エルキュール・ポワロ

『ヘラクレスの冒険』アガサ・クリスティ【感想】元ネタを知らずとも十分楽しめる名作

The Labours of Hercules 1947年発表 エルキュール・ポワロ 田中一江訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ホロー荘の殺人』 次作『満潮に乗って』 物語は、私立探偵業の引退を目前にしたポワロのアパートから始まる。引退後はカボチャ栽培に勤しむと告げるポワロに、…

『ホロー荘の殺人』アガサ・クリスティ【感想】傑作だけど好きにはなれない

エルキュール・ポワロ 中村能三訳 ハヤカワ文庫 粗あらすじ 長閑なホロー荘に集った、秘めた想いを抱えた登場人物たち。彼らが演じる悲劇を最前列で鑑賞したのは、名探偵エルキュール・ポワロだった。死者が口にしたダイイングメッセージが指し示すのは犯人…

この絵から何を読み取るか【感想】アガサ・クリスティ『五匹の子豚』

発表年:1942年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ21 訳者:桑原千恵子 前回の記事『書斎の死体』に引き続き、半年ぶりのエルキュール・ポワロは、今まで彼が解決してきた事件とはひと味違う難事件。 なんと16年も前に解決してしまっ…

クリスティの円熟を感じさせる一作【感想】アガサ・クリスティ『白昼の悪魔』

発表年:1941年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ20 訳者:鳴海四朗 ほぼ半年ぶりのポワロものの長編です。 去年は月一ポワロを目標にしていたのですが、1940年代に挑む前にそれ以前の積読がどんどん増えてきて…ちょっとペースダウ…

『オリエント急行殺人事件』【ネタバレなし感想】線香花火のような

©2017Twentieth Century Fox Film Corporation 公開から1ヵ月近く経った1月某日、ついにアガサ・クリスティ原作の映画『オリエント急行殺人事件』を鑑賞してきました。 前日までに、原作もサラッと読み返し、復習もバッチリ。 で感想なんですが、タイトル…

クリスティ作品をざっくり型で分類してみた【感想】アガサ・クリスティ『死人の鏡』

発表年:1937年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 訳者:小倉多加志 各話感想 ざっくりクリスティ作品分類 ありきたり型 モンスター型 ロマンス型 アブノーマル型 クリスティ型 本作はエルキュール・ポワロものの中編が4編収められ…

粗の数々もそれすら愛おしい【再読感想】アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』

発表年:1920年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ1 始めて本作を読んだのが、随分昔のことのように感じます。この度、当ブログの企画の一つで記事同士の体裁を整えるために、改稿を加えようと思ったのですが、前回が思った以上に中…

クリスティの復讐成るか!?中期の意欲作【ネタバレ感想】アガサ・クリスティ『愛国殺人』

発表年:1940年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ19 今日はですね。当ブログでは珍しく、最初っから最後まで完全にネタバレありでお送りしたいと思います。なので、当然のことながら未読の方は本書をまず読んでから進んでください。…

杉なのに花粉症にならないヒーリングミステリ【感想】『杉の柩』アガサ・クリスティ

発表年:1940年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ18 さっそくタイトルから何言ってんねん、とツッコみを受けそうですが心から言っています。これは癒されます。 あらすじは不要でしょう。開始早々法廷を舞台に容疑者として裁かれる…

どうか神様こんなクリスマスになりませんようにアーメン【感想】アガサ・クリスティ『ポアロのクリスマス』

発表年:1938年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ17 「思いきり兇暴な殺人を」 というリクエストを受けて作られた本作は、その期待に応えるだけの力作にはなっています。多少ハリボテ感がしないでもないですが… まずは粗あらすじ ク…

悪党は殺人者か独裁者か【感想】アガサ・クリスティ『死との約束』

発表年:1938年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ16 前年に発表された傑作長編『ナイルに死す』の影に隠れてしまってはいますが、本作だって負けてはいません。 まずは 粗あらすじ エルサレムに滞在中のポワロが耳にしたのは、殺害…

クリスティ自画自賛の雄編【感想】アガサ・クリスティ『ナイルに死す』

発表年:1937年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ この作品の中心になるトリックは興味深いものだろうと私は考えています。 筋も非常に念いりにつくりました。 “外国旅行物”の中で最もいい作品の一つと考えています。 主要人物たち…

さらばヘイスティングズまた会う日まで【感想】アガサ・クリスティ『もの言えぬ証人』

粗あらすじ 《謎探偵の推理過程》 発表年:1937年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ14 ヘイスティングズ大尉は、エルキュール・ポワロを語るうえで、絶対に欠かせない登場人物です。もちろん、ポワロシリーズにおける、ワトスン役と…

