2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『不可能犯罪捜査課・カー短編全集1』ジョン・ディクスン・カー【感想】小粒がいっぱいで普通に辛い

THE DEPARTMENT OF QUEER COMPLAINTS 1940年発表 マーチ大佐 宇野利泰訳 創元推理文庫発行 巨匠カーの短編は初めて。長編にある重奏的なトリック、怪奇現象の波状攻撃はありません。しかし、山椒は小粒でもぴりりと辛いと言いますか、短い物語の中に輪郭のく…

『虎の牙』モーリス・ルブラン【感想】細密フィルターを通せば面白い

Les Dents Du Tigle 1921年発表 アルセーヌ・ルパン9 井上勇訳 創元推理文庫発行 前作『(三十)棺桶島』 次作『八点鐘』 本作でアルセーヌ・ルパンシリーズに挑もうとする読者はほぼいないでしょうが、少なくとも『813』は読んでおいた方が楽しめると思い…

ROCK AND ROLL AND RAMBLE【The Beatles】Vol.1

漫才の歴史は、彼以前、彼以後にわかれる これは、お笑い芸人ダウンタウンの松本人志が、M-1グランプリの審査委員として登場するときの出囃子で使われる紹介文句です。この言葉を借りて、ロックの歴史についてもこのように言い換えることができます。 ロック…

『緑は危険』クリスチアナ・ブランド【感想】作者の最高傑作、は伊達じゃない

Green for Danger 1944年 コックリル警部2 中村保男訳 ハヤカワ文庫発行 前作『切られた首』 次作『自宅にて急逝』 完全にミスった。いつもシリーズ作品は、第一作から読むことを習慣にしているのに、間違って2作目から読んでしまった。 まあ、いいか、め…

『ヘラクレスの冒険』アガサ・クリスティ【感想】元ネタを知らずとも十分楽しめる名作

The Labours of Hercules 1947年発表 エルキュール・ポワロ 田中一江訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ホロー荘の殺人』 次作『満潮に乗って』 物語は、私立探偵業の引退を目前にしたポワロのアパートから始まる。引退後はカボチャ栽培に勤しむと告げるポワロに、…

『怪盗レトン』ジョルジュ・シムノン【感想】想像していたよりもドロッとせず、キリっとしてる

Pietre le Letton 1929年発表 メグレ警部1 稲葉明雄訳 角川文庫発行 次作『死んだギャレ氏』 メグレ警部と言えば、名探偵コナンの目暮警部の名前の由来になった名探偵です。 その記念すべき1作目が本作『怪盗レトン』なのですが、本書に出会うのには本当に…

『フレンチ警部の多忙な休暇』F.W.クロフツ【感想】警察24時が先か、クロフツが先か

FATAL VENTURE Fatal=致命的な Venture=(金銭的にリスクの高いbusiness)投機、事業 ですから、『死をまねく事業』というところでしょうか 1939年発表 フレンチ警部19 中村能三訳 創元推理文庫発行 前作『フレンチ警部と毒蛇の謎』 次作『黄金の灰』 クロフ…