控えめに言って傑作【感想】イズレイル・ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』

発表年:1892年 作者:イズレイル・ザングウィル シリーズ:ノンシリーズ 訳者:吉田誠一 ひと月以上前に読んだ作品ということもあって、いかんせん記憶が曖昧で、抜けているところがあれば申し訳ないのですが、まあ面白かったのは覚えています。 再度片手に…

ルパン史上最強最悪は伊達じゃない【感想】モーリス・ルブラン『水晶の栓』

発表年:1912年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン6 訳者:平岡敦 だいぶと久々の更新になってしまいました…身体的にも精神的にも追い込まれた年度末・年度初めでしたが、ぼちぼちと「いつもどおり」を取り戻し始め、やっと4月1冊目…

ベスト・オブ・バンコラン【感想】ジョン・ディクスン・カー『蝋人形館の殺人』

発表年:1932年 作者:ジョン・ディクスン・カー シリーズ:アンリ・バンコラン4 アンリ・バンコランものは約1年ぶりでした。前作『髑髏城』は、ドイツの古城を舞台に、禍々しい雰囲気がダイレクトに伝わってくる作品で、仏独の二大探偵同士の推理合戦にも…

ブログ僕の猫舎についての自己省察2018Edition〜みんなブログ書けばいいのに〜

年に数回、ブログというもの、特にミステリの書評ブログとしての【僕の猫舎】について、自己省察したくなる時期がやってきます。 そういやあ、昨日の深夜ヘッダー画像を変えました。 ここ一か月くらいは、今まで自分が自信を持ってやってきた内容にもかかわ…

新潮文庫オリジナルがオリジナルすぎる【感想】アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの叡智』

発表年:1892~1927年 作者:アーサー・コナン・ドイル シリーズ:シャーロック・ホームズ シャーロック・ホームズは実に約1年ぶりでした。ただ本作は、実際にアーサー・コナン・ドイルが発表した短編集ではなく、新潮文庫の発刊の都合上カットされた作品を…

会心の一撃が当たるかどうかが問題【感想】F.W.クロフツ『マギル卿最後の旅』

発表年:1930年 作者:F.W.クロフツ シリーズ:フレンチ警部6 訳者:橋本福夫 裏面の解説には、 著者の作品の中でも一、二を争う名作 と評されていましたがどんなもんでしょう。 タイトルに「旅」が入ってるため、これはまたフレンチ警部が「捜査」と称して…

後世に影響を与えた(であろう)歴史的な一作【感想】ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』

発表年:1908年 作者:ガストン・ルルー シリーズ:ジョゼフ・ルールタビーユ1 訳者:宮崎嶺雄 昨年末にホームズ時代に属する歴史的なミステリをいくつか入手できたので、今年の前半はそれらを消化しながら、クロフツ祭りができれば、と思っています。 今日…

『ブラックパンサー』【映画ネタバレあり感想】全体的に無理、あるよね?ね?

引用:2018 Marvel お新年一発目のマーベル作品は、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で華々しいデビューを飾ったブラックパンサーです。前半はなるべくネタバレなし、徐々にネタバレしていきます。まずは予告編をどうぞ。 「ブラックパンサー」予告…

真のクラシック・ミステリ【感想】オースチン・フリーマン『オシリスの眼』

発表年:1911年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ソーンダイク博士2 訳者:渕上瘦平 1.粗あらすじ 2.クラシック・ミステリ復興の兆し? 3.本作を構成する要素 ミステリアスなエジプト史というエッセンス 猟奇的でグロテスクな雰囲気 語り手のロマン…

楽しかったが好きじゃない【感想】エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎』

発表年:1933年 作者:エラリー・クイーン シリーズ:エラリー・クイーン6 訳者:中村有希 エラリー・クイーンの国名シリーズもついに6作目に突入しました。 創元推理文庫から年に1冊ペースで新訳版が出ているので、そちらで読み進めています。今年も出る…

『グレイテスト・ショーマン』【ネタバレ気味感想】人は解り合えない、が前提の哀しい映画

引用:2017 Twentieth Century Fox Film Corporation ミュージカル映画って… 作品自体が偉大なSHOW クライマックス・サプライズ フリーク(奇形)を扱った映画として おわりに ものっそい影響されやすいタイプなんです。わたくし。 先日『グレイテスト・ショ…

【ネタバレなし】たなか亜希夫『グロコス/Glaucos』息苦しくなりたいときにどうぞ

たまにだが、何だか胸が締め付けられるような、息が苦しくなるような、そんな漫画を読みたくなることはないか。 熱血王道少年漫画じゃなく、友情や愛情などベタベタな展開を省いた、酸素濃度の薄い漫画を読みたくはないだろうか。そんな時にオススメの漫画が…

ザ・クラシック・ミステリ【感想】オースチン・フリーマン『赤い拇指紋』

発表年:1907年 作者:オースチン・フリーマン シリーズ:ソーンダイク博士1 訳者:吉野美恵子 前回読んだソーンダイク博士ものの短編集が、ホームズのライヴァルたちと銘打たれていたこともあって、てっきり短編でしか登場しないと勘違いしていました。そ…

頑張れ!頑張るな!という矛盾【感想】ヘンリー・ウェイド『推定相続人』

発表年:1935年 作者:ヘンリー・ウェイド シリーズ:ノンシリーズ 訳者:岡照雄 倒叙です。 あんまり倒叙ものを読んだ経験に乏しいので参考になるかわかりませんが、ありきたりなプロットなのによく出来ていると思います。 訳者の岡照雄氏という名前は、あ…

クリスティの円熟を感じさせる一作【感想】アガサ・クリスティ『白昼の悪魔』

発表年:1941年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ20 訳者:鳴海四朗 ほぼ半年ぶりのポワロものの長編です。 去年は月一ポワロを目標にしていたのですが、1940年代に挑む前にそれ以前の積読がどんどん増えてきて…ちょっとペースダウ…