の場合もありますが、そこは独断と偏見で決定します。また今回は“探偵小説批判法”であるがゆえ、SF作品『屍者の帝国』『失われた世界』『ゴールデン・フリース』は対象外としました。

 

 

各項目の点数は省略して早速…

 

第10位ミルワード・ケネディ『救いの死』

アントニー・バークリーにあてた序文から始まるように、前年に発表されたバークリーの『第二の銃声』と一部似通った設定が用いられているものの、全くの別物です。バークリーにあやかったんじゃないだろうかとも勘繰ってしまうんですが、作品自体の出来は良い方だと思います。純粋な本格ミステリかと思いきや、徐々に暗雲立ち込める独特の雰囲気が見事かと。

 救いの死【感想】ミルワード・ケネディ - 僕の猫舎

 

第9位フィリップ・マクドナルド『ライノクス殺人事件』

こちらはまだ感想を書けてないので省略。ライノクスさんが殺されたわけじゃないのが粋です。

 

第8位グラディス・ミッチェル『ソルトマーシュの殺人』

スピード感の無さはネックですが、特異なキャラクターたちと犯罪の異常性・残忍性が群を抜いていています。ブラックユーモアの効いた作品です。

ソルトマーシュの殺人【感想】グラディス・ミッチェル - 僕の猫舎

 

第7位ドロシー・L・セイヤーズ『毒を食らわば』

こちらもまだ感想を書けていません…トリックが凄い。

 

第6位イーデン・フィルポッツ『闇からの声』

怪奇っぽいのに怪奇じゃない、本格っぽいのに本格じゃない、犯人がわかりそうでわからない、どこか宙ぶらりんな感じなのに、終盤の犯人と探偵の火花散る攻防は読み応え十分です。

闇からの声【感想】イーデン・フィルポッツ - 僕の猫舎

 

第5位フィリップ・マクドナルド『鑢(やすり)』

彼の作品から2作がベストテンに入りました。やはり難読漢字(最初は「りょ」だと思ってました)なのか、本のタイトルにもばっちりフリガナが振ってあります。タイトルとは裏腹にストーリーはシンプルかつ明瞭。圧倒的なページ数で書かれた解決編(報告書)の出来が完璧で何度でも読み返したくなるほど美麗

鑢(やすり)【感想】フィリップ・マクドナルド - 僕の猫舎

 

第4位エラリー・クイーン『ローマ帽子の謎』

感想がアップできていないです…

推理小説のもつ魅力の全てを堪能できる一作でした。勝手な先入観でクロフツっぽいの(緻密で精巧でガッチガチの)をイメージしていたので、謎の提起と謎解き偏重ではなくキャラクターもしっかり書けているのが意外でした。

 

第3位エラリー・クイーン『フランス白粉の謎』

こちらもまだ感想が…

前作と同等もしくはそれ以上に洗練された謎の質と謎解きが素晴らしいです。真似しようと思ってもまねできない天性のセンスの良さが、作中ににじみ出ています。

 

第2位アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』

もうお馴染みです、まだ感想が書けていません。

心のどこかで認めたくない自分もいるのですが、点数は高得点になりました。玄人好みではあると思います。

 

そして

第1位アントニー・バークリー『第二の銃声』

文句なしの上半期第1位となりました。曲芸的な部分が苦手で忌避している人でも、納得させられる見事なプロットを含め、芸術的と言ってもいい作品でしょう。

生涯ベストテンの一角【感想】アントニイ・バークリー『第二の銃声』 - 僕の猫舎

 

どうでしたか?順当ですか?

 

 

結論から言うと

感想が書けていない。

というのが正直なところですね。課題です…

 

 

 

本当に超有名作品ばかりでした。たぶん後半も引き続きエラリー・クイーン(レーン四部作を読む予定)やカーを読む計画となっているので、年末に「今年のベスト10」なんてやろうものなら、そのまんま生涯ベスト10になってしまうんじゃないだろうかと危惧しています。

ただ上半期ベスト10にはランクインした作品は、総合評価の高かった作品で、それ以外にも部分的には尖った推理小説にもたくさん出会うことができました。

 

その中でも短編集

T・S・ストリブリングによる『カリブ諸島の手がかり』が傑作です。各短編がバリエーションに富んだ作品であることに加えて、全編通して読むことで、壮大な長編小説にも思わせる最後の作品『ベナレスへの道』が異彩を放っています。一度読むと頭を離れない強烈なインパクトを持った作品なので、ぜひネタバレに遭遇する前に読んでほしいところです。ただ国書刊行会版は現地人のしゃべり方が、まんまコテコテの関西弁で違和感しかなかったので、河出文庫版の方が良いのかもしれません。

 

推理小説以外では、SF作品3冊を読みましたが、中でもロバート・J・ソウヤーの『ゴールデン・フリース』はミステリファンにもお勧めできるSF作品でした。簡単に紹介すると、SF要素がたっぷり詰まった古畑任三郎。SFに慣れない私は多少苦労したものの、ミステリ要素の面白さだけでも十分読み進めることができました。

ゴールデン・フリース【感想】ロバート・J・ソウヤー - 僕の猫舎

 

まだまだ紹介しきれない作品が多々ありますが、今年はアガサ・クリスティにも久しぶりに戻ってくることができた(『おしどり探偵』)し、歴史ミステリ(ポール・ドハティー『毒杯の囀り』)なんかにも出会うことができた貴重な半年でした。

 

ということでまとめ。

 

たぶん私のベストテンは順当すぎるので…

皆さんの上半期ベストテンを教えてください