巧みな舞台設定と小道具の数々が光る中期の名作【感想】アガサ・クリスティ『ひらいたトランプ』

17/4/26 改稿 発表年:1936年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ13 簡単に作品の特徴を書き出してみます。 まず魅力的なシチュエーションで起こる大胆な殺人事件を発端に、ポワロを含む豪華な探偵たちが競演して推理します。そして、…

性格や人格から推理する人にはオススメ【感想】アガサ・クリスティ『メソポタミヤの殺人』

発表年:1936年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ12 まずは粗あらすじ 看護婦のエイミー・レザランは知人の紹介と推薦により、考古学者の妻ルイーズ・ライドナーを看護することとなった。ライドナー夫妻がいるバグダット近郊の遺跡で待…

ブラック・コーヒー【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1930年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 案外、飲み物がタイトルに入った推理小説って少ないんじゃないでしょうか? 推理小説とはいっても、本作はアガサ・クリスティによって書かれたエルキュール・ポワロものの戯曲(推…

ホワイダニットの金字塔【感想】アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』

17/2/27 やや改稿 発表年:1936年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ11 本作は、名実ともにアガサ・クリスティの代表作に挙げられる名作であり、連続殺人事件を扱う際に最も重要になる、被害者同士の関連性(=動機にも繋がる)がミ…

雲をつかむ死【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1935年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ10 パリ発クロイドン(ロンドン)行の飛行機内で起こった殺人事件を、偶然乗り合わせたポワロが解決に乗り出すという、今ではありきたりな設定の推理小説です。 飛行機の歴史は、1903…

三幕の殺人【感想】アガサ・クリスティ

本物の演劇というものを見たことがないので、あまり詳しくは知りませんが、そもそも、演劇や映画の脚本とは三幕構成になっていることが多いようです。 第一幕「設定」で、ストーリーの提起、主人公の目的が示され、 第二幕「対立」で、主人公が目的を達成す…

単純なのに複雑そんな乙女心のような一作【感想】アガサ・クリスティ『エッジウェア卿の死』

何言ってんでしょうねのっけから。 発表年:1933年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ7 早川書房ってほんと、いい仕事してますね。 ミステリや、SFの海外作品が充実してるのも、もちろんのこと、特にクリスティ文庫シリーズは表紙も…

絶対に原題のまんまが良い【感想】アガサ・クリスティ『邪悪の家』

発表年:1932年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ6 原題の「Peril at End House」の通り、直訳では「エンドハウスの危機(または差し迫った危険)」となっており、古びた邸宅エンドハウスの女主人ニックに降りかかる怪事件に、ポワ…

人生は汽車、それが全て【感想】アガサ・クリスティ『青列車の秘密』

発表年:1928年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ5 17/4/26やや改稿 タイトルの「青列車」とは、もちろん本事件の舞台となる寝台列車【仏:トラン・ブルー(作中ではブルー・トレイン)】のことですが、クリスティの名作『オリエント…

ポアロ登場【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1924年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ 本作は、1924年に刊行されたクリスティ初めての短編集。 時期的には、ポワロ第2作『ゴルフ場殺人事件』と第3作『アクロイド殺し』の中間地点にあたります。 今更ながらですが、早…

ビッグ4【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1927年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ4 本作では、ヘイスティングズ大尉が見事語り手として凱旋帰国し、お馴染みの迷探偵ぶりを発揮してくれるところまでが、いつも通りの展開です。 本作は、クリスティファンの間でも、…

アクロイド殺し【感想】アガサ・クリスティ

発表年:1926年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ3 最も高名な推理小説はどれでしょうか? エラリー・クイーンのレーンシリーズ? ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』? それともカーの『火刑法廷』か? クロフツの『樽』はどうでし…

『ゴルフ場殺人事件』アガサ・クリスティ【感想】推理合戦も見どころ

1923年発表 エルキュール・ポワロ2 田村隆一訳 ハヤカワ文庫発行 イギリス発祥と言われる紳士のスポーツ、ゴルフ。全世界のゴルフ場の数を見ても、イギリスはアメリカに次ぐ第2位の保有数を誇り、起源については諸説あるとして、ゴルフがイギリス人にとって…

スタイルズ荘の怪事件【感想】アガサ・クリスティ

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ミステリーの女王との出会い

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,中村能三出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2003/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 24回この商品を含むブログ (86件) を見る なんと前回の投稿から1年近…