僕の猫舎

主に海外ミステリの感想を綴るブログです

解説もまた名作【感想】G.K.チェスタトン『ブラウン神父の醜聞』

 

ブラウン神父の醜聞 (創元推理文庫 110-5)

ブラウン神父の醜聞 (創元推理文庫 110-5)

 

 


発表年:1935年

作者:G.K.チェスタトン

シリーズ:ブラウン神父5

 


ついにブラウン神父シリーズを読破しました。

ただ、このタイミングで、創元推理文庫から新版がどんどん発刊されているので、さらに蒐集欲が掻き立てられますねえ解説が新しくなっているらしいので読みたい。

 

本書はなんといっても最終作らしく、全5冊の翻訳に携わった訳者中村保男氏の素晴らしい解説ブラウン神父の世界』が掲載されています。これまでの全ての短編を読み返しながら、じっくり楽しみたい解説です。


それではさっそく各話感想といきましょう


ブラウン神父の醜聞

自分自身、久々のブラウン神父ということもあって、特徴的な語り口調と雰囲気に入り込めず、読み終えるのに一週間近くかかってしまいました。さすがに短編一編に一週間では物語が全然頭に入ってこなかったのですが、改めて落ち着いて読み返してみるともの凄くシンプルな筋でタイトルとの絡ませ方も巧いです。ただ、美女のロマンスに絡む謎自体が小粒なため、そこに物語にのめり込めない要因も多少はあると思われます。


手早いやつ

徐々にエンジンがかかってきました。対立する二つの勢力と、片方の崩壊という図は、ブラウン神父ものではお馴染みの構図。この構図にぴったり合う組み合わせはもちろん殺人、ということで本編も水準以上の短編にはなっています。動機を推察しにくいのが玉にキズです。

 

古書の呪い

間違いなく本作中ベストの作品。裏表紙にはクリスティの『そして誰もいなくなった』と対比して紹介されていますが、あまり関係ないような気もします。「実に前例のない作品」というのは同感です。

プロットの出来が良いのはもちろんですが、話のすすめ具合が絶妙なので、不可能犯罪の濃度を、常に濃く維持できているため、最後の最後まで真相が読めません。


緑の人

何気ない一言や、一見何の意味も持たない言動から真相が導き出される、いわゆる“会心の一撃”系ミステリ(初めて言った)。ピンと来るか来ないか、直観力を試される一作。ちなみに、私は来なかった側です。


ブルー氏の追跡

謎自体はそこまで難解でもなく、既視感のある題材ですが、事件に注ぐブラウン神父の熱量と緊張感の無さがなんとも笑いを誘います。とはいえ、謎を解くプロセスやタイトリングにブラウン神父ものの魅力が最大限詰まっている代表作です。


共産主義者の犯罪

国民性を上手く用いたミステリ…と言いたいところですが、モヤる部分もあります。あまりとやかく言いすぎないことが重要なのかもしれません。詳しい解説は、本書の解説部を読めば十分です。


ピンの意味

ここにきてニヤリとしてしまうのは、本書に登場する犯人の動機がことごとくカブっているとこ。テキトーにとって付けたような動機ですが、推理におけるプロセス、犯人が弄した策は多様でなかなか上質です。屁理屈ともとれるタイトルも皮肉めいていて良い。


とけない問題

用いられている題材全体にブラックユーモアが利いていて、これもまたブラウン神父ものの一つの側面と言えるでしょう。また人間の負の部分が直球ではなく変化をつけて書かれているおかげ(せい)で、どうも気分も晴れません。


村の吸血鬼

プロットの面から言えば良質な短編だと思います。また、提起される謎が魅力的ですし、登場人物たちも影があって、暗雲垂れ込める事件の雰囲気を高めているのではないでしょうか。さらに、現在の事件だけでなく、過去の事象までもきれいさっぱり解いてしまう点でも、浄化されるような爽快感を得られるのも特徴です。

 


さて最後は解説『ブラウン神父の世界』です。

訳者中村保男氏によるこの解説部は、『醜聞』に続く第6巻だと聞いても疑わないくらい、情熱にあふれ完成された作品になっており、この評論を読めば、さらにシリーズの再読が楽しくなるに違いありません。

たぶんこの熱に浮かされてしまったのでしょう。ブラウン神父愛に満ちたこの評論に敵うはずもありませんが、当ブログでもブラウン神父のまとめ記事を書いてみようと思いました。

期待せずにお待ちください。


では!