データで見るミステリII(犯人編)

   今回はミステリに登場する犯人の持つ要素をデータ化し、観察してみたいと思う。犯人の傾向についての情報を記載するため、今後海外ミステリを読むうえで誤った先入観を持ちたくない方は、読まないことをオススメする。

 

ただ、前回も言ったように総読了数がそんなに多くないので、正確なデータとは自分でも思っていない。あくまで興味の延長線だと思っていただければ幸いである。

   さらに、出会った犯人たちの数も総じて多くない。読んだ時代も1900~1940年がメインなので、全90名の犯人たちの傾向や動機は、今とは大きく変わっているはずだ。

 

動機

   動機だけを注目して見たとしても、あまりそこから得られるものは多いようには思えない。動機は物語自体にはしっかり絡むものの、データで見た時には、ただ作者がどのような動機を選んだか、というだけである。一応、多いものから記載すると、

1位   金42.2%(38/90)

2位   秘密の発覚・隠匿12.2%(11/90)

3位   復讐8.9%(8/90)

   やはり、予想通り金銭目的の殺人が一番多かった。殺人が起こったならば、まずは金銭面で有利になる人物を疑ってみるのがいい、ということか。ただ、そこに気付かせない巧みなストーリーテリングで読者を翻弄する秀作も多い。

   2位の秘密の発覚・隠匿は、どちらかというと自身の悪事や不正を覆い隠すために行われる自己中心的な殺人だが、3位の復讐は虐げられた弱者を救うための偽善的行為や、罪を償わずにのうのうと生きる悪人に対する私刑的な側面を持つものが多く、単純に利己的な殺人だと言い難いものもある。この両端に思える動機が2,3位を占めているのには、作者がミステリのバリエーションを増やそうという意思も感じ取れる気がする。

 

殺害方法

1位   銃殺22.2%(20/90)

2位   毒殺21.1%(19/90)

3位   刺殺14.4%(13/90)

   やはり海外ミステリではよく遭遇する殺害方法が上位を占めている。なかなか国内ものでは出会う機会が少ないと予想される1位の銃殺ではあるが、欧米は銃社会ということもあって、かなり頻繁に銃での殺しが横行している。

   2位の毒殺も毒物の取り扱いが今よりも緩い時代では、簡単に選択された殺害方法だっただろう。また、現代のミステリを読み進めたら比較してみたいところ。

 

   ここまでつらつらと、データの紹介をしただけになってしまっているが、もう少しだけ先に進めてみたい。それは、どんな殺しでどんな殺害方法が多いか、ということである。さらに男女比なんかと組み合わして活用できれば、殺害方法・登場人物・動機の三点を起点として、推理することが可能かもしれない。

 

   以下に参考になりそうなデータをとりあえず表にして見たが、くどいようだが1900年代前半の海外ミステリ内のデータであることと、あくまで個人が蒐集したデータであることをご理解いただきたい。
表の見方
・例:左上の指数10.5は金が動機で銃殺を選択した者の全体に対する比率
・(男/女)内は男女比率[ただし、元の男女比を常に50:50とした場合]

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   データを見て気づいたのは、一つは毒殺にあまり女性が多く関わっていない、ということだ。毒殺と言えば女性、という風に勝手に刷り込まれていたかもしれない。ポワロか誰かが言っていた気がするのだが…あえて、それを知っている作者が女性には毒殺をさせない、という依怙地な考えを持っていたのかもしれないが、あまり先入観を持ちすぎるのは良くないということだろう。

   また、銃殺を選択する者の多くが女性であることにも驚いた。力が弱く、撲殺や絞殺など力を要する方法を選択できない女性にとって、毒物と銃は最有力候補になるのだろう。一方で、秘密の発覚を恐れたり、隠すために殺人を計画する男性の多くは銃を選んでいる。スピーディーな殺人を行うためには、手っ取り早く銃でズドンとやってしまって、秘密の文書や握られている物証を捜し出す時間を捻出したい、ということだろうか。

 

まとめ

   総データ数がそんなに多くないので、なんとも言い難い情報ではあるが、これを第一版として、随時加筆修正していこうと思っている。

 

では。