発表年:1927年
作者:アガサ・クリスティ
シリーズ:エルキュール・ポワロ4
本作では、ヘイスティングズ大尉が見事語り手として凱旋帰国し、お馴染みの迷探偵ぶりを発揮してくれるところまでが、いつも通りの展開です。
本作は、クリスティファンの間でも、クリスティ作品群中の評価の低さでは、群を抜いていることに間違いはないように思います。
本作が発行された経緯、時代背景については解説等で詳細に書かれていることから、ここでは省略しますが、要約すると、
クリスティは夫の浮気で病んでいた。
出版社からは新作を早く出せとせがまれていた。
義理の兄(ようするに他人)に短編をまとめて長編にしてみたらどうか?と安易な提案をされた。
やってみた。
それがこの作品です。
そのため、短編集としてうまくまとめ上げることができれば、まだもう少し楽しめたであろう作品たちが、謎の犯罪組織“ビッグ4”なる存在が介入することにより、トリック・動機ともに中途半端で、ポワロお得意の人間性の研究も成りを潜め、灰色の脳細胞も肩書きだけは数多く登場するが、本来の活躍はせず、と散々な内容なのです。
これでは、
「あれ?メガネどこやったっけ?」
「おいおい頭の上、上(笑)」
「あちゃーさすが“灰色の脳細胞”」と言われても驚きはしません。
まさに“灰色の脳細胞”の大安売りです。
まさか“ビッグ4”の真の目的が、数珠の短編たちを、お粗末なスパイ作品に貶めるために暗躍しているのでは?と勘ぐりたくなるような展開です(あながち間違いではないと思います)。
ここまでかなりの酷評ですが、とはいえ、全く読む価値がないのか?と聞かれれば、答えはNoです。
呆れ返るほどの(良い意味で)ヘイスティングズの誠実さ・正義感ゆえの迷走っぷりや、ポワロの謎の兄弟、はたまたポワロの女性観等、後々の作品に繋がる目新しい情報も提供され、読書時間が全くの時間の浪費とは言えません。
ページ数も330Pほどと、ポワロ作品の中でも短めなので、途中で諦めなければ、1~2日で読み切ってしまえます。
追記
小説は散々ですが、テレビドラマ版は安定の出来。是非、本作を読んだ後に鑑賞するのをオススメします。
では!