海外ミステリを読むなら、まずはこの一冊

先日、定期購読しているブログ『ゴロネ読書退屈日記』のゴロネさんより、こんなコメントをいただいた。 海外ミステリーを読むなら、まずはこの一冊を読んでといった作品があれば教えてください。 海外ミステリの感想ブログを運営しているものにとって、まさ…

ブラウン神父の聖戦【解説】【妄想】『ブラウン神父シリーズ』

他人のほんとの罪を聞くよりほかに、することがなにもないような男が、人間悪についてなんにも知らずにいるなんてことがありますかね? この台詞は、ブラウン神父シリーズ第一作『青い十字架』の中の一節です。 シャーロック・ホームズと双璧を成す短編推理…

おいおいルパンかよ→誠に申し訳ございませんでした【感想】カーター・ディクスン『一角獣の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿4 田中潤司訳 創元推理文庫発行 前作『赤後家の殺人』 次作『パンチとジュディ』 今年度の下半期は、カー作品を読み漁っています。傑作と呼ばれる『ユダの窓』に向けてまっしぐらです。 だから、それまでの数作はサラッ…

ギロチンの刃の切れ味に劣らないH・M卿の名推理【感想】カーター・ディクスン『赤後家の殺人』

1935年発表 ヘンリー・メリヴェール卿3 創元推理文庫発行 前作『白い僧院の殺人』 次作『一角獣の殺人』 粗あらすじ 「部屋が人間を殺せるものかね?」そんな摩訶不思議な問いかけを発端に、テアレン博士は、曰くつきの“ギロチンの部屋“を有する実業家の家を…

密室の使い方が冴えている【感想】カーター・ディクスン『弓弦城殺人事件』

発表年:1933年 作者:カーター・ディクスン(J.D.カー) シリーズ:ノンシリーズ 粗あらすじ 甲冑を着た幽霊が現われるという弓弦城には、熱狂的な古武具の収集家レイル卿とその一家が住んでいる。弓弦城では幽霊騒ぎ以外にも、外聞はばかるスキャンダルや…

若いうちに読むべし【感想】モーリス・ルブラン『813』『続813』

813 (新潮文庫―ルパン傑作集)posted with ヨメレバモーリス・ルブラン 新潮社 1959-05-27 AmazonKindle 発表年:1910年 作者:モーリス・ルブラン シリーズ:アルセーヌ・ルパン5 年2~3冊のペースで読み進めているルパンものも、ようやくシリーズ5作目に…

生者の「心の中で生き続ける」ということ【大好き】原泰久『キングダム』

今週号(10/5)の週刊ヤングジャンプに掲載されている『キングダム』533話が熱すぎたので、その熱に浮かされたままの勢いで何か書いてみようと思う。 と書いてからはや5日、その熱もなんだか冷めてきた気がするが今度は惰性で何か書いてみようと思う。 まず…

騒々しく喧々たる…本格ミステリ【感想】ジョージェット・ヘイヤー『紳士と月夜の晒し台』

発表年:1935年 作者:ジョージェット・ヘイヤー シリーズ:ハナサイド警視1 作者ジョージェット・ヘイヤーが、ロマンス小説の大家ということで、かなり構えて読み始めましたが、なかなか型にしっかりハマった本格ものになっていました。 それに、そこまでロ…

書評を書くのが恐くなったあなたに、そして自分へ

もう感想書くのがめっちゃ恐い 自分が感想書きを書くときに大事にしようと思ったこと あらすじは必要か 主観で見るか客観で見るか 文学的価値を評価すべきか ネタバレ感想は必要か まとめ もう感想書くのがめっちゃ恐い 何が恐いって、薄いだとか、すっから…

よく読まれてはいないけど比較的お勧めしたいミステリ感想記事10選【2017年第三四半期】

もうこの企画の要旨も前提もすでに崩壊してしまっているんですが、とりあえず1年間はくじけずやっていこうと思います。 初めて当記事をご覧になる方のためにこの企画の目的を簡単に説明しますと、 2017年を四半期ごとに区切り、該当期間内によく読まれたミス…

劇場型ミステリのお手本【感想】S・S・ヴァン・ダイン『カブト虫殺人事件』

発表年:1930年 作者:S・S・ヴァン・ダイン シリーズ:ファイロ・ヴァンス5 さてさて久しぶりのヴァン=ダインです。 思い返すと、前回から1年以上経っていたので、すんなり世界観に入り込めるか不安でしたが、なんのその、あっという間に古き良き本格ミス…

粗の数々もそれすら愛おしい【再読感想】アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』

発表年:1920年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ1 始めて本作を読んだのが、随分昔のことのように感じます。この度、当ブログの企画の一つで記事同士の体裁を整えるために、改稿を加えようと思ったのですが、前回が思った以上に中…

物語は腰砕け?【感想】レックス・スタウト『腰ぬけ連盟』

発表年:1935年 作者:レックス・スタウト シリーズ:ネロ・ウルフ2 まずは粗あらすじ かつて一人の少年を破滅させた学生一同は、贖罪連盟なる団体を結成し、その少年を援助してきた。少年は大人になり、かつての地位も名誉も回復したかに思えたが、突然連盟…

『ワンダーウーマン』【感想】なんでだろう、こんなに涙が出る映画だっけ

涙が出る蛇口のパッキンが腐ってるみたいです。なぜか涙が止まりません。 今回も序盤も序盤15分くらいでウルウル来てますからね。ヤバいです。 さてさて、いろんな意味(フェミニズムだったりキャメロンだったり)でハリウッドを賑わした、DCコミック原作の…

一冊で二度おいしい短編集【感想】アガサ・クリスティ『パーカー・パイン登場』

発表年:1932~1934年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:パーカー・パイン うんこれは良いな~ほんと良いです。 クリスティの短編集は、『リスタデール卿の謎』『死の猟犬』『謎のクィン氏』とちょっとオフホワイト(笑)な作品も含まれる短編集を読んで…