1923年発表 エルキュール・ポワロ2 田村隆一訳 ハヤカワ文庫発行
イギリス発祥と言われる紳士のスポーツ、ゴルフ。全世界のゴルフ場の数を見ても、イギリスはアメリカに次ぐ第2位の保有数を誇り、起源については諸説あるとして、ゴルフがイギリス人にとって切り離すことのできない大切な文化の一つであることに違いはありません。今回はそんなゴルフ場が登場する作品です。
ポアロ登場の作品としては2作目で、ポアロとヘイスティングスがある富豪の依頼でフランスへ赴くところから、事件は進展します。
舞台フランスなんだ…ポワロシリーズ第一作『スタイルズ荘の怪事件』の後、読者からの大きな期待を感じながら書き上げられたと想像される本作の冒頭からは、クリスティのチャレンジ精神と新たな勢いのあるストーリー展開を感じられます。
少し話が逸れますが、小説の裏表紙にはたいてい解説が載っていて、『イギリスの××で屋敷主人○○が殺された。探偵□□がこの難事件に挑む!』などと書かれていますが、この時点で誰が殺されるかネタバレしてしまっているのでなるべく読まないことにしてます。しかし今回ふとしたことから誤って読んでしまい、物語が大きく転換する事件の発生まで、少しだらけた印象で読んでしまったのが悔やまれます。よくよく思い返すと、クリスティの巧みな人物造形と魅力的なプロットは、初めから冴え渡っていました。
今作は、犯人を捜す単純な推理小説に留まらず、ジロー警部との推理勝負や、ヘイスティングスの未来を左右する出会いの物語等バリエーションに富んだ展開を見せます。その中でも骨子である殺人事件の中身は骨太で、動機・トリックは王道でも、取り巻く登場人物が織りなす家族や愛をテーマにしたストーリーは、読み終えた後に爽やかで心地よい印象を与えてくれるはずです。
自分自身今作はかなり楽しめた一作で、その要因の一つは、自身の灰色の脳細胞がフル活動し、犯人にかなり近づくことができたことです。しかしそれも、ポアロのヘイスティングスに対する解説や、巧みな誘導によるものであることに疑う余地はありません。
ポアロやヘイスティングスと共に実際に推理し、ここまで真実に近づけたことは、自身に推理小説を読むうえでの楽しみや、快感をより一層感じさせ、アガサ・クリスティだけでなくミステリの世界にどっぷりハマるきっかけになりました。
テレビドラマ版も見逃せない
先日、テレビドラマ版『名探偵ポワロ』の作品を鑑賞しました。かなり原作に忠実にドラマ化されており、大満足でした。特にフランス警視庁のジロー警部が素晴らしい配役すぎます。本作を読んで、興味が出てきた方は、ぜひテレビドラマ版も鑑賞することをオススメします。
では!