秘密機関【感想】アガサ・クリスティ

 

発表年:1922年

作者:アガサ・クリスティ

シリーズ:トミー&タペンス1

 

 

第一次大戦をのり越え、ロンドンの地下鉄で偶然再会した、幼馴染のトミーとタペンスが、青年冒険家協会なるものを立ち上げ、一攫千金を目指すのが大筋。

 

若きことは素晴らしきこととはよく言ったもので、年齢を足して45にもならない若い二人が、有り余るエネルギーと冴え渡る頭脳を存分に駆使し、大英帝国存亡の危機に挑みます。

のっけから、ありえないだろ!とツッコミたくなる無茶な設定で、そんな青二才に国の諜報機関が特命を与えるわけないし、なんでもご都合主義に思えてくる展開ではあります。

ただ、決して駄作なんかではなく、個人的にワクワク楽しみながら読むことができました。

 

このような作品は巷では、スパイものとか冒険小説といったジャンルで呼ばれるのでしょうが、アガサ・クリスティの手にかかれば、ミステリーもあり、ロマンスもありの歓楽冒険ミステリー活劇(なんだそりゃ)へと変貌を遂げます。

 

本格ミステリーを求めている方には、事件のトリックや動機など物足りないところは確かに感じるし、意外性の点においても読者の想像の範囲内で起こることなので、ポワロやマープル作品と同じものを求めることはできません。

とはいえ、私は見事に騙されたし、まるで一本の映画の見ているかのような感覚に陥いりました。ディズニーあたりで企画して、ナショナルトレジャー的な感じで制作してくれれば一山当てれると思います。

 

話は前後しますが、本作は紛れもなく冒険小説の一つに数えられるはずで、その醍醐味は、もちろん読者が一緒に冒険することができるかにかかっています。

その点本作は、間違いなく読者を、ロンドンで暗躍する秘密機関を巡る難事件の世界に連れて行ってくれ、まだ若かった頃(20代前半)、将来の夢について何の現実味もなく熱く語っていたあの年齢までタイムスリップさせてくれることでしょう。私も若ければ……タペンスのような幼馴染がいれば……と考えずにはいられません。

  

では!