エラリー・クイーン

『災厄の町』エラリー・クイーン【感想】逆転の構図が光る名作

CALAMITY TOWN 1942年発表 エラリー・クイーン 越前敏弥訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ドラゴンの歯』 次作『靴に住む老婆』 ネタバレなし感想 ついにライツヴィルにやってまいりました。ライツヴィルとはニューヨークの北方に位置するとされる架空の町で、エラ…

『ドラゴンの歯』エラリー・クイーン【感想】遅れてきた思春期

The Dragon’s Teeth 1939年発表 エラリー・クイーン14 青田勝訳 ハヤカワ文庫発行 前作『ハートの4』 次作『災厄の町』 ついにライツヴィルの入り口までたどり着きました。ハリウッドシリーズ最後の一作です。ハリウッドシリーズと言っても、舞台はクイーン…

『エラリー・クイーンの新冒険』エラリー・クイーン【感想】物語同士のギャップも魅力

The New Adventures of Ellery Queen 1935~1939年発表 エラリー・クイーン 中村有希訳(旧版:井上勇訳)創元推理文庫発行 前作『エラリー・クイーンの冒険』 各話感想 『神の灯』(1935) 今回、新旧の『新冒険』と併せて嶋中文庫の『神の灯』も読みまして…

『ハートの4』エラリー・クイーン【感想】ハート♡が邪魔

1938年発表 エラリー・クイーン13 青田勝訳 創元推理文庫発行 前作『悪魔の報復(報酬)』 次作『ドラゴンの歯』 本作は≪国名シリーズ≫と≪ライツヴィルシリーズ≫をつなぐ≪ハリウッドシリーズ≫……ってコレ、ここ何作かのエラリー・クイーンの感想でずっと言っ…

『悪魔の報復(報酬)』エラリー・クイーン【感想】クイーンも人の子

1938年発表 エラリー・クイーン12 青田勝訳 創元推理文庫発行 前作『ニッポン樫鳥の謎』 本書は、国名シリーズとライツヴィルものの間にある「ハリウッドシリーズ」のひとつ。前作『ニッポン樫鳥の謎(The Door Between)』前々作『途中の家(中途の家)』と…

『クイーンの定員Ⅰ』エラリー・クイーン【感想】これであなたも一人前

本書を読んで、ようやく、一人前の海外ミステリファンになれた気がしています。『クイーンの定員』は、1845年以降に刊行された最も重要な短編推理小説106作が収められたアンソロジーです。編者は、海外ミステリ黄金期を代表する作家エラリー・クイーン。 そ…

『ニッポン樫鳥の謎』エラリー・クイーン【感想】成長する探偵

1937年発表 エラリー・クイーン11 創元推理文庫発行 井上勇訳 国名シリーズを脱却しながらも「読者への挑戦」を用意するなど、優等生だった『中途(途中)の家』に続く作品。前作でよっぽど抑圧されていたのか、本作は、解き放たれ道を踏み外した問題児のよ…

『途中の家(中途の家)』エラリー・クイーン【感想】美しさと懐の広さが両立

1936年発表 エラリー・クイーン10 青田勝訳 ハヤカワ・ミステリ文庫発行 『ローマ帽子』から始まる≪国名シリーズ≫をついに読み終え、お次は『災厄の町』以降の≪ライツヴィルもの≫への繋ぎとなる一作です。 探偵エラリー・クイーンがいるのは、ニュージャージ…

『スペイン岬の謎』エラリー・クイーン【感想】ぶ厚い物語と堅固なプロットが持ち味

1935年発表 エラリー・クイーン9 井上勇訳 創元推理文庫1959年版 本当は島田荘司『占星術殺人事件』の感想を先に書こうと思っていたんですが、このタイミングで本を失くしました。これは、ミステリ界の神“エラリー・クイーン”の「書くな」というお告げなのか…

神たる所以【感想】エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの冒険』

発表年:1934年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン 訳者:旧訳 井上勇 新訳 中村有希 エラリー・クイーンシリーズの短編集を読むのはこれが初めてです。ずっと旧訳版は所持していたのですが、本書が発表された1934年以前の長編を全部読…

ホームズ時代へのリスペクトが詰まった一作【感想】エラリー・クイーン『チャイナ橙の謎』

発表年:1934年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン8 訳者:井上勇 空前絶後の超絶怒涛の“あべこべ殺人”がご登場です。 事件が起こるまでがかなり印象深いので、なるべくボカシながら書きたいのですが、インパクトという意味では超ど級…

新風吹く【感想】エラリー・クイーン『シャム双生児の謎』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン7 訳者:井上勇 前作『アメリカ銃の謎』が「水清ければ魚棲まず」状態で、どうも好きになれず… しばらく(次の新訳が出るまで)お休みしようかとおもったのですが、運よく?ポンポンと…

楽しかったが好きじゃない【感想】エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン6 訳者:中村有希 エラリー・クイーンの国名シリーズもついに6作目に突入しました。 創元推理文庫から年に1冊ペースで新訳版が出ているので、そちらで読み進めています。今年も出る…

名作と名高いエラリー・クイーン『悲劇四部作』は本当に順番に読む必要があるか

先日定期購読している『推理小説読んでみる?』で、エラリー・クイーンの悲劇四部作をオススメする記事を読みました。 kirakunimystery.hatenadiary.jp タイトルで誤解を招いてはいけないので、補足しておきますが、今日の記事は、 「どこが本当に名作なんだ…

全く文句はないけどアンクはある【感想】『エジプト十字架の謎』エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン5 個人的にエラリー・クイーンのミステリは、初期からハリウッド的(単純に映画向け)な作品が多いような気がします。 何らかのサプライズが必ず有り、そこに喜劇・ロマンス・サスペン…

ミステリの意匠にクイーンの職人技がキラリ【感想】『ギリシャ棺の謎』エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン4 本の重厚さからも、これはかなりボリューミーな一冊なんだろうなとは予想ができましたが、案外すらすら読めてしまいました。だぶん最大の要因は、ストーリーの緩急の付け方がかなり…

素晴らしい作品群なだけに酷評が辛い【感想】エラリー・クイーン『レーン最後の事件』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン4 エラリー・クイーンの作品に対し、厳しめに感想を述べるというのはどうも気が引けます。 エラリー・クイーンが世界的に認められた推理小説作家であることはもちろんながら、ファンも多…

Zの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン3 本作は≪悲劇四部作≫の三作目にあたる作品ですが、前々作・前作より陰鬱で暗い雰囲気をまとっています。 まず前作『Yの悲劇』から十年もの歳月が経っているせいで、十年前は年に違わず…

Yの悲劇【感想】エラリー・クイーン

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:ドルリー・レーン2 本作は紛れもなく不朽の名作と呼ばれるに相応しい推理小説です。 バーナビー・ロス名義で書かれたエラリー・クイーンの≪悲劇四部作≫の二作目『Yの悲劇』は、前作とうってかわって館モ…

最後の一文にまで細やかな配慮【感想】エラリー・クイーン『Xの悲劇』

発表年:1932年 作者:エラリー・クイーン(バーナビー・ロス) シリーズ:ドルリー・レーン 今ではバーナビー・ロス=エラリー・クイーンであることは誰でも知っていますが、当時は別々の作家であることに疑いを持つ人は少なかったらしいですね。 気づきそう…

オランダ靴の謎【感想】エラリー・クイーン

謎は全て解けた!(とりあえず1部までは) オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫) 作者: エラリー・クイーン,中村有希 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2013/07/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 本作はエラリー・クイーンの国…

フランス白粉の謎【感想】エラリー・クイーン

発表年:1930年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン2 前作『ローマ帽子の謎』以上に魅力的な舞台、登場人物、豊富な謎が用意され、緊張感溢れる結末部もさることながら、トリック・キャラクター・プロット等の全てのバランスが取れたま…

ローマ帽子の謎【感想】エラリー・クイーン

発表年:1929年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン1 ようやくエラリー・クイーンにたどり着きました。 本作は、ご存知の通り、エラリー・クイーンによって書かれた長編推理小説第一作であり、彼(ら)の記念すべきデビュー作です。 「…