2016-01-01から1年間の記事一覧

サイロの死体【感想】ロナルド・A・ノックス

発表年:1933年 作者:ロナルド・A・ノックス シリーズ:マイルズ・ブリードン3 ノックスと言えば、散りばめられたユーモア描写と特異な結末、薄らと多重解決の趣を感じる『陸橋殺人事件』で有名ですが、『陸橋~』を含む彼が生涯で書いた6作の長編にうち5…

素晴らしい作品群なだけに酷評が辛い【感想】エラリー・クイーン『レーン最後の事件』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン4 エラリー・クイーンの作品に対し、厳しめに感想を述べるというのはどうも気が引けます。 エラリー・クイーンが世界的に認められた推理小説作家であることはもちろんながら、ファンも多…

Zの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン3 本作は≪悲劇四部作≫の三作目にあたる作品ですが、前々作・前作より陰鬱で暗い雰囲気をまとっています。 まず前作『Yの悲劇』から十年もの歳月が経っているせいで、十年前は年に違わず…

Yの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン2 本作は紛れもなく不朽の名作と呼ばれるに相応しい推理小説です。 バーナビー・ロス名義で書かれたエラリー・クイーンの≪悲劇四部作≫の二作目『Yの悲劇』は、前作とうってかわって館モ…

最後の一文にまで細やかな配慮【感想】エラリー・クイーン『Xの悲劇』

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン(バーナビー・ロス) シリーズ:ドルリー・レーン 今ではバーナビー・ロス=エラリー・クイーンであることは誰でも知っていますが、当時は別々の作家であることに疑いを持つ人は少なかったらしいですね。 気づきそう…

謎のクィン氏【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:クィン氏 先に粗あらすじ 70手前のおじいちゃんと、正体不明のクィン氏が織りなす、幻想的でロマンティックな短編集 サタースウェイト氏の人柄については、読み進めている内に自然と把握できると思うので…

僧正殺人事件【感想】S・S・ヴァン・ダイン

発表年:1928年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス4 粗あらすじ ジョン・コクレーン・ロビンが矢で貫かれた死体で発見された。彼の愛称はコック・ロビンで、否が応でもマザー・グースの童謡「だれがコック・ロビンを殺したの?」を想…

オランダ靴の謎【感想】エラリー・クイーン

謎は全て解けた!(とりあえず1部までは) オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: エラリー・クイーン,中村有希 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2013/07/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 本作はエラリー・クイーンの国…

五匹の赤い鰊【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1931年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿5 今回は感想を述べる前に、やはりタイトルに入ってある“赤い鰊(にしん)”について説明しておかなければならないでしょう。 推理小説ファンには説明するまでもないことかも…

ブラック・コーヒー【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 案外、飲み物がタイトルに入った推理小説って少ないんじゃないでしょうか? 推理小説とはいっても、本作はアガサ・クリスティによって書かれたエルキュール・ポワロものの戯曲(推…

夜歩く【感想】ジョン・ディクスン・カー

学生時分は夜更かしなんてあたりまえで、夜行性の人間だったと思うのですが、年を取ると、さらに言えば子どもが生まれたりなんかすると、めっきり夜更かしは少なくなって、9時くらいになると眠たくなってくるし、朝7時になると自然に目が覚めます。 中高生の…

毒を食らわば【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1930年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿4 “毒を食らわば皿まで”というのは、ご存知の通り、一度悪事に手を染めたなら最後までやり通そうという邪な考えを例えた諺です。 つまり毒を飲んで死んでしまうことが決まっ…

ライノクス殺人事件【感想】フィリップ・マクドナルド

発表年:1930年 作者:フィリップ・マクドナルド シリーズ:ノンシリーズ 話は少し感想から外れますが、推理小説の感想を書くときには、あらすじでさえ省略したいと常々思っています。 これから殺人事件が起ころうとする作品は特にそうです。決して、あらす…

グリーン家殺人事件【感想】S・S・ヴァン・ダイン

発表年:1928年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス3 ヴァン=ダインの代表作の一つに数えられる本作は、前2作と打って変わって、密度の濃い、サスペンスフルな作品となっています。 というのも本作はグリーン家の面々が次々に襲われ…

カナリヤ殺人事件【感想】S・S・ヴァン・ダイン

発表年:1927年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス2 前作『ベンスン殺人事件』で心理分析による捜査法を実演して見せたファイロ・ヴァンスですが、それはいささか無理のあるものにも思えました。さらにワトスン役のヴァン=ダインの…

フランス白粉の謎【感想】エラリー・クイーン

発表年:1930年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン2 前作『ローマ帽子の謎』以上に魅力的な舞台、登場人物、豊富な謎が用意され、緊張感溢れる結末部もさることながら、トリック・キャラクター・プロット等の全てのバランスが取れたま…

おしどり探偵【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1929年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:トミー&タペンス2 まずは簡単にあらすじを 1922年の『秘密機関』で初登場し、めでたく結ばれた二人は、7年の月日を経て再登場を果たします。作中でも現実同様6年の月日が経っており、冒険好きの二人(…

毒入りチョコレート事件【感想】アントニイ・バークリー

発表年:1929年 作者:アントニイ・バークリー シリーズ:ロジャー・シェリンガム あらすじ ロジャー・シェリンガム、アンブローズ・チタウィック氏を含む「犯罪研究会」を構成する6名の各分野における著名人は、スコットランド・ヤードのモレスビー警部が…

シャーロック・ホームズ最後の挨拶【感想】アーサー・コナン・ドイル

発表年:1893〜1917年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ4 中身は、1893年から1917年の20年以上もの間に書かれた短編たちが集まっているおかげで、今まで以上にバリエーションに富んだ短編集となっています。ちなみに、本ブ…

陸橋殺人事件【感想】ロナルド・A・ノックス

発表年:1925年 作者:ロナルド・A・ノックス シリーズ:ノンシリーズ “ノックスの十戒”の提唱者として知られる彼ですが、その生まれはイングランドの聖職者一家で、およそ血腥い殺人を取り扱う推理小説作家とは縁遠い環境で育ったようです。聖職者として慎…

恐怖の谷【感想】アーサー・コナン・ドイル

発表年:1914年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ 本作は、『緋色の研究』や『四つの署名』と同様に2部構成となっていますが、本作ほど2部構成の醍醐味を味わえる作品は少ないでしょう。 1部では事件の発端から解決まで…

ベローナ・クラブの不愉快な事件【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1928年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿4 前作で良くも悪くも“普通の”名探偵と化したピーター卿が本作では、うって変って会心の活躍を見せます。 まず提示される謎が魅力的です。詳細は省略しますが、舞台はタイト…

ローマ帽子の謎【感想】エラリー・クイーン

発表年:1929年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン1 ようやくエラリー・クイーンにたどり着きました。 本作は、ご存知の通り、エラリー・クイーンによって書かれた長編推理小説第一作であり、彼(ら)の記念すべきデビュー作です。 「…

ブラウン神父の不信【感想】G.K.チェスタトン

発表年:1926年 作者:G.K.チェスタトン シリーズ:ブラウン神父3 アメリカが舞台の作品が多いことが特徴の一つで、今までの短編集よりも一話あたりのページ数が少し多い気がします。 トリックについてのみ取り上げれば、さすがチェスタトンと唸らされるも…

2016年上半期読了ミステリベストテン

2016年ももう半分が過ぎようとしています。アガサ・クリスティとの出会いからははや1年が経ちました。 推理小説にのめり込んで、毎週古本屋を巡り、ネットを漁る日々もようやく落ち着き、今は時間を見つけては読書の日々です。 この上半期に読了した本の冊…

不自然な死【感想】ドロシー・L・セイヤーズ

発表年:1927年 作者:ドロシー・L・セイヤーズ シリーズ:ピーター・ウィムジィ卿3 粗あらすじ きっかけは小さな料理屋での他愛もない会話だった。隣席の男から聞いた「不自然な死」について、気紛れ(ウィムジィ)と直感で探偵を始めるピーター卿は、次第…

失われた世界【感想】アーサー・コナン・ドイル

発表年:1912年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:チャレンジャー教授1 本作は1912年にあのアーサー・コナン・ドイルによって書かれた初の「SF小説」です。 本シリーズは、古生物学者チャレンジャー教授を主人公に据えて、全5作が発表されている…

闇からの声【感想】イーデン・フィルポッツ

発表年:1925年 作者:イーデン・フィルポッツ シリーズ:ノンシリーズ まずはあらすじ 引退した名刑事リングローズの耳に連夜聞こえる、幼い子どもの悲鳴と哀願。調査の結果、1年前に亡くなった男の子の幽霊と思われるその声は、リングローズの刑事魂に再…

ただの雑記

ずっと読書感想文ばっかり書いていると、たまーにそれ以外のことを書いてみたくなりませんか?なりませんか。

毒杯の囀り【感想】ポール・ドハティー

本作はイギリスの推理小説作家ポール・ドハティーによってかかれた歴史ミステリです。 ポール・ドハティーは、大学で歴史学の博士号を取得し、その後も歴史教師として働いた経験を生かし、数々の歴史ミステリを世に送り出しています。中には、エジプトミステ